20世紀ウラ・クラシック!<最新版>

このページは、19世紀末から20世紀の末流ロマン派クラシック音楽に焦点を当て、同時代の録音評を中心に紹介しています。

☆アイヴズ:交響曲第4番

2016年10月13日 | Weblog

◎小澤指揮ボストン交響楽団ジェローム・ローゼン指揮タングルウッド祝祭合唱団(DG)1977初出・CD

同曲の古典的名盤。ティルソン・トーマス盤と並んで手に入れやすく、また初心者向 きのわかりやすい演奏だ。小澤の異様に巧緻なバトンテクの駆使された演奏である。 本来複数の指揮者を要するところ一人でさばいているのが凄い(実演でもそうだっ た)。この曲は求心力が弱くばらけがちゆえ、一人で引っ張っていってもらわないと なかなか巧く響かないところもあるので、まさにうってつけ。解釈は「旋律重視」。 基本的に旋律を横につないでいくやり方で曲を組み立てている。一人で振っているせ いか、かなり単純化しているぽいのだ。その点ミュンシュのやり方に非常に近いもの を感じる。カオスをカオスとせず、その中から特に魅力的で目立つ旋律だけを汲み上 げて、そこを中心に響きを整えていくやり方だ。その整え方もかなりずばっずばっと やっていて、結果的にアイヴズ特有の豊穣感が損なわれ、音楽が薄くなってしまって いるきらいもあるのも確かである(この点ティルソン・トーマス盤のほうが好きな人 が多い所以かもしれない)。しかしそこを更に録音マジックで補っているふうでもあ る(実演とのギャップも実にここに感じた)。細かく各楽器の強弱を電気的に操作し て、整理整頓をさらに進めると共に、薄くなりがちなところを強調すべく音響を操作 し、結果として絶対実演ではどの席に座っていても聞くことが不可能なほど好バラン スに纏め上げられた音楽を作りだしたのだ。ここまででネガティブな印象をもたれた 方もいるかもしれないが、寧ろこれこそ録音芸術の醍醐味として聞いていただきたい ものである。録音マジックのよさは細かい楽器の動きが聞き取れることにもある。た とえば3台ほどあるピアノの音が明瞭に聞こえ(四分音ピアノが美しい!)、アイヴ ズの魅力的な打楽器的用法がはっきり聞き取れるのがいい。打楽器的、といってもプ ロコフィエフ的な意味ではなく、むしろ鉄琴やトライアングルなどの高音打楽器の位 置付けにおいて魅力ある響き方をしている。アイヴズの大規模な管弦楽作品において のピアノはその意味ではほとんど打楽器である。3楽章のボストン交響楽団の弦楽合 奏は好きな人が多い。ちょっとあっさり早めであるが、力強く豊穣な響きと暖かさ (この演奏は終始肯定的で明るい、まさにアメリカン・カントリー的)が大いに魅力 的である。4楽章はカオスといっても2楽章ほどではなく、一貫したものが始めから 存在している。それは無調的に変容した賛美歌旋律の断片を次第に集積・復元してい って最後に完成したところでおおいにうたうというアイヴズの常套的な(でも個性的 でとても魅力的な)手法によっており、小澤はそのことをかなり意識した曲作りを行 っている。復元の過程がとてもわかりやすく、クライマックスへ向けてのダイナミク スの付け方も的確である。とにかくここに聞かれるのはアイヴズ得意の手法なだけ に、初心者は傾聴である。小澤以外のものは途中カオスに陥っていることが多い。ス ケール感を損ねず綺麗にいったのはドホナーニ盤くらいか。アイヴズはとにかく編成 からも手法からも内容的にもスケールがどでかいので、その感じと構成感を両立させ るのは結構難しい。小澤もスケール感をやや損なっているきらいもある(最後の「答 唱」にあたる合唱の神秘的な歌のあたりなど)。また、ややリアルすぎるというか、 例えば最後の最後に一人残るソロヴァイオリンが下降音形を繰り返すところなど、幻 想のうちに沈んでいくような「憂い」が欲しいところ、あまりに即物的にびしっとハ ッキリ切ってしまっている。これは録音操作だと思うが、ここまで強調させて聞かせ ることは無いところだ。でもまあ、そこまでの持っていき方、起伏のつけ方の巧さだ けでも驚きである。感情的な高ぶりを最も感じられた盤であり、今では若干食い足り 無さを感じるところもあるけど、十分◎だ。あと、この曲はとにかく弦楽器が詰まら ないのだが、ボストンは意地になっているのか、とても力を入れて大きな音で弾きま くってくれている。それが出色。,
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