「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

謳われぬ英雄たちに捧ぐ Unsung Heroes

2016-06-14 | 留学するまでの色々
西洋では古くから吟遊詩人が英雄譚を謳い、広く民衆に物語を伝えてきました。
たとえば神々と英雄たちの活躍を今に伝えるギリシャ神話などは、名も無き吟遊詩人たちが幾星辰も謳いながら、継承されてきたのです。そこから転じて、謳われない英雄、つまり「目立たないけれど重要な役割を果たした人たち、陰の功労者、縁の下の力持ちのような存在」を Unsung hero と呼びます。彼らは、吟遊詩人に謳われるような華々しいスターではないのかもしれませんが、あるいはいずれ忘れ去られてしまうのかもしれませんが、たしかに「英雄 Hero」なのです。

先日、我々が書いた或る英文エッセイが国際医学誌に掲載されました。
私の目指す研究とは直接の関係はありませんが、しかし、私が「広く世界に向けて伝えたい」と願っていた内容です。すなわち、2011年東日本大震災および福島原発事故直後の混乱期に「自分たちも被災者でありながら」患者さんのため地域住民のために公立相馬総合病院で一生懸命に闘い抜いたスタッフの物語を書いたのでした。公立相馬総合病院が相双地域で中核病院として唯一診療を続けることが出来たのは、彼らあってこそなのです。

苦悩した看護師さん。逃げなかった栄養士さん。
あの日、病院で力を尽くして使命を果たした全てのスタッフに捧げたい。
誰にも知られなかったとしても。
誰からも顧みられなかったとしても。
誰からも称賛されなかったとしても。
それでも彼らの活躍はきっと忘れられるべきではないと思いました。

いつか報われてほしいと願いながら、魂を込めて書いたエッセイです。「英語だから読めません」と言われることもありますが、やはり広く世界に向けて発信するためには英語である必要がありました。
1人でも多くの読者に、彼らの活躍を知ってもらいたい。福島のUnsung Heroesを知ってもらいたい。
そして、いつか彼らがきっと報われますように。一生懸命に頑張った人たちが救われるように。
心からそのように願っています。

私に出来るのは、今はこれが精一杯