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ヘローキャスティング~MINEX・掃海隊機雷戦訓練@伊勢湾

2016-02-11 | 自衛隊

MINEX、というのを「ミネックス」と読んでいる方、ぜひともたった今から
「マイネックス」と読むようにしていただければ幸いです。
掃海隊機雷戦訓練のことをマイネックスと呼ぶのは、機雷の「Mine」からきているのです。
つまり

Minesweeping Execise」

の略語だったんですね。
ショートスティと言われる掃海、そしてPAP投入による機雷掃討と
報道陣に見せる訓練が順調に進み、ヘリコプターから海中に
EOD(水中処分員)が進入して機雷に爆薬を仕掛ける、という想定の

ヘローキャスティングが次に行われることになりました。

甲板に出ると、ヘリが飛び立ったあとの掃海母艦の「ぶんご」が、
どおおお~んといった風情でその雄大な姿をダウンウォッシュの向こうに見せています。

 

はい、こんな感じ。
掃海母艦「ぶんご」、そして今回1機のみ参加のヘリMH-53E、模擬機雷、
そして水中処分員の作業を見守り時に支援するボート。

これらが一気にフレームに収まる位置に配されております。

あとからわたしたちは「ぶんご」に乗り移ったのですが、そのときに
掃海隊司令である岡海将補が、このときのことについてこうおっしゃっていました。


「わたしたちの(ぶんご)方から『いずしま』がヘリの向こうに見えているので、
写真を撮ると、ヘリの後ろにぶんごがちょうど写ることになるなと思ったのですが、
あれは逆光でしたね・・・失礼いたしました」

なんと、掃海隊司令は、ヘリのバックに「ぶんご」が控えるというアングルで
写真を撮ることまで気を遣って「ぶんご」を操舵させていたということなのです。

このときに、「いずしま」船上でも、「逆光ですねー」と第1掃海隊司令が
気を遣う発言をしていたので、わたしはとにかく海上自衛隊がこのような場合、
カメラ写りまでを考えてくれていることを知って驚愕しました。

しかし、それに対しプロのカメラマンであるミカさんは

「いえ、逆光もそれなりにいい写真が撮れるんですよ」

とこちらも気を遣った慰め?をしていました。
まあ、わたしのレベルでは逆光は逆光にすぎないできですが(笑)、それでも
現場のこのときの迫力はお伝えできるのではないかと思います。



これも逆光でシルエットにしか見えませんが、待機しているゴムボート。
EODのウェットスーツを着た4人の隊員が乗っています。



後で「ぶんご」に乗り移ってから、わたしはヘリコプターのダウンウォッシュを
生まれて初めて至近距離で体験したのですが、それはすさまじく、
ちょうどヘリの移動する部分だけが白く細かいしぶきが立ち上がっています。
ヘリも気を遣ってボートの上空は飛ばない模様。



ボートを望遠レンズで狙ってみました。
見た目より特に舳は深いので、濡れることは無いでしょうが、
それでも2月の海の上、ボートの上で風に吹かれっぱなしというのは
実に厳しい労働環境であるとしか言いようがありません。

ちなみに、ウェットスーツの下は完璧に普通の恰好だそうです。
全く水を通さないんですねえ。



もう一度ズーム。
ボートの周りに波型にロープがめぐらされているのは、海中から上がるとき
ここをつかんで自力で体を持ち上げるためのものです。
エンジンには「TOHATSU」と書かれていますが、トーハツ株式会社は
船外機、消防ポンプなどを製作している会社で、戦時中には
2ストロークガソリンエンジンを主力とし、軍の発電用エンジンを主に生産、
軍管理工場となっていたこともあります。

海上自衛隊との関係は海軍時代からのものでしょうか。




さて、訓練海域に到達したヘリがホバリングし、
ワイヤーが下されました。



まず最初の水中処分員が降りてきます。


 
前回と今回の掃海隊訓練見学の合間に、わたしは習志野の降下初めで
陸自のヘリからの降下を見学し、それについて少し知るところとなったのですが、 
その知識によると、この降り方は「リぺリング」(一般でいうラぺリング)にみえます。

両足でロープを挟み、手で体を保持して滑り降りるやり方に見えますが、
やはりいざという時の危険を考えてファストロープ方式かもしれません。



ファストロープはリぺリングより安全だとはいえ、まあでも
・・・・これを見る限り、万が一落ちたら結構おおごとかもしれない。

やはり水中処分員の仕事は大変危険なものであり、 日頃から彼らは

トレーニングで体を作り、厳しい訓練で鍛え上げて事故のないようにしているに違いありません。

そんな掃海隊のモットーとは、

「適切な判断力、俊敏な行動力で任務を果たして必ず帰還

です。 

 




そして二人目が降下。
白いヘルメットがとても目立ちます。

「どうして必ず二人一組で行うのですか」

横にいた第1掃海隊司令にうかがったところ、

「三人だとケンカになるからです」

えっ!それはあまりに斬新な角度からのご意見。

「というのは冗談で(冗談だったんかい) 、安全のためですね」

一人で行っていて、なにか・・・・たとえば海中で貝に脚を挟まれたとか、
(それはないか)とにかく助けが必要になる状況が起きたとき、
迅速に状況を外部に伝えるためにも、二人一組で行うということのようです。



前回は遠くて全く見えなかったのですが、今回ははっきりと、
海に入った水中処分員が二人、機雷に近づいていくのが撮れました。



一人が機雷に炸薬を仕掛けているという設定。
必ずもう一人は離れた位置でそれを見守るようです。



その様子を、ボートの上のEODはひとりが写真に撮り、(かな?)
一人は名簿らしき紙になにやら記入していました。

「もしかしたら点数をつけているんですか?」

と聞いてみましたが、今回は点数はつかないようです。



こういう、浮いている機雷の処分を、浮遊・浮流機雷処分というそうです。
こういう機雷の処理はタンクも背負わず、シンプルな格好で行います。

これ、何していると思います?

機雷はそれが触れると爆発を起こす「触角」を持っています。
触角が爆発を起こす衝撃は約数キロと言われています。
人が触って決して爆発しないという数値ではないため、
慎重に爆薬(だいたいペットボトルの大きさ)を装着します。

二人一組で行うのは、一人が装着を行い、一人は援護・警戒役です。
 
この写真は機雷に取り付きながらも周りを見回しているように見えますが、
必ず作業前に周囲の警戒をすることもルーチンになっているそうです。



そして、導火線に着火を済ませたら、数分の間に安全地帯まで泳ぐか、
ヘリに再び揚収してもらって、爆破を見届けます。
訓練なので機雷を爆破することはされませんが、海上にいる支援船では、
残り時間をちゃんと計って任務が成功したかどうかチェックしています。

何か失敗して、制限時間が過ぎたら、松岡修造のような人に

「はい今死んだ!今君爆発に巻き込まれて死んだよ!」 

とか怒られてしまったりするんでしょうか。


ファストロープで釣り上げられるEOD。



一組目がすんだあと、もう一度ヘリはその海域を一周します。
「ヘリが現場に着くところからヘローキャスティング」ってことなんでしょうか。



二組目、最初のEODの降下。



いくら海水とはいえ、ダウンウォッシュの霧の中に降りていくのは
最初は恐怖感があるのではないかと想像します。
なにしろ、ものすごいんですよ。ダウンウォッシュの風力って。(経験談)



海の上に降りるや否や、全速力のクロールで泳いでいくEOD。
基本平泳ぎや横泳ぎしている場合ではないってことでよろしいでしょうか。

 


一人目が機雷にたどり着きました。



二人目も降下し現場に到着。



そのとき、支援船の上のEODがなにやら声を掛けました。



と思ったら、船の上の声をかけていた人が飛び込んだ!



なぜか機雷の周りに人が三人いる状態。
何があったのか、わたし程度の知識ではさっぱりわかりません。

第1掃海隊司令!三人飛び込んでますよ!?これケンカにならないんですか?




なんか忘れ物でも届けにいったとか・・・?



飛び込んだ人はすぐにボート上に上がり、支援の人は遠くから見ています。



支援船の上の人は、文字通り訓練の際に必要とならば
いつでもこうやって海中に入り支援を行うようです。



ところで、この画面上をご覧ください。
訓練海域を堂々と漁船が突っ切っていきます。
これ、いいのか(笑)

平成23年、呉基地所属の掃海艇「みやじま」が夜間錨泊中、
見張りを怠った地元の漁船に衝突された事件がありました。
これは広島海難審判において漁船に過失があるとし、漁船の操縦士を
一か月の業務停止にするという判決がでたのですが、判決において

「みやじまは 守錨当直員が見張り不十分で、このことに気付かず、長栄丸に対し、
汽笛による注意喚起信号を行うことなく、その左舷前部に長栄丸の船首が衝突した。」

とし、自衛隊側の見張り不足も注意されております。
しかも、状況は

「訓練海域は、安全に訓練を実施するために漁船の操業を制限して設けられた
補償海面と称する海域内にあり、訓練終了後錨泊する際も、
同海面内に錨地が指定されていた。 」


だったのにですよ?
そういう場所で錨泊しているときにぶつかって来る相手に見張り不十分って、
自衛隊側にずいぶん厳しくない?


この写真の漁船だって、訓練海域の目と鼻の先をかすめるように通過していってるし、

訓練海域を借りるのに、なにやら自衛隊がずいぶん漁協に下手にでなてくては
いけないような風潮といい、これといい、なんかおかしくないですか?


と、わたしがたった一人で怒りに燃えていると(笑)「いずしま」はくるりと向きを変えました。

どうやらヘローキャスティングの見学時間(15分)は終わり、
1130から「ぶんご」に移譲する準備に入るようです。
今日は前回のような波のうねりもなく、問題なくラッタルを掛けることができるでしょう。

やった!今日こそは掃海母艦で海自のカレーが食べられるぞ!
とこおどりしたわたしでしたが、この予想は外れることになります。


続く。