朝日夕刊「闘うフランス語」についてーー番外編2ーー

(「闘うフランス語」原文はこちらで御覧下さい)

 「朝日夕刊「闘うフランス語」についてーー番外編1ーー」の、フランス語における「言い換え」についてのお話の続きですが、以下のような感じに言えるかなあという気がします・・・(感覚的な言い方なので、あまり説得力がないのは自覚していますが、わたしにはこんな書き方しかできません)・・・これがこのブログ全体でいちばん出来が不満足な記事です・・・

 「闘うフランス語」に出てくる、「コンピュータ」がフランス語ではオルディナトゥール ordinateur と言い換えられた例を考えます
 「コンピュータ」にはむかし「電子計算機」という同義語が日本語にはありました。というか、今でも死語には全然なってないです(「電子計算機」でウェブ検索かけてみてください。たくさん生きた例が見つかります)。
 でももうコンピュータは「計算」が主機能とは言えないものになっていますね。本家の英語ではcomputerがcompute「計算する」という意味が見え過ぎてしまうということが、「PC」とか元の語源が見えないような言葉を使うようになる動機になっているかもしれない、と思います。日本語の中では「コンピュータ」は当然外来語なので、「コンピュート」が「計算する」という意味だというところまでが見えてしまうメカニズムは発動しにくいと思います。
 問題のフランス語の言い換え語ですが、現在「コンピュータ」という「モノ」の現在の機能から言うと ordre「秩序」という言葉と有縁なのが明らかに見てとれる ordinateurの方がむしろcomputerや「電子計算機」よりふさわしいと言えるかもしれない、とは思われないでしょうか。概念分析による造語というのはこういうことと言っていいのではないでしょうか(もちろん現在のコンピュータの機能は「秩序立てるもの」という概念分析も遥かに越えているわけですが)。

 日本語使用者は語彙数を制限しようという発想がほとんどなくて、自分でも造語(だいたいにおいて漢字の組み合わせです。耳で聞いて分かる日本語ということとはずれているのですから、これは本当に「日本語内の造語」なのでしょうか?・・・)するし、外来語もどんどん入れていく(ただし英語単語は必ずカタカナ書きであり、外国語起源であることを読む者にぜったい忘れさせはしません。といってもまあ他にどうにも書きようがないわけですが)ので、新たに覚える人には大変負担になるのですが、細かいニュアンスを言い分けることには有効な言語を志向しているように見えます。ただしそれは「単語レベル」の言い分けです。それぞれの単語の意味の理解のためには「これはこれこれこういう意味である」という「文章による」説明が必要とされるわけですが、単語そのものと説明の言葉の間には関係というか、有縁性がない場合が多いわけです。「コンピュータ」という語は、英語を持ち出さない限りけっして語自体と説明の言葉を結び付けることはできないです。
 それに対してフランス語使用者は細かいニュアンスの言い分けを、単語レベルではなく、単語を組み合わせた句、文のレベルに持っていこうとする志向を持っているのだと言えないでしょうか。日本語でその感覚を言い表してみるならば、なんというか、漢語も出てこない大昔の和歌の言葉、耳で聞いて意味のしっかり分かる言葉を組み合わせて森羅万象を言い表そうとする方向性みたいなものです。当然ひとつひとつの言葉の意味が明確でないとそれらを重ねて行くうちに訳が分からなくなってしまいますから、単語の論理的定義には非常にこだわることになります。そういう同じレベルで定義された言葉が均質に並んでお互いがお互いと均等な力でバランスをとりあう、そういう言語のあり方を目指しているように思われます。「オルディナトゥール」ordinateur とはなんのことか、一度説明がなされれば、ordre との有縁性は明白であり、言葉と説明とかしっかり有機的につながります。
 日本語では、漢字の熟語や英語起原の言葉が出てくると、なんというか、そこだけ「石」というか「ブラックホール」みたいなものになっていて、その「石」「ブラックホール」が何を意味するかは別の「(ビデオゲームで言う)ステージ」(つまり別の言語体系とか、別の説明体系)に飛ばないと分からない、という具合になっているように感じます。ふだんそこまで感じないのは、その過程が習慣によってオートマチック化しているからです・・・

 ほんとうに感覚的な言い方で申し訳ありません。全然お分かりいただけなかったかもしれません。あるいは当たり前のことを言っただけになっているかもしれません・・・
 でも日本語とフランス語では言語としての「たたずまいが違う」ということを、印象としてご理解頂ければと思います(「たたずまい」というのはわたしが自分で考えた言い方です。ちなみに印象ですが、英語は両者の中間くらいに思えます)。

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