防衛庁資料室で海軍の辞令を探していて、ふと目を留めたのがこの「海軍公報 號外 懲罰言い渡し書」。
１７年９月から１２月までに発令された懲罰で、その報告も兼ねて罰の量も報告されたものですが、カタカナ旧漢字交じりの読みにくい文章ながらつい全部読みふけってしまいました。
人間の集まるところ犯罪あり。
海軍といえど例外ではなく、ちょいとした犯罪からチョンボの果て罰せられたという事例はあるものです。
しかしもう時効になっていることですし、今日はこの年に海軍で懲罰対象になった事例をご紹介するとしましょう。
【ある海軍属Ｔの場合】
「海軍省経理局大三課筆生（文書係）として勤務していたＴは、昭和１５年２月から三カ月の間に各種郵便切手額面金６，８５５円を横領し、その都度東京市内の有価証券売買業者に売却し、それによって得た金銭を飲酒遊興に費消する」
まあ、よくある遣い込みです。
都内チケット売り場と直せば先日起こった事件のようですね。
特筆すべきは
「支那事変以降、事務頓ニ激変シ 繁忙ヲ極メツツアリシ為」
みんなが事変で大変な思いをしているどさくさにまぎれて、というのが
「同情ノ余地無シ」
で、与えられた罰則が
「謹慎１０日」
えーっ！軽くないですか？
だって、これ今なら懲戒免職ものですよ？業務上横領で。
おまけにこれ、莫大な金額じゃないですか。
本当に１０日でいいの？おまけに１０日の間「謹慎中服務すべし」
って、これ、何なんですか？
いわゆる警察沙汰にもなったわけでもなさそうだし、あくまでも海軍内での罰則ですよね？
【ある海軍技手Ｈの場合】
海軍の官品であるガソリンを横流しして利益を得た。
謹慎２日。
軽くないですか？二日なんて「休みもらったラッキー」で終わりませんか？
これも、業務上横領ですよね？
【海軍軍需部工事現場主任の場合】
「船舶で部下と移動中、下船した全員が赤痢に罹り、海軍病院に入院。
入院中の一カ月分の全員の給料１１４円７５銭を特別ノ考慮ヲ払ウコトナク部下に渡し、配るようにという。
部下のＯはこれを横領、遊興に当てる」
「謹慎７日、謹慎中服務すべし」
うーん。
深く考えることなく人に任せたことの方が業務上横領より罪が重いとは、なんだか全く海軍さんの考えは分かりません。
自分が犯罪を犯すより、責任を持たない管理者の方が悪、とされたわけですね。
【海軍情報局Ｋの場合】
公務出張中軍事秘密項を入れたカバンを網棚の上に置き忘れる。
カバンは駅員が収得するが「思想的マタハ通牒ノ意志無ク」取りに来る者がいないので中身を点検。
「謹慎１０日」
うっかり軍事秘を置き忘れるというのもなんだかですが、悪意があったわけではないので１０日。しかし、これが業務上横領と同じというのは、重いですね。
さて、さすがに現場の士官や下士官に対して横領などの事例は見られません。
しかし、フネに乗っている責任者の判断ミスはしばしば懲罰扱いになったもののようです。
【機関長Ｙの場合】
水面計の故障のため一号管左右煙筒煙管３分の２ 加熱のため使用不能
「謹慎一日」
点検ミスか、あるいは操作ミスでしょうか。
懲罰対象になってしまうのが凄いです。
【航海長Ｍの場合】
風の強い日、フネを座礁させ、浸水をもたらす。
その地理に詳しくなかったのは同情すべきとしながら
「謹慎一日 謹慎中服務すべし」
さて、この出された懲罰で一番重かった事例をご紹介しましょう。
【艦船乗組予備少尉Ａと同特務中尉Ｂの場合】
ある日、停泊中の艦船乗組Ａ予備少尉は、その夜陸で宴会があるのを聞き、出席を誘われたのだが、その夜当直将校であったため、判断できず、特務中尉Ｂに
「自分ハ如何ニスベキカヲ問ヒタルニ」
特務中尉Ｂ、自己憶測に云うに
「先任兵曹ニ委セテ上陸セヨ」
その後上陸して酒を飲んだのみならず現地で一泊して翌日三時帰艦。
えーと、三時とは夜中三時のことですか？
「寝てしまった」となっているので、もしかして昼三時？
皆さん。
これ、海軍さん的にはどのような罰が下されたとお思いですか。
予備少尉Ａ（上陸したほう）３０日謹慎
特務中尉Ｂ（許可したほう）２５日謹慎
重くないですか～？
業務上横領や、横流し、軍秘置き忘れなんかメじゃないくらい厳しく罰せられてます(T_T)
当直将校が一日いなかっただけで、別段何の事件もなかったのに、です。
海軍では、盗難より責任感の欠如を重く見る、ということなのでしょうが、こういう気の緩みこそが軍人としては厳しく罰せられることだったわけですね。
１７年９月から１２月までに発令された懲罰で、その報告も兼ねて罰の量も報告されたものですが、カタカナ旧漢字交じりの読みにくい文章ながらつい全部読みふけってしまいました。
人間の集まるところ犯罪あり。
海軍といえど例外ではなく、ちょいとした犯罪からチョンボの果て罰せられたという事例はあるものです。
しかしもう時効になっていることですし、今日はこの年に海軍で懲罰対象になった事例をご紹介するとしましょう。
【ある海軍属Ｔの場合】
「海軍省経理局大三課筆生（文書係）として勤務していたＴは、昭和１５年２月から三カ月の間に各種郵便切手額面金６，８５５円を横領し、その都度東京市内の有価証券売買業者に売却し、それによって得た金銭を飲酒遊興に費消する」
まあ、よくある遣い込みです。
都内チケット売り場と直せば先日起こった事件のようですね。
特筆すべきは
「支那事変以降、事務頓ニ激変シ 繁忙ヲ極メツツアリシ為」
みんなが事変で大変な思いをしているどさくさにまぎれて、というのが
「同情ノ余地無シ」
で、与えられた罰則が
「謹慎１０日」
えーっ！軽くないですか？
だって、これ今なら懲戒免職ものですよ？業務上横領で。
おまけにこれ、莫大な金額じゃないですか。
本当に１０日でいいの？おまけに１０日の間「謹慎中服務すべし」
って、これ、何なんですか？
いわゆる警察沙汰にもなったわけでもなさそうだし、あくまでも海軍内での罰則ですよね？
【ある海軍技手Ｈの場合】
海軍の官品であるガソリンを横流しして利益を得た。
謹慎２日。
軽くないですか？二日なんて「休みもらったラッキー」で終わりませんか？
これも、業務上横領ですよね？
【海軍軍需部工事現場主任の場合】
「船舶で部下と移動中、下船した全員が赤痢に罹り、海軍病院に入院。
入院中の一カ月分の全員の給料１１４円７５銭を特別ノ考慮ヲ払ウコトナク部下に渡し、配るようにという。
部下のＯはこれを横領、遊興に当てる」
「謹慎７日、謹慎中服務すべし」
うーん。
深く考えることなく人に任せたことの方が業務上横領より罪が重いとは、なんだか全く海軍さんの考えは分かりません。
自分が犯罪を犯すより、責任を持たない管理者の方が悪、とされたわけですね。
【海軍情報局Ｋの場合】
公務出張中軍事秘密項を入れたカバンを網棚の上に置き忘れる。
カバンは駅員が収得するが「思想的マタハ通牒ノ意志無ク」取りに来る者がいないので中身を点検。
「謹慎１０日」
うっかり軍事秘を置き忘れるというのもなんだかですが、悪意があったわけではないので１０日。しかし、これが業務上横領と同じというのは、重いですね。
さて、さすがに現場の士官や下士官に対して横領などの事例は見られません。
しかし、フネに乗っている責任者の判断ミスはしばしば懲罰扱いになったもののようです。
【機関長Ｙの場合】
水面計の故障のため一号管左右煙筒煙管３分の２ 加熱のため使用不能
「謹慎一日」
点検ミスか、あるいは操作ミスでしょうか。
懲罰対象になってしまうのが凄いです。
【航海長Ｍの場合】
風の強い日、フネを座礁させ、浸水をもたらす。
その地理に詳しくなかったのは同情すべきとしながら
「謹慎一日 謹慎中服務すべし」
さて、この出された懲罰で一番重かった事例をご紹介しましょう。
【艦船乗組予備少尉Ａと同特務中尉Ｂの場合】
ある日、停泊中の艦船乗組Ａ予備少尉は、その夜陸で宴会があるのを聞き、出席を誘われたのだが、その夜当直将校であったため、判断できず、特務中尉Ｂに
「自分ハ如何ニスベキカヲ問ヒタルニ」
特務中尉Ｂ、自己憶測に云うに
「先任兵曹ニ委セテ上陸セヨ」
その後上陸して酒を飲んだのみならず現地で一泊して翌日三時帰艦。
えーと、三時とは夜中三時のことですか？
「寝てしまった」となっているので、もしかして昼三時？
皆さん。
これ、海軍さん的にはどのような罰が下されたとお思いですか。
予備少尉Ａ（上陸したほう）３０日謹慎
特務中尉Ｂ（許可したほう）２５日謹慎
重くないですか～？
業務上横領や、横流し、軍秘置き忘れなんかメじゃないくらい厳しく罰せられてます(T_T)
当直将校が一日いなかっただけで、別段何の事件もなかったのに、です。
海軍では、盗難より責任感の欠如を重く見る、ということなのでしょうが、こういう気の緩みこそが軍人としては厳しく罰せられることだったわけですね。
