別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

みやこどり

2005-12-06 | 別所沼だより


  三週ぶりの別所はすっかり冬の装いです。 鴨といっしょに白いものがたくさんいました。ユリカモメです。古代、都鳥といわれました。 嘴が細く足が長い。ほとんど真っ白に見えますがよく見ると背や翼の上面はうすく青みがかった灰色で、 先端だけすこし黒いのです。 カモメに似ているけれど、嘴と足が赤くてキュート。 ギューイ、ギーィッと鳴くと本には出ていますがあまり声が聞こえません。


  都鳥の歌は万葉集には 
 たった一首、


 舟競(ふなぎほ)ふ堀江の川の水際(みなきは)に 来居つつ鳴くは都鳥かも 
   大伴家持 巻20・4462


 真っ白な羽色と赤、 特に映えます。 都鳥と言えば隅田川、 伊勢物語第九段です。杜若とともに忘れられないお話。

 
   むかし、をとこありけり。そのをとこ、身をえうなき物に思ひなして、京にはあらじ、あづまの方に住むべき國求めにとて行きけり。 (中略) 
 白き鳥の嘴(はし)と脚と赤き、鴫の大きさなる、水のうへに遊びつゝ魚(いを)をくふ。京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。渡守に問ひければ「これなむ都鳥」といふをきゝて、 名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと 
 とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。 
 


舟こぞりてといったところが面白い。みな遠い旅をしてきて心細くさびしかったのですね。 
 また、都鳥は冬の季語です。  


 
嘴(くち)あかきあはれまづ見よみやこどり        久保田万太郎  




  都鳥物語めくものもなし                 
秀好
  川の面にこころ遊びて都鳥               高浜虚子

 
  時折しぐれるなか 白い羽と赤い脚の対比は、きょうの寒さを際だたせていました。
  つめたい水に寒そう。 メタセコイアの色も深まってきました。 ミヤァ ミャー とか鳴くので「みやこどり」と呼んだとか。

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4 コメント

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都鳥 (雪月花)
2005-12-06 19:14:59
ラグタイムさん、こんばんは。

いまはもう都鳥の季節。伊勢物語の「名にし負はば‥」の歌が好きです。別所沼の色も深まっていますね。こちらの多摩川には白鷺の姿。



 川あれば水あり江あれば冬鴎(ふゆかもめ)

 (秋光泉児)



先日気づいたのですが、「雪月花」へのリンクを有難うございます。こちらからも「手紙で会いたい」にリンクさせていただきました。下記でご確認ください。



http://blog.goo.ne.jp/setsugekka_2/e/5287cbf553fad3d75f248ec945d352f4



寒さつのります。暖かくしておすごしください。
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ありやなしやと (boa !)
2005-12-06 20:16:52
 別所沼の晩秋の装いに目を見張りました。

同じ風景が鮮やかな変貌をみせて、そのうえ懐かしい都鳥まで登場です。

 

「これなむ都鳥」の船頭の言葉にこもる、「都人のくせに知らないのか」の気分をこめた言い方も面白く文の運びも活き活きしていますよね。歌も切ない。八橋での「唐衣」の歌とセットでしみじみと訴えるものがありますよね。



「わが思う人はありやなしや」をクイズかなんぞのように思っていた人があったのも懐かしい思い出です。

 「あり」の意味が存在するのほかに、生存する、この場合の、無事でいるの意味だと気付かないと、とんでもないことになってしまいますよね。



 九州は昨日は雪の一日、冬も本番です。

白鷺の姿が方々で目に付きます。

 風邪には重々ご注意なさってくださいませ。
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白い冬 (ラグタイム)
2005-12-07 07:58:42
 急に寒くなって別所も鮮やかです。かもめの句をありがとうございました。白鷺の白とともにこれから冬を愛でていきましょう。



 雪月花さんのblogから学んでいます。私には難しすぎますが、直ぐ飛んでいけるようにマークを付けました。 こちらは雑駁で恥ずかしいのです。

 お忙しい師走、どうぞ風邪などお気をつけてください
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わが思ふ人 (ラグタイム)
2005-12-07 08:01:42
 古典はリズムが快いですね。読み込むといろいろ見えてくる、こちらが育った分受け取れるものも深まると 以前おっしゃいました。これから楽しみに読み返します。

 かきつばた、ことばあそびに秀でたboa!さんのせかい。お待ちしています。



 鴨も都鳥も一斉に目のまえに飛んできました。まるでヒッチコックの映画のようです。メタセコイアの鮮やかさと重なり、はっとするシーンでした。 

 こよみは大雪、寒さも本番ですね。どうぞ おたいせつになさいませ。 
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