「不可視の両刃」放射線に挑む ~或る医学者の英国留学記~

福島原発事故被災地での臨床経験がきっかけとなって放射線医科学を研究しています

サイエンス・コミュニケーション

2017-02-21 | 英国大学院博士課程に関して
本日は、大学院のセミナーがありました。
テーマは「サイエンス・コミュニケーション(Science Communication)」。研究に従事する際の基本的な心構えから、研究不正、論文投稿、アカデミックサバイバルについてなど、多岐に亘る内容でした。

小保方女史によるSTAP細胞の事件は、日本人研究者の端くれとしてはとても耳が痛いのですが、近年の研究不正(あるいは百歩譲って疑惑と言ってもいいですが)における最大級の出来事でした。
その話だけで20分くらいだったでしょうか、Natureが載せた例の論文とその後の顛末(再現実験の失敗など)についての解説を聞きながら、なんというか穴があったら入りたい気持ちになったのでした。本学大学院に在籍する日本人は私だけですから。
遺憾ながら、本件は、韓国の黄禹錫の件、ドイツのヤン・シェーンの件と並んで「世界三大捏造」と言われています。

その他にも、JBC(Journal of Biological Chemistry、悪くないが良くもない中堅ジャーナルで、主に生化学・分子生物学を採り上げる総合生命科学誌)にすぐに投稿するか、3か月さらに実験を重ねてNature Medicine(いわゆるNature姉妹紙で、世界トップレベル医学誌の一つ)に出すべきかなど、なかなか興味深い議論が展開されました。Publish or Perish(論文を出版せよ、さもなければ去れ)という研究業界の中で、安全策をとるか、夢をとるかが検討されましたが、当然ですが、結論はJBCに投稿しましょうということです。講師の先生曰く、「リアリストであるべきです」とのこと。
世界最高峰の医学誌NEJM(New England Journal of Medicine)に時折掲載される面白い論文の話なども印象的でした。「ユーモアも時には要るよ」ということなのかもしれません。
英国の大学院ではこの種のコミュニケーション、リテラシーの教育にはかなり重点を置いているそうです。本学も、当然ですが、厳しい基準が求められています。やはりサイエンスという営みに対する理想が、日本よりも、ずっと高いような印象を受けました。

写真は、博士号取得後のキャリアパスに関するレクチャーの写真です。
「アカデミックポストはごく一握り。正直言って、皆さんは、他の道も常に探しながら、博士課程を送るべきでしょう」など、講師の先生のきわめて率直なご意見も伺いました。最近のEUのポスドクはアカデミックポストに就けるのはわずかに年間6%に過ぎないということです。つまり、競争はとても激しいです。誰もが教授に成れるわけではありません。
私は、一応、医師免許を持っていて良かったと改めて思いました。
研究の世界は厳しいものです。
ジャンル:
学校
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