20世紀ウラ・クラシック!<最新版>

このページは、19世紀末から20世紀の末流ロマン派クラシック音楽に焦点を当て、同時代の録音評を中心に紹介しています。

☆ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

2016年10月29日 | Weblog
◎ロジェストヴェンスキー指揮ウィーン・フィル(CINCIN)1978/4/16LIVE・CD

プラウダ上での批判をへて総譜撤回され、26年をへてやっとコンドラシンにより初演された、ショスタコーヴィチ初の大作交響曲である。意外と旋律性に満ちており、マーラー的な絵巻物が次から次へと繰り出される面白い曲だ。3楽章制で、短い中間楽章とブリッジ状の両端楽章という外形だが、聴感的にはもっと細かい分節に別れているように聞こえる。1楽章はかつてアイスクリームのCMで使われた、打楽器要素の強い印象的な(中国風な)開始部から軍隊行進曲ふうの息の長い主題、このあたりでぐっとつかまれる(つかまれなかったら多分あとの音楽も楽しめない)。アレグロからプレストという目の回るような音楽はあまりに多彩すぎてかえってわかりにくいという印象も与えかねないが、集中力の高い「巧い演奏」で聞けばお腹一杯楽しめよう。中間楽章はスケルツォふうでもないちょっと不思議な印象の楽章。3楽章ラールゴはショスタコーヴィチがよくやる「尻すぼみ構造」の先駆でもあるが、「ウィリアム・テル」のエコーや、爽快な旋律を含むアレグロ部が織り交ざり(但しショスタコーヴィチの常として爽快なフレーズは一回だけ顕れたきり消える)、全体としては晦渋さというものはそれほどでもない。寧ろシニカルな笑いをさそう。ひびきの不思議さ、とくに鳥の声を模したフレーズが織り交ざったり、終結部のように不気味な静けさのなかに鉄琴のひびきだけが支配する印象派的な音楽も聞き物だ。フレーズの執拗な「繰り返し」がみられたりするが、「優秀な演奏で」聴き通してみるとそれは意味があって繰り返されているのであり、この大曲にはそもそも不要な音符がひとつもないのである。7番など名作であっても冗長と思われる部分があったりして、4番のほうがむしろ隙の無い曲だったりするのだ。総じてマーラーの精神分裂的感動路線を引き継いだ優秀な作品といったところで、5番ほどの凝縮も7、10番ほどの円熟もないものの、この時期のショスタコーヴィチにしか書けなかったであろう、瑞々しい感性と深い思慮のバランスのとれた名作なのである。ロジェストヴェンスキーの指揮はソヴィエト文化省管弦楽団とのメロディヤ録音で知られるが、外面的要素が強く、録音も演奏もスカスカの印象は否めない(でも私はこの録音ではじめてショスタコにハマった)。対しこの演奏のぎっちり中身の詰まっていることといったらない。いや、これまでこの曲に好意的に書いてきたのは、あくまでこの名演が念頭にあるからであって、ほんとうはそれほどの曲でもないのかもしれないが、このような異様な雰囲気に包まれた演奏で聴いてしまうと、どうしても贔屓目に見てしまう。ウィーン・フィルは録音が悪いため音色感があまり感じ取れないが、その機能性の高さ、指揮者に対する全幅の信頼とその証しとしての物すごい集中力はびしびし伝わってくる。その譜面の、ひとつひとつの音符を愛して下さい、と言ったのはバルビローリだが、ここではショスタコーヴィチが譜面にのこした音符、そして休符すらも全てそこで主張すべきことをしっかりと主張できている。ウィーン・フィルの魔術的な腕を堪能できる。また、ロジェストヴェンスキーのスコアの読みは巧く(深いかどうかはわからないが)、長ったらしい音楽をいかに面白く聞かせるかというすべを知っている(そういえばこの人も「ブルックナー振り」だ)から、たとえば細部に拘泥して全体が見えなくなるような下手なマネはしない。とても巧い舵取りだ。とにかくこの曲の旋律のひとつひとつがいかに鮮やかに浮き彫りにされているか、一度聴いてみて欲しい。楽団員の何人かが感極まってポルタメントをかけてしまうなど、ショスタコの演奏では異例だろう。録音は悪い。ステレオだが半分擬似っぽいぼやけた録音である。しかし、これは奇跡的な名演である。,
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