20世紀ウラ・クラシック!<最新版>

このページは、19世紀末から20世紀の末流ロマン派クラシック音楽に焦点を当て、同時代の録音評を中心に紹介しています。

☆レスピーギ:ローマの松

2016年10月11日 | Weblog
◎ケンペ指揮ロイヤル・フィル(SCRIBENDUM他)1964/5/22-25・CD

明るい。そしてあったかい。あきらかにドイツ系の音作りをする指揮者だけれども、それでもそんなところが存外イギリスのオケにあうのである。イアン・ジョーンズのマスタリングは正直あまり好きではないのだが(変にクリアでささくれだったように感じるのだけれど)これは元のリーダース・ダイジェスト録音がよかったのだろう。60年代のものとしてはこの上ない良好な状態である。この人といったらまずリヒャルト・シュトラウスだそうだが、末流ロマン派作曲家の充実したオーケストレーションを生かしたすこぶる立体的な演奏を行えることの証しである。この演奏ではっとさせられるのはまずは瑞々しいリズムのキレだ。1楽章のウキウキした音楽は本当に楽しい。オーケストラの華やかな響きもこの上なく瑞々しく表現されている。金属質の硝子のように硬質で明るい響きが求められる楽章だがケンペはそんな砥ぎ方整え方はせず人間的な柔らかさを持った響きを創り出している。この曲中では一番陰うつなはずの2楽章はなぜか明るい。というか優しいのである。語り口が巧いのでこういうアプローチもアリだと思わせるものがある。幸福なカタコンベ、ちょっと不思議な感覚だ。3楽章にはそのままの幸せな気分で入るが、この楽章、ケンペの性向にあっているのだろう、同曲中白眉の美しさである。とにかく色彩的で煌びやかだ。ここにはとても素直で穏やかな気分の発露がある。録音がいいせいかいくぶんリアルな夕暮れの風景といった感じだ。ただここで余りに存在感のある演奏を行ってしまったがために4楽章は既に頂点に来てから始まってしまうような感じがあり、クライマックスへ向けて進軍するローマ軍の行進というより、ただ騒々しいフィナーレといった感じが拭えない。それでも迫力はあるのだが。ケンペの紡ぐ華麗な音楽は幾分オリエンタルな趣を内包し、レスピーギの師匠リムスキーの後香を嗅ぐ思いだ。このオケ、フィルハーモニア管かと思うくらいに素晴らしい技術と感性を発揮していて、とくに管楽器群の巧さには舌を巻く。ただ、2楽章で遠くからひびくペットソロに始まり、とくに4楽章、ブラスの一部(バンダだけか?)のピッチが低い感じがする。マイクからの距離のせいでずれて聞こえてくるのかもしれないし、ひょっとすると和声的な整合性を計算しての微妙な音程操作がクリアな録音のせいで逆方向に働いた結果かとも思う。あまり指摘する人がいないので私だけの妄想的感想かもしれない。だがこれはチューリッヒのライヴでも同じ感想を持ったので、あながち妄想とは言えないような気もするのだが、小さい事なのでいいです(でもこの完成度の高い演奏の中では目立った)。全般、カラッと乾いた南欧的な明るさが持ち味の「松」という曲に対して、紫外線を感じさせないというか、ちょっと生ぬるい湿度のある明るさを通した演奏であり、その意味では特異である。中欧の指揮者のやる構造的でがしっとした重い演奏とももちろん違う。ケンペ独自の境地だろう。ここには生身の人間の暖かさがあり、音楽の生き生きした脈動がある。音楽が生きている。◎。,
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