20世紀ウラ・クラシック!<最新版>

このページは、19世紀末から20世紀の末流ロマン派クラシック音楽に焦点を当て、同時代の録音評を中心に紹介しています。

☆ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第5番

2017年05月17日 | ヴォーン・ウィリアムズ
◎クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(Guild)1943-48live・CD

謎の仰天盤でびっくりした。このシリーズは初出は殆ど無いのだが、これもどこかで知られず出ていたのだろうか。とにかく録音は旧いのだが1楽章から弦楽器の素晴らしく整った和音の美しさに心奪われた。ヴォーン・ウィリアムズからラヴェルを引き出している。この硬質の美しさはこの時代にしては驚嘆すべきもので、リマスターがかなり入っているとしても、実演の透明感、美しさを想像させるに十分なものである。クーセヴィツキーのトスカニーニ的な前進力が出てくると、必要以上にドラマを引き出してしまいヴォーン・ウィリアムズの本質をやや遠ざけているようにも思うが、テンポを揺らすほうではなくあくまでアッチェルさせ煽り、打楽器などリズム要素を強く打ち出しブラスを完全にりっした状態にもっていき、だらだらしたロマンティックな演奏にはしない。4楽章前半など余りにベートーヴェン的なテンポの持って行きかたで、表現がダイナミックすぎ常套に落ちる部分もあるが、この曲にその方法論で「常套」を表現した演奏記録などかつて聞いたことはない。ドラマの中に織り交ざる緩徐部での木管を中心とする「金属的な美しさ」もぞっとするくらいの感情の起伏の伏を打ち出している。そして何といってもボストンの弦ならでは(フィラ管にもこの音は出せたかもしれないがハーモニクな合奏力では勝る)、最後の泣きのヴァイオリン合奏。木管ソロに唄い継がれる「戦前の穏やかな風景に向けられた遠いまなざし」、このコントラストがまた素晴らしい。改めて全体が流麗な流れの中に、けしてロマンティックのぐだぐだにも即物主義の筋肉質にもならず、ひたすら骨太な主観のもとに「ロシア風に強く味付けされ」コントラストも激しく構築されていることに気づかされる。いや、ロシアにこんな美しい響きの音はなく、ボストンにしてなしえた奇跡的な名演奏だったと言えるだろう。「こんなドカドカくる演奏、RVWじゃない!」などといって途中で投げ出したら後悔します。どこまでも眩く輝く田園の情景の記憶の中に去り行く、もうこの世にはないものへの深い愛情が、はからずもこの異国の権力的指揮者の手によって表現された、RVWが嫌がったろうくらいの強い表現をとりながらも最後には本質をズバリ言うわよ。◎。ロジンスキなんかもこの方向性に一歩踏み込めていたら・・・オケ的に不利か。

※2007年の記事です。
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