Just Another Day in the Life of KC

International Relations 101 : 国際関係学 101

イランに恩を売り 国益を拡大するインド

2012年03月09日 | インド
まず以下の二つの記事を要約すると:

インドは「対テロ作戦」「警備部隊養成」「貿易」に関わる重要なパートナーシップ協定をアフガニスタンと結んだ。 さらにインドは「過激派との戦い」「2014年米軍撤退後の地域の安定化」で、アフガニスタンを援助することを約束した。


アフガニスタン政府は、国内最大の埋蔵量を誇る鉄鉱山の採掘権を、インドの国営と民間企業のコンソーシアムに与えて、アフガニスタンにおける新たな戦略的役割をインドに提供した。 アメリカ政府の試算によると、アフガニスタンには約1兆ドル(約80兆円)の未採掘の鉱物資源が眠っている。






インドは二つの目的で、アフガニスタンとの関係強化を進めている。

一つは、アフガニスタンに眠る豊富な鉱物資源の採掘権を得るため。(中国もこれを狙っている)

アフガニスタンの鉱物資源の内訳は、鉄鉱石(約4200億ドル)・銅鉱石(約2800億ドル)・その他(約3000億ドル)で、合わせて1兆ドル(約80兆円)にのぼる。

もう一つは、インドを攻撃するテロ組織ラシュカレ・タイバ(LET)の訓練拠点を掃討するため。

アフガニスタン・パキスタン地域には、三つの大きなテロ組織がある。

(1) アフガニスタン人・タリバン。 これが一般的によくタリバンと呼ばれる武装組織で、アフガニスタン生まれのパシュトゥーン人により形成される。 アフガニスタンの他の民族(タジク人・ハザラ人等)を打破して、アフガニスタンを制覇するのが彼らの目的だ。(1996年に一度アフガニスタンを武力統一したが、2001年にアルカイダをかくまっているという理由で連合軍に追い出された)

(2) パキスタン人・タリバン。 パキスタンで生まれたパシュトゥーン人の武装組織で、 TTP(Tehrik-i-Taliban Pakistan )と呼ばれる。 パキスタンの他の民族(パンジャブ人・シンド人等)にテロ攻撃を仕掛けることで知られている。

(3) ラシュカレ・タイバ。 この武装組織は LET(Lashkar-e-Taiba)とも呼ばれ、主にパキスタン人により形成される。 彼らの目的はインドにテロ攻撃を仕掛けることで、以前はカシミール・インド領(以下の地図の黄色い部分)でテロ攻撃を敢行していたが、2008年のムンバイ同時多発テロ事件など、インドの大都市にもテロ攻撃を仕掛けるようになった。


ラシュカレ・タイバはソ連撤退後の1990年に、パキスタン軍とパキスタンの諜報機関 ISI(Inter-Services Intelligence)が、アフガニスタン東部のクナル州に設立した武装組織で、表向きには関係を否定しているが、実際には今でもパキスタン軍と ISI が訓練キャンプで指導にあたっている。

米軍は主にアルカイダとタリバンの掃討に集中してきたため、ここ数年ラシュカレ・タイバがその勢力を拡大している。

インドとしては是が非でも、アフガニスタンにあるラシュカレ・タイバの訓練拠点を壊滅させ、インド国民をテロの脅威から守りたい。

◆ ◆ ◆

鉱物資源とテロ組織掃討のため、インドはアフガニスタンとの関係を強化したいのだが、以下の地図でも分かるように、アフガニスタン・インド間の陸路にはパキスタンと中国というインドの宿敵が立ちはだかっている。


そこでクローズアップされるのが、イランの存在だ。

インドはイランとの友好関係を維持して、アフガニスタンの鉱山からイランの港町チャバハールまで鉄道を引く計画の最終承認をイラン政府から得ようとしている。

以下の二つの記事を要約すると:

インドは、インドの援助で建設されているイランのチャバハール港と、鉱物資源が豊富なアフガニスタンのハジガク地方を結ぶ全長900kmの鉄道建設計画の最終調印まであと一歩だ。 この鉄道が完成すると、この地域におけるインドの影響力と戦略的プレゼンスが増大する。


インドは原油の支払い方法に関してイランと合意した。 インドはイランが開設したインドの銀行口座に支払い額の45%をルピーで入金し、イランのインフラにも投資する。 このインドの画策で、イランに対する制裁の効果は思ったほど出ないかもしれない。 イランの Seyed Nehdi Babizedeh 駐印大使は、インドの銀行に口座を開設したことを認めた。


欧米は対イラン制裁でアジアの国々にも協力を求めているが、インドは協力していない。

それどころかイランの原油収入確保と、イランへの食料物資輸送を可能にするため、欧米の厳しい金融制裁をくぐり抜ける独自の方法を画策している。

制裁でイラン経済が苦境に立ついま、インドはイランに恩を売り、自らの国益拡大を図るしたたかな国なのだ。


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イランは反撃するのか?

2012年03月02日 | 中東・アラブ
最近毎日のようにイスラエルのイラン攻撃に関する報道を目にするが、2月10日の記事でも指摘したように、私はその可能性は低いと見ている。

なぜならイスラエルという国は、本当に攻撃を仕掛けるときは、事前にその可能性に言及しないからだ。

1981年のイラク・オシラク核施設攻撃の際も、2007年のシリア・アルキバル核施設攻撃の際も、何の前ぶれもなかった。

ただ万が一ということもあるので、今回はイスラエルがイランの核施設を攻撃した場合、イランがどのように反応するのか考えてみよう。

◆ ◆ ◆

もしイランが反撃するとすれば、レバノンに拠点を置くヒズボラのロケット弾による反撃の可能性が高い。

現在ヒズボラは、以下の4種類のロケット弾を保有している。(数字は推定)



各ロケット弾のレンジ

ヒズボラのロケット弾は2006年のイスラエル・ヒズボラ紛争でも、イスラエル北部にある程度のダメージを与えたが、それ以来イスラエル最大の都市テルアビブを標的にする長射程のロケット弾(Zelzal-2)を増強してきたので、次回は相当のダメージを与えることが可能だろう。

注)軍事専門家の中には、 Zelzal-2 の射程距離を200〜400kmと主張する者もいるが(その場合イスラエル全土をカバーする)、少なく見積もっても100kmはあるので、テルアビブが射程圏内に入る。

◆ ◆ ◆

しかし私はイランは反撃しないと見ている。 その理由を三つほど挙げると、

(1) NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty:核拡散防止条約)から脱退する大義名分を手にする。

イスラエルは NPT に加盟することなく、IAEA の査察を受けずに核保有国になった。

これを可能にしたのはアメリカのイスラエル・ロビーだが、世界の多くの国がイスラエルの手法をルール違反とみなしている。

イランは反撃しないことによって、「NPT に加盟せず核保有国となったイスラエルに、将来核兵器を持つかもしれないという疑いだけで一方的に攻撃されたんでは、NPT に加盟し続ける意味がない」と言えるようになり、NPT 脱退を正当化できる。

(2) 中東の二つの大国、トルコ(人口:7500万人)とエジプト(人口:8400万人)を味方につければ、イラン(人口:7500万人)を含む三つの大国による巨大なイスラエル包囲網を形成できる。

イスラエルによるガザ支援船襲撃でトルコ人9名が殺されて以来、反イスラエルが鮮明になる中、イスラエルがイランを一方的に攻撃すれば、トルコ人の反イスラエル感情に火がつくだろう。 

トルコの Erdogan 首相は Fareed Zakaria とのインタビューで、以下のように答えている。

ZAKARIA: Do you believe that Iran right now is a country with which the international community can have a constructive dialogue to monitor its nuclear program, or is Iran in your view a country that has to be watched and contained carefully?

ERDOGAN: Why is it that the country's banning Iran from having the nuclear weapons don't also ban Israel from having nuclear weapons? Israel possesses nuclear weapons. What is the excuse? That Israel is under siege? But Israel is the only country in the region possessing nuclear weapons. And Iran says that its only purpose is to generate affordable energy through nuclear power. We don't want to act on presumptions. And no sanctions based on presumptions are acceptable by Turkey.

ザカリア:国際社会はイランの核開発を建設的な対話によりモニターできると思いますか? 或いは注意深い監視と抑制が必要でしょうか?

エルドアン:イランの核兵器保有を認めない国がなぜイスラエルの核保有を認めるのでしょうか? イスラエル核保有の大義は? イスラエルは危険にさらされていますか? イスラエルは中東で核兵器を保有する唯一の国です。 イランは原子力発電が目的だと言っています。 トルコは仮定に基づいて行動しませんし、仮定に基づく制裁を受け入れません。

また2月25日に結果が発表されたエジプトの上院選挙では、ムスリム・ブラザーフッド系の FJP(Freedom and Justice Party:自由公正党)が58%、サラフィー派(イスラム原理主義)のヌール党が25%の議席を獲得し、下院よりさらにイスラム主義色が濃くなった。

イスラエル寄りの軍部から議会に権限が委譲されれば、エジプトが反イスラエルになるのは時間の問題で、イスラエルがイランを一方的に攻撃すれば、反イスラエル感情がさらに高まるだろう。

トルコとエジプトで反イスラエルが鮮明になったからといって、両国が直接イスラエルを攻撃することはないが、現在イランが行っているように、ヒズボラやハマスへの水面下の援助で、イスラエルを消耗させることは可能だ。

イランは、イスラエルに攻撃されたからといって、感情的になってすぐ反撃するより、トルコとエジプトを味方につけて、時間をかけてイスラエル包囲網を強化していく方が得なのを知っている。

(3) 反米・反イスラエルの旗の下、タリバンとの関係修復が可能になる。

ソ連撤退後のアフガニスタン内戦で、イランとタリバンは敵対関係にあった。

タリバンとは、アフガニスタン人口の42%を占めるパシュトゥーン人の武装組織である。

イランはアフガニスタン内戦で、ペルシャ語を話す三つのペルシャ系民族(アフガニスタンの人口の27%を占めるタジク人、9%を占めるハザラ人、4%を占めるアイマク人)を支援した。(1996年に、この三つの民族にウズベク人が加わって、北部同盟が結成される)

ちなみにタジクとはテュルク語で、ペルシャ人という意味だ。

1998年にタリバンが、アフガニスタン・マザリシャリフのイラン大使館を制圧し、イラン人外交官を殺害すると、イランはタリバンに対して宣戦布告したが、国連安保理の仲介によって、軍事衝突には至らなかった。

十数年前、イランとタリバンの関係は、最悪の状態にあったのだ。

しかしイスラエルがイラン攻撃の可能性をちらつかせる中、2月16日にイランのアフマディネジャド大統領はアフガニスタンのカルザイ大統領と共に、タリバンの事実上のスポンサーであるパキスタンを訪問し、ザルダリ大統領と会談した。


イスラエルのイラン攻撃をきっかけに、対立していたタリバンとの関係を修復できれば、コーラン焼却事件で火がついたアフガニスタンの反米感情にイランが油を注いで、アフガニスタンに駐留する米軍を窮地に追い込める。

さらにタリバンと密接な関係にあるアルカイダと接触できれば、アメリカやイスラエルを再びテロの脅威にさらすことができる。
 
◆ ◆ ◆

以上三つの理由で、イスラエルに攻撃されてもイランは反撃しないと私は見ている。

もっと極端に言うと、イランはイスラエルを挑発して攻撃させ、イスラエルを自滅に導きたいのだ。

イランは核開発施設を数十ヶ所に分散しているので、イスラエルがすべての施設を破壊するのは難しく、特に1月15日の記事で書いたように、約100メートルの岩山の下にあるフォルドの核施設を米軍の bunker-buster なしで破壊するのは不可能に近い。

イスラエルの攻撃を受ければ、イランの核開発が1〜2年遅れるのは事実だが、独自の技術と数千人の核物理学者を擁するイランにとって、それは致命傷ではない。

核開発が少々おくれても、上記の三つを手に入れる方が得だと踏んでいるのだ。

ただ私が考えることぐらい当然イスラエルも分析しているだろうから、やはりイスラエルがイランを攻撃する可能性は低い。


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キューバから情報を発信する人気ブロガー

2012年02月26日 | ラテン・アメリカ
カリブ海に浮かぶ島キューバは、外の世界から遮断されて50年以上になる。

共産党のバイアスがかからない情報を入手するのが難しいなか、キューバ人の日常生活を知るため、私がいつも読んでいるのが Generacion Y というブログだ。

このブログの著者は Yoani Sanchez(ジョアニ・サンチェス)という36歳の女性で、Generacion Y は月間 PV(ページビュー)数千万、一つの記事に2000以上のコメントがつく超人気ブログなのだ。


アメリカでは、1975年から1989年に生まれた世代を Generation Y(Y 世代)と呼ぶ。

ベビーブーマー(団塊の世代)を親に持つ世代を指すので、日本でいう団塊ジュニアのようなものだ。

ジョアニ・サンチェスが1975年生まれなのと、彼女のファーストネーム Yoani をかけて、Generacion Y というブログ名にしたんだと、私なりに勝手に推測している。

彼女のブログは、世界に4億人以上いるスペイン語圏の人々に読まれているほか、15ヶ国語に訳されている。

米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」「ベスト・ブログ25」、The Daily Beast の「恐れを知らない150人の女性」に選ばれたこともある。

彼女のブログには体制を批判する記事が多いので、外出時は常に尾行され、講演や受賞のため19ヶ国から渡航ビザを取得したが、19回ともキューバ当局は彼女の出国を許可しなかった。

キューバにあった彼女のサーバーはシャットダウンされ、今は知人の助けで海外のサーバーから情報を発信しているようだ。    

◆ ◆ ◆

当ブログは最近 BLOGOS に転載 されるようになり、読者数も数千人に達するようになったので、彼女にメールで「日本語に訳して私のブログに転載してもよいか」と問い合わせたところ、是非というお答えを頂いたので、今回彼女のブログ記事を二つほど訳して転載してみる。

もし読者からの反響が大きいようであれば、今後も面白い記事をみつけて転載するつもりだ。


まずは2012年2月12日の記事。

革命広場で演説するヨハネ・パウロ2世(1998年)

ローマ教皇(ベネディクト16世)がキューバにやって来るのは数週間後だが、すでに遠くから何かの香りが漂ってくる。 昼間は教会で、そして夜はアフリカの神にお祈りする人がいるキューバでは、熱狂とともに好奇心が教皇を待っている。 礼拝式の準備をする者もいれば、教皇の訪問がキューバに政治的・社会的変化をもたらすのか思案する者もいる。 多くの国民はもっと速いペースで改革が進むことを期待している。 もちろん夢のシナリオは、教皇の訪問が民衆蜂起を促し、真の改革が起こることだ。 しかし1998年のヨハネ・パウロ2世の訪問と今回の訪問には大きな違いがある。 前回は東欧の共産主義独裁政権が次々と崩壊して間もない時期の訪問だったが、今のキューバの若者はベルリンの壁崩壊後に生まれた世代で、USSRが何の略かも知らない。 1998年にヨハネ・パウロ2世が革命広場で、何度も「自由!」と叫んだ時には、神の存在を信じない私でさえも、奇跡が起こるのを信じた。 ベネディクト16世が、無関心と絶望に満ちた今のキューバ国民の心を動かすのは難しい。 今回の訪問は、前回と比べてがっかりするものになるだろう。 なぜなら教皇も代わったし、我々も変わってしまったから...



次に2012年2月20日の記事。

旧ソビエト大使館

5番街の夜明け。 外交官ナンバーを付けた車がスピードを出して走り去る。 歩道並木は切り揃えられている。 旧ソビエト大使館がハバナの胸に突き刺さった剣のように見える。 この時間はまだ涼しいが、歩道をジョギングする人の中には汗をかいている人もいる。 アディダスの靴を履いて、ヘッドフォンを頭につけ、腰には水のボトルをつけている。 キューバの特権階級はフィットネス・クラブのトレッドミルより、外の歩道を走るのが好きなようだ。 人魚の噴水のまわりに豪邸が立ち並ぶ Avenida de Las Americas という場所が彼らの溜まり場だ。 引退した軍の大佐や国営企業のトップが、天気や子供について会話する。 政府高官の娘が、幼なじみと遊ぶ。 白いあごひげの詩人が、犬と一緒に注意して通りを渡る。 ヨーロッパ・ツアーから戻ってきたばかりの女優が、ジョギングでカロリーを消費する。 陽が高くなり暑くなる午前10時には、もう誰も外にいない。 他の地域と比べて、5番街は特異な場所だ。 切り揃えられた並木、大理石が敷き詰められた銀行、塀に囲まれた豪邸のことを言っているのではない。 ジョギングしたり犬を散歩させる人々の振る舞いが特異なのだ。 フィットネスや服装に気を使い、ストレスのない快適な生活。 子供の頃、共産党の偉い人たちが資本家階級の風刺画を我々に見せ、こういう風になっちゃ駄目だよと教えてくれた、その風刺画の主人公が彼らなのだ。



ジョアニ・サンチェスは、スペインの新聞「El Pais」にも時々寄稿する。

以下は2月12日付の彼女の記事。(長いので一部を抜粋して要約した)

朝10時、首都ハバナの中心にあるプラザ・ホテルのロビー脇の、6台のコンピューターが設置された部屋の入り口には列ができている。 驚くべきことに、彼らの多くはホテルに宿泊する外国人観光客ではなく、情報に飢えた地元のキューバ人なのだ。 彼らは平均月収の三分の一を、60分間のインターネット・アクセスに費やす。 ベネズエラからキューバに引かれた光ファイバーは、2011年7月までに一般家庭に普及するはずだった。 なぜいまだにインターネットが一般家庭で使えないのかは、フィデル・カストロの健康状態と同じくらいのミステリーだ。 光ファイバーはもう既に実用化されているが、国務省などの政府関連施設のみで使用されているという噂もある。 一般市民が世界の様々な情報にアクセスできるようになるのを、キューバ政府が恐れているというのが実情なのだろう。 学校や職場のコンピューターは、ウィキペディアやフェイスブックが使えないように設定されている。 情報アクセスを拒み続ければ、キューバは学術的・専門的に遅れをとることになる。  



◆ ◆ ◆

キューバの教育レベルは高く、特に医療技術は世界でもトップ・クラスで、ベネズエラのチャベス大統領やディエゴ・マラドナなど、ラテン・アメリカの有力者は、キューバに治療を受けにくる。

こういう民度の高い国民をも貧困に追い込んでしまう共産主義とは、人間のアニマル・スピリッツを奪う魔のイデオロギーなのだろう。

キューバが市場主義を正しく取り入れれば、繁栄の可能性は高いと思う。

しかし今、キューバで市場解放を試みているのは、共産主義革命を起こした古い世代なのだ。

以下の記事を要約すると:

キューバ革命を起こした古い世代が、今度は市場開放をも指揮するつもりのようだ。 キューバ共産党は、フィデル・カストロに代わって、弟のラウル・カストロを第一書記に選んだ。 第二書記には、ホセ・マチャド・ヴェンチュラが就任した。 14年ぶりの共産党大会では、深刻な経済危機にもかかわらず、指導者達が称賛された。



日本では公務員の解雇が法的に難しいという理由で、国家公務員の新規採用を7割以上削減するという。

これは最悪の決断だ。 なぜなら国の将来を左右する改革は、将来その改革の影響を受ける世代によって敢行されてこそ成功するからだ。

民間企業でも正社員を解雇するのは難しく、高い給料をもらう中高年で溢れている。

直近の決算では、特に電機メーカーが軒並み大きな赤字を計上した。

彼らは、今までとは全く違うことをやらなければ生き残れないだろう。

しかし過去の成功体験だけが頼りの中高年社員に、発想の転換を求めても無理だ。

キューバの改革開放が、共産主義革命を起こした古い世代によって指揮されるのなら、恐らく上手くいかないだろう。


おまけ: ディエゴ・マラドナの史上最高のゴール


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イスラエルの敵はイランではなく イスラエル自身

2012年02月24日 | イスラエル・パレスチナ
世間を騒がせているイランとイスラエルの睨み合いでは、「イランは本当に核兵器を製造するのか」「イラン経済は制裁に耐えられるのか」など、イラン側に焦点が当てられがちだが、今回はイスラエルの国内問題について書いてみる。

イスラエルの政治は歴史的に、政党の合併・吸収等で政党名こそ色々と変わってきたが、右と左が交代で政権を担当してきたと言っていいだろう。

右の代表的な政治家は Menachem Begin(メナヘム・ベギン)、Yitzhak Shamir(イツハク・シャミル)、Ariel Sharon(アリエル・シャロン)、Benjamin Netanyahu(ベンヤミン・ネタニヤフ)などで、左の勢力は David Ben-Gurion(ダヴィド・ベングリオン)、Golda Meir(ゴルダ・メイア)、Shimon Peres(シモン・ペレス)、Yitzhak Rabin(イツハク・ラビン)、Tzipi Livni(ツィッピー・リヴニ)などが代表を務めてきた。

以下は2009年の総選挙の結果。(総選挙は4年ごとに行われるので次の総選挙は2013年)


最も多くの議席を獲得したのは、若干左寄りの中道政党 Kadima だったが、右派の Likud が二つの勢力との連立に成功し、政権の座についた。

Likud が連立を組んだ二つの勢力とは、ヨルダン川西岸(West Bank)ユダヤ人入植地からの撤退を断固として拒否する三つの極右政党(Yisrael Beiteinu、National Union、The Jewish Home)と、超正統派ユダヤ教(Ultra Orthodox Judaism)を代表する二つの政党(Shas、United Torah Judaism)だった。

この二つの勢力に共通するのは、どちらも支持者の人口が増えているという点だ。

ヨルダン川西岸ユダヤ人入植地からの撤退を拒否する極右政党の代表格である Yisrael Beiteinu は、主に1990年以降ロシアから移民してきたユダヤ人が支持基盤で、彼らは以前からいたユダヤ人より貧しく、女性の出生率が高い。(貧しい女性の出生率が豊かな女性のそれに比べて高いのは万国共通)

超正統派ユダヤ教(ユダヤ原理主義)の女性は、イスラム原理主義下の女性と同じくらい差別されていて、イスラム原理主義下の女性と同じく出生率が高い。

Likud は、この二つの勢力と連立を組むことによって、過半数の65議席を獲得した。

最多議席を獲得し、最初に連立を模索する権利を持っていた Kadima が、なぜこの二つの勢力のどちらとも連立を組まなかったのか?

次のセクションでは、この二つの勢力がどんな問題を抱えているのか考えてみよう。

◆ ◆ ◆

イスラエルは1967年まで、以下の左の地図の白い部分を領土として「民主主義国家である」「ユダヤ人が多数を占める」「領土を失わない」の三つをモットーに存続してきた。


ところが1967年戦争に大勝し、パレスチナ全土を手に入れると(真ん中の地図)大きなジレンマを抱えてしまう。

三つのモットーのうち、二つしか可能でなくなったのだ。

もし領土を失わず民主主義国家であり続けるのなら、非ユダヤ人(パレスチナ人)が多数を占めてしまう。

もし領土を失わずユダヤ人が多数を占め続けるには、非ユダヤ人に選挙権を与えない、つまりアパルトヘイト時代の南アフリカのような非民主主義国家になってしまう。

もし民主主義を維持しユダヤ人が多数を占め続けるには、戦争で得た領土をすべて返還しなければならない。

イスラエルが諸外国から非難を受けずに存続する唯一の選択肢は、三つ目の「戦争で得た領土をすべて返還する」なのだが、歴代の右派政権が極右票欲しさに、ユダヤ人のヨルダン川西岸入植を黙認してきた。

その結果いまでも右の地図のように、東エルサレムを含むヨルダン川西岸の約40%をイスラエルが占領し、入植地(というより全て完備した立派な街)が数多く建設され、撤退を困難にしている。

Two State Solution を主張する Kadima にとって、極右政党はとても連立を組める相手ではないのだ。

◆ ◆ ◆

ヨルダン川西岸ユダヤ人入植地からの撤退を拒否する極右勢力以上にイスラエルに深刻な問題をもたらしているのが Haredi と呼ばれる超正統派ユダヤ教(Ultra Orthodox Judaism)の信者たちだ。

Haredi 人口は、イスラエルのデモグラフィーの中で最も増加率が高いセクターで、現在約100万人いるといわれている。(イスラエルの総人口は約700万人だから、人口の約15%が Haredi で、首都エルサレムでは半分近くを占める)

Haredi の特徴をいくつか挙げると、

(1) 世俗社会と極力接しない。 インターネット・スマホ等はもちろん禁止で、kosher(ユダヤ教の掟に従う)コンピューターや携帯電話しか使わない。

携帯の画面に映っているのは kosher マーク

(2) 子供たちは独自の学校に通い、特に男子生徒は一般教養(数学・英語など)を一切身につけず、朝から晩までタルムード(ユダヤ教聖典)を勉強する。 パキスタンで若者にイスラム原理主義を教える madrasah(マドラサ)によく似ている。


(3) 兵役義務が極めて限定的である。(注:2月21日にイスラエル最高裁でこれを覆す判決が出たので、今後の動向が注目される)

(4) 女性差別が激しい。 例えばエルサレムの Haredi 居住地区を通るバスは、男性乗車口(前)と女性乗車口(後)が分かれていて、女性が前の方の席に座ろうとすると、怒鳴りつけられたり唾を吐かれたりする。 まるで1960年代までのアメリカ南部の黒人差別のようだ。





嘆きの壁も男性と女性の祈りの場が壁で仕切られている。

まあ何を信じようが、自立してやってくれるぶんには他のイスラエル人たちも文句はないんだろうが、近代文明と極力接しないだけあって Haredi には金を稼ぐ能力が欠けている。

Haredi の男性は一般教育を受けないので社会人として使い物にならず、Haaretzの記事によると、男性の7割・女性の5割が失業者として生活保護を受けている。(人口の15%の6割が生活保護って、日本に例えると約1000万人が生活保護を受けている感覚だ)

しかも Haredi の学校はすべて国の負担で運営されている。

2011年07月25日の記事で、テルアビブは第二のシリコンバレーと呼ばれ、起業が相次ぎ空前のイノベーション・ブームを迎えていると書いたが、テルアビブ(世俗的・繁栄している)とエルサレム(宗教的・貧しい)はイスラエルの両極端を象徴している。

兵役免除、学費免除、生活保護と三拍子揃った生活をしている Haredi は、当然世俗的イスラエル人に最も嫌われる存在なのだが、出生率が高いだけに票田としての価値がある。

2009年の選挙で右派の Likud は Haredi への生活保護の強化を約束したが、中道の Kadima はこれを拒否した。

イスラエルの政権交代の歴史を見ると、中道が極右と Haredi の票なしでも過半数を取れる時は中道政権が誕生し、そうでない時は右派が政権を取るというパターンが繰り返されている。

Tzipi Livniを党首とする中道の Kadima が政権を取れば、イラン攻撃の可能性など一瞬にして吹き飛んでしまうのだが、極右と Haredi の人口が増えているだけに、イスラエルの真の敵はイランではなく、イスラエル自身なのだ。


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グローバル化に成功したNBA

2012年02月16日 | アメリカ
私がアメリカに移住した1980年当時、NBA(National Basketball Association)はアメリカ三大スポーツ(野球、バスケットボール、フットボール)の中で最も人気がなく、赤字のチームが多かった。

1975年以来 NBA のコミッショナーはアイルランド系の Larry O'Brien(ラリー・オブライアン)が務めていて、彼は非常に真面目な性格で尊敬されていたが、商売っ気に欠けていた。

オブライアンは NBA の経営不振を打開すべく、1980年にユダヤ人弁護士の David Stern(デイヴィッド・スターン)を副コミッショナーに抜擢した。

David Stern は、副コミッショナー就任直後から、二つの大きな改革を試みた。

一つは、Drug Testing(薬物検査)実施。 

当時 NBA の選手の90%以上はアフリカ系アメリカ人で、薬物使用が蔓延していた。

David Stern は、この問題を解決するため、それまで選手組合からの強い反対で不可能とされていた抜き打ち薬物検査を実施し、NBA のイメージ・クリーン・アップに努めた。

もう一つは、Salary Cap(サラリー・キャップ)の導入。

サラリー・キャップとは、各チームの選手報酬の合計に上限を設け、資金力のあるチーム(ニューヨークやロサンゼルスのような大都市のチーム)ばかりが優勝するのではなく、全チームに平等なチャンスを与えるシステムで、これによってファンの興味向上を目指した。(ちなみに2011年シーズンの各チーム選手12人の年棒合計上限は約5800万ドル)

この二つの功績が認められ、1984年2月 Larry O'Brien の任期満了とともに、David Stern が第4代 NBA コミッショナーに就任した。


David Stern が NBA コミッショナーに就任すると、NBA のマネタイゼーション能力が劇的に向上していった。

その手法をいくつか挙げると、

(1) NBA のライセンシング事業を積極的に進め、ナイキ・リーボックなどの靴メーカー・アパレルメーカーから巨大な収入を得るようになった。(写真にある NBA ロゴが付くすべての商品から収入が入ってくる)

(2) マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、ラリー・バードなどのマーケティングに力を入れ、スーパースターを作り出すことで NBA の人気向上を図った。

(3) ネットワーク・テレビ(CBS、NBC、TBS等)とのタフな交渉により、巨額の放送契約を結んだ。

(4) 地方自治体に、新アリーナ建設への費用負担を求め、これを拒否する地方自治体から、フランチャイズを容赦なく奪った。(典型的な例として、NBA チームを持つのに十分過ぎるほど大きな人口を擁すシアトルが、新アリーナ建設の費用負担を拒否したため、新アリーナ建設の費用負担に同意したシアトルよりずっと人口の少ないオクラホマ・シティーにフランチャイズが移され、現在シアトルには NBA チームがない。 彼の就任以来、五つのフランチャイズが移され、28個の新アリーナが地方自治体負担によって建設された)

(5) 新たに七つのフランチャイズ(Hornets, Timberwolves, Heat, Magic, Grizzlies, Raptors and Bobcats)が誕生し、合計で30チームになった。

(6) NBA のグローバル化を積極的に進めた。

以下は David Stern がコミッショナーに就任して以来の、選手の平均年棒の推移を表すグラフだが、彼が如何に NBA を儲かる事業に変貌させたかが分かる。


NBA のグローバル化についてもう少し詳しく書くと、David Stern が NBA コミッショナーに就任した1984年当時、NBA には外国籍の選手が8人しかいなかった。

現在 NBA には、81人の外国籍選手がいる。 その内訳は、

アルゼンチン:4人
オーストラリア:1人
ブラジル:4人
カメルーン:1人
カナダ:6人
中国:1人
チェコ:1人
コンゴ:2人
ドミニカ共和国:3人
フランス:10人
グルジア:1人
ドイツ:2人
英国:2人
ギリシャ:1人
イラン:1人
イスラエル:1人
イタリア:3人
ジャマイカ:3人
ラトビア:1人
リトアニア:1人
メキシコ:2人
モンテネグロ:2人
オランダ:1人
ナイジェリア:1人
パナマ:1人
ポーランド:1人
プエルトリコ:2人
ロシア:1人
セネガル:1人
セルビア:3人
スロベニア:2人
スペイン:6人
スウェーデン:1人
スイス:1人
タンザニア:1人
トルコ:5人
ベネズエラ:1人

実に多彩な顔ぶれだ。

NBA のドラフト市場を世界に拡大したのが直接の原因だが、試合を世界の様々な地域で開催したりテレビ放映する事によって、特に新興市場(アジア・アフリカ)でのマーケティングに力を入れている。(どんなビジネスでも同じだが...)

◆ ◆ ◆

さてここからは、今シーズン注目される二人の新人について書いてみよう。

まずは Minnesota Timberwolves に加入したスペイン出身の21歳 Ricky Rubio(リッキー・ルビオ)。

身長は193cmと小柄だが、14歳でスペイン・プロリーグにデビューして以来、マジック・ジョンソンを彷彿させるパスの天才といわれてきた。

またその甘いマスクから、アメリカ人口の25%を占めるヒスパニック市場へのマーケティングに大きな役割を果たすと見られている。


次に New York Knicks に加入したロサンゼルス生まれ、パロアルト育ちの台湾系アメリカ人2世の23歳 Jeremy Lin(ジェレミー・リン:林書豪)。

彼も身長191cmと小柄だが、私がまだアメリカにいた2005年頃にはすでに、カリフォルニア高校バスケットボール界で旋風を起こしていた。

彼は北米のアジア人市場はもちろん、急成長するアジア・マーケットでバスケットボールを人気スポーツにするだろう。(2月13日のカナダ・トロントでの試合には中国系カナダ人が殺到し、チケット1枚に3000ドル(約25万円)のプレミアムがついたとカナダのラジオ局が伝えていた)



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イラン情勢 雑感 (第2回)

2012年02月10日 | 中東・アラブ
イラン情勢に関して、毎日のように様々な憶測が飛び交っているが、まず三つの記事を要約してみる。

EU によると、制裁はイランの原油その他石油製品の輸入・購入・運搬、それに関連する金融・保険業務を禁止する。 現存の契約は、7月1日までに段階的に停止されなければならない。


CBS 60 Minutes のインタビューで米国防長官 Leon Panetta は、イランが核ミサイルを製造するのに約1年、それを移動式発射車両に乗せるのにさらに1〜2年かかるというのがコンセンサスだと答えた。


米国防長官 Leon Panetta は、イスラエルが春にイランを攻撃する可能性が高いと考えている。 近い将来、イランが核兵器を造るのに十分な濃縮ウランを地下深い施設に保有するのをイスラエルは恐れている。 イスラエルの Barak 国防相が先月、アメリカとの合同軍事演習の延期を申し入れたのは、近くイスラエルが攻撃を開始するシグナルかもしれない。



◆ ◆ ◆

この三つの記事は、かなり矛盾しているように思える。

まず EU の制裁は、それによってイランを困窮させ、核開発を諦めさせるのが目的のはずだ。

そしてその制裁がフルに発動されるのは、ギリシャ・イタリア・スペインがごねたせいで、7月1日になった。

ということは、EU の制裁に効果があるのかどうかがはっきりするのは、早くてもその一ヵ月後の8月初旬になる。

ところがイスラエルは春にもイランを攻撃するという。

そんなことをしたら、せっかく制裁を決めた EU の面子を潰すことになる。

また米国防長官は、イランの核ミサイル実用化には最低2年かかると言っているのに、イスラエルが春にイランを攻撃する可能性が高いとも言っている。

最後の二つの記事からはっきりするのは、アメリカは「イランは核兵器を持つべきではない」と考えているのに対して、イスラエルは「イランは核兵器を製造する能力さえ持つべきではない」と考えていることだ。

核兵器を製造する能力を持つとは、つまり日本やドイツのレベルに達するという意味だから、イスラエルの立場は「イランが日本やドイツのようになることを許さない、それを阻止するために攻撃も辞さない」となる。

イスラエルが本当にその立場で春にイランを攻撃したら、アメリカ・EU はもちろん、中東のかなりの部分を怒らせるだろう。

トルコは Gaza Flotilla Raid(ガザ支援船強襲事件)以来、イスラエルとは犬猿の仲で、今回の EU 制裁にも強く反対した。

エジプトは直近の選挙で、想像以上にイスラム原理主義色が濃いことが判明し、遅かれ早かれ反イスラエルを明確にするだろう。

ヒズボラ政権のレバノンは、もちろん反イスラエル。(ていうかイスラエルがイランを攻撃すれば、レバノンが反撃の拠点になる)

イラクの三分の二はシーア派で、イランとの関係が深い。

シリアはアサド政権(アラウィー派:シーア派の分派)が親イランで、アサド政権が転覆すれば実権を握るであろう Muslim Brotherhood 系(スンニ派)が、やはり反イスラエル。

イスラエルのイラン攻撃を歓迎するのはサウジアラビア、そしてサウジアラビアが支援するスンニ派王政の湾岸諸国(クウェート・カタール・バーレーン・UAE等)ぐらいだ。

◆ ◆ ◆

次に EU の制裁にどの程度の効果があるのかを考えてみよう。

以下はイラン原油の輸出先を示す図だ。


EU がイランから輸入する原油は約20%で、トルコは約7%。 すなわちその他(Other)28%に、イタリアを除く EU 10%、トルコ7%が含まれる。

鍵となるのは中国とインドで、両国は値段さえ安くなれば輸入量を少なくとも倍にしようと、お互いの様子を窺っている。

イランもそこら辺は十分承知で、中国にディスカウントを迫られればインド・カードをちらつかせ(その逆もあり)、なるべく少ない割り引きで、できるだけ多くの原油を売ろうとしている。(ペルシャ商人・中国商人・インド商人の駆け引きが実に面白い)

以下の記事を要約すると: インドは原油の支払い方法についてイランと合意した。 インドはイランが開設したインドの銀行口座に、イランでのインフラ投資という名目で、支払い額の45%を入金する。 このインドの画策は、イランに対する制裁が如何に難しいかを示している。 Seyed Nehdi Babizedeh 駐印大使は、インドの銀行に口座を開設したことを認めた。


中国とインドの輸入量が倍になれば、それだけで72%になる。 それにトルコの7%を加えて79%。

また韓国や日本は、段階的に輸入量を削減するのが精一杯だろうから二国で10〜15%。

割り引きがどの程度になるか分からないが、壊滅的なダメージを与えるまでには至らなそうだ。

ロイターのこの記事 Iran economy could limp along under sanctions を読むと、制裁に耐えられそうに感じるが、この記事 Iranians bemoan sanctions hardship では、制裁がかなり効いているようにも見える。

◆ ◆ ◆

私が注目するのは、米国防長官の示唆する春(の攻撃)ではなく、8月から10月までの3ヶ月のウィンドウだ。

8月まで待てば EU の面子を潰すこともないし、もし制裁に効果がなければ、攻撃の言い訳になる。

そして11月6日にはアメリカの大統領選挙がある。

オバマ大統領は、去年の AIPAC 総会直前のネタニヤフ首相との会談で、首相の傲慢な態度に内心激怒した。

カイロ・スピーチからも分かるように、オバマ大統領は元々親イスラエルではなく、1967年ラインでの Two State Solution を唱えてきた。

再選を果たせば、もう AIPAC とイスラエルの尻にキスする必要はない。

イスラエルもこれをよく理解していて、オバマ大統領が再選を決める前(イスラエルと AIPAC に強硬な態度を取れないうち)にアクションを起こしたい。

となると万が一イスラエルがイランを攻撃するとすれば、8月から10月までの3ヶ月間が理にかなっている。(あくまでも万が一で、その確率は低い。 Haaretz の記事 Israel cannot stop Iran's nuclear program でイスラエル軍高官が指摘するように、イスラエルがイランの核開発を阻止するのは極めて難しい)


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オバマ政権 海兵隊グアム移転計画変更を発表

2012年02月04日 | アメリカ
以下の記事の要約: オバマ政権は、210億ドル(約1兆6400億円)かかるといわれるグアム米軍基地拡大計画を縮小し、代わりに4000人の米海兵隊員をオーストラリアのダーウィン、フィリピンのスービック湾、ハワイの3ヶ所にローテーション・ベースで配置する。 グアムのインフラ建設コストが高過ぎるとする上院軍事委員会の批判を受け入れる形で、計画は変更された。


まず2009年2月17日にクリントン米国務長官と中曽根弘文外相が署名した「グアム移転協定」を簡単に整理すると:

(1) 米海兵隊(兵站部隊・司令部・指揮部隊)8000人をグアムに移転する。
(2) 米海兵隊・第36海兵航空群(第1海兵航空団所属)を、普天間から沖縄の他の場所(人口が密集していない地域)に移転する。
(3) グアム移転と第36海兵航空群の新滑走路建設のため、日本政府は60.9億ドルを負担する。

ところが2009年9月に民主党が政権の座につくと、鳩ポッポは「グアム移転協定」を無視し、普天間の移転先は国外しかないと言い出して、沖縄県民の感情に火をつけてしまった。

アメリカは、いくら待っても日本政府が(2)を進展させないことに業を煮やし、他の選択肢を模索し始めた。

米上院軍事委員会の Carl Levin 上院議員、John McCain 上院議員、Jim Webb 上院議員は沖縄とグアムを視察し、2011年5月に二つの提案を行った。

一つは、辺野古沖のV字滑走路建設には費用がかかり過ぎるので、米海兵隊・第36海兵航空群は嘉手納米空軍基地の滑走路を米空軍と共用すべきである。

もう一つは、グアム島における米軍基地拡大にも費用がかかり過ぎるので、海兵隊のグアム移転を4000人に半減し、残りの4000人はローテーション・ベースで他の地域に配置する。 

米上院軍事委員会の試算では、グアム米軍基地拡大の米側の負担は当初の予算をはるかにオーバーして210億ドルに上る。(総額は230億ドルだが、日本側が20億ドルを負担する)

また辺野古沖V字滑走路建設コストは、日本側の負担(40.9億ドル)をオーバーする可能性が高く、米側にさらなる負担が生じると上院軍事委員会は警告した。

◆ ◆ ◆

米海兵隊グアム移転計画変更のもう一つの理由は、人民解放軍の中距離弾道ミサイル(東風-21:DF-21)の性能が向上していることにある。



1990年代初めに配備が確認された当時は、射程距離は1750km程度(以下の地図の赤線)といわれていたが、1990年代後半に開発された改良型のDF-21Aは、射程距離(推定2700km)と命中精度が向上し、そう遠くない将来、射程距離は3000km(以下の地図のオレンジ線)を超えるといわれている。


米軍のグアムからダーウィン・ハワイへのシフトには、このオレンジ線を相当意識したことが窺われる。

◆ ◆ ◆

今回の件で日本が最も懸念すべきは、「普天間移転が進展しようがしまいが、この計画を進める」と米側が言及したことだ。

昨今オーストラリアやフィリピン、そして他の東南アジア諸国も中国の脅威を身近に感じ、米軍誘致に積極的になる中、普天間移転で問題先送りを繰り返す日本政府、そして普天間国外移転を叫び続ける平和ボケの日本国民に愛想を尽かして、「そんなに嫌なら、グアム移転協定はなかったことにしようよ。ほかに我々に来て欲しいと言っている国はいくらでもあるから」とする米側の意思表示にほかならない。

毎年行われる米海兵隊と自衛隊西部方面普通科連隊の合同訓練を、サンディエゴからハワイに移してもっと頻繁に行おうと米側が提案するのも、自衛隊が早く独り立ちして自分らの島は自分らで守れるようになってくれよ、そうしたら我々は出て行くからと言いたいのだろう。

最後にサンディエゴでの自衛隊西部方面普通科連隊と米海兵隊の合同訓練の動画を貼り付けておく。



ずいぶん小柄で童顔だけど、大丈夫かこいつらで。 人民解放軍はごついよ。

いえ、そんなことを言ってはいけません。 日本を守って下さい、お願いします。


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2012年アメリカ大統領選挙 展望 (第1回)

2012年02月03日 | アメリカ
2012年アメリカ大統領選挙は、11月の第1火曜日投票という規定により、11月6日火曜日に一般投票が行われる。

共和党の候補者はまだ決まっていないが、どうやらミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が予備選で勝利しそうなので、オバマとロムニーの対決になりそうだ。

以下は最新世論調査の結果で、11の調査を平均すると、オバマ(47.5%)ロムニー(45.3%)で、現職のオバマ大統領が2.2ポイントリードしている。


2.2ポイントというと僅差のように感じるが、アメリカは左と右のバランスがよく取れている国で、地滑り勝利でも Popular Vote(直接票数)ではそれほどの差はつかない。

ただ大統領は Popular Vote ではなく、Electoral Vote により選出される。(もちろん有権者は大統領候補者に直接票を投じるのだが...)

Electoral Vote とは、各州で他の候補者より1票でも多くの直接票を獲得した候補者が、その州の Elector(選挙人)を全て獲得するウィナー・テイク・オール(勝者総取り)という方式だ。(各州の選挙人の数は、その州の人口を反映し、国勢調査に基づき定期的に変更される)

以下は2012年大統領選挙の各州の選挙人数を示す地図だ。



Popular Vote(直接票数)では52%対48%程度の差でも、Electoral Vote(選挙人票数)では一方が90%の票を獲得することもある。(ほとんどの州を僅差で勝利すればそうなる)

◆ ◆ ◆

The Keys to the White Houseの著者でアメリカン大学教授の Allan Lichtman 氏は、1984年の大統領選から2008年の大統領選まで7回連続で勝者を的中させてきた。

Lichtman 教授の公式によると、現職大統領の党の候補(再選の場合は同一人物)は、以下の13の条件のうちで ○ が × より多ければ勝利する。(文末のカッコは今回のオバマ大統領の場合)

(1) Party Mandate: 中間選挙で、現職大統領の党が前回(4年前)の中間選挙より、下院の議席数を伸ばした。(×)
(2) Contest: 現職大統領の党で予備選がある場合、それが大荒れしない。(○)
(3) Incumbency: 現職の大統領の党の候補者だ。(この答えは常に○のはず)
(4) Third Party: 二大政党以外の小政党から有力な候補者が出ない。(○)
(5) Short Term Economy: 選挙戦中、景気は後退していない。(△)
(6) Long Term Economy: 現職大統領在任中の一人当たりGDPの実質成長率の平均値が、その前の8年間の平均値を上回った。(×)
(7) Policy Change: 現職大統領が、何か大きな政策転換を行った。(○)
(8) Social Unrest: 現職大統領在任中、大きな社会不安はなかった。(○)
(9) Scandal: 現職大統領に大きなスキャンダルはなかった。(○)
(10) Foreign/Military Failure: 現職大統領に外交・軍事政策で失敗はなかった。(○)
(11) Foreign/Military Success: 現職大統領に外交・軍事政策で成功があった。(○)
(12) Incumbent Charisma: 現職大統領にカリスマ性がある。(△)
(13) Challenger Charisma: 対立候補にカリスマ性が欠けている。(○)

オバマ大統領の場合、○が9個、△が2個、×が2個で、Lichtman 教授はオバマ再選を予想する。

◆ ◆ ◆

もしオバマ大統領に死角があるとすれば、それは今回新しく登場した Super-Pac(巨大政治活動後援会)の存在だろう。 以下の記事を要約すると: 連邦選挙委員会に提出された書類によると、共和党予備選で先頭を走るミット・ロムニーを支持する Super-Pac は、個人や法人からの100万ドルずつの寄付で去年3000万ドルを集めた。 「候補者の選挙活動に統合しない限り、政治活動後援会は法人から無限の資金を集めて使ってもよい」という2010年の最高裁の判決以来、Super-Pac(巨大政治活動後援会)が激増した。


この2010年の最高裁の判決とは、悪名高き「Citizens United v. Federal Election Commission」のことだ。

この判決で保守派多数の最高裁は、言論の自由は法人にも適用されるとし、テレビCMを流す政治活動後援会への献金を無限に認め、巨大な資金力を持つ法人による政治支配を可能にしてしまった。

「Citizens United」は、「Bush v. Gore」「Dred Scott v. Sandford」と並ぶ、合衆国史上最悪の最高裁判決というのが私の意見だ。

ちなみにご存知の方も多いと思うが「Bush v. Gore」とは、2000年の大統領選挙フロリダ州開票で不備があり、再開票するはずだったが、最高裁がそれを差し止めた判決で、アメリカに「失われた8年」をもたらした。(再開票すれば、ブッシュではなくゴアが間違いなく大統領になっていた)

それから「Dred Scott v. Sandford」とは、黒人奴隷 Dred Scott に合衆国憲法は適用されない、つまり黒人奴隷に基本的人権はないという1857年最高裁判決で、この判決が南北戦争勃発のきっかけになった。

話しを「Citizens United」に戻すと、この判決で今回の大統領選挙には数十億ドル(数千億円)の政治資金が飛び交うと言われている。

Middle Class(中産階級)からの小口献金ではロムニーを圧倒するオバマだが、ヘッジファンド・マネジャーなど billionaire(資産数千億円の人々)からの大口献金がロムニーの Super-Pac に集まれば、状況は一変するかもしれない。(ロムニー自身、ヘッジファンドで巨万の富を築いただけあって、共和党予備選ではヘッジファンド仲間の John Paulson, Paul Singer, Julian Robertson などが、ロムニーの Super-Pac に百万ドル単位の献金を行っている)


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植民地経営は楽じゃない

2012年01月30日 | 世界
以下の記事の要約: 「チャド政府は、中国石油天然気集団(ペトロチャイナ)との石油精製契約を一時中断し、契約再交渉のための委員会を設置する」と、チャド政府高官がロイターの取材に答えた。 この石油精製所は、チャド国内向けにガソリン・その他の燃料を精製しているが、チャド政府が決める価格が安過ぎて原油コストをカバーできないと、ペトロチャイナ側は不満をもらす。 ペトロチャイナが60%を所有するこの精製所では、去年6月の開業以来、燃料価格争議が原因で、度々操業が停止されている。 ペトロチャイナによると、設立に5億8800万ユーロ(約600億円)かかったこの精製所は、チャド国営企業(SHT)に40%の所有権が与えられ、開業以来477万ドル(約3億7000万円)の赤字を出している。 中国国営企業が、チャドで空港や鉄道をはじめとする様々なインフラに何千億円も投資するなか、この争議が二国間の関係を悪化させる恐れがある。 


中国は、チャド以外にもナイジェリア・エチオピア・スーダンなどアフリカ諸国で資源開発を積極的に行っているが、上記のような争議や現地中国人が襲われる事件が多発している。

一方アメリカは、アフリカでの中国の行動に警笛を鳴らしている。 以下はヒラリー・クリントン米国務長官が去年6月アフリカを訪問した時の記事だが、要約すると: クリントン長官は、外国の投資家や政府による利己的な資源抽出を、アフリカにおける「新植民地主義」と批判した。 長官はこの発言で名指しこそしなかったが、前日にはアフリカの人々がつけ込まれないよう、中国のアフリカでの投資を精査するよう訴えている。



◆ ◆ ◆

一般的に植民地支配は、支配者側に巨大な利益をもたらすと考えられがちだが、その歴史を振り返ると、実はそうでもない。

日韓併合などはその典型的な例で、1910年当時財政破綻状態だった韓国を併合して35年間、現在の貨幣価値で数十兆円にも上るインフラ投資を行ったわけだが、それにどんなメリットがあったのか、甚だ疑わしい。

あえて言えば、日本が併合しなければロシアが併合していたので、安全保障上のリスクを取り除いたという説ぐらいだが、あまり説得力がないように思える。

大英帝国の植民地支配はどうだったのだろうか?

以下は1924年に経済学者 John Maynard Keynes(ジョン・メイナード・ケインズ)が残した言葉だが、要約すると: アフリカのど真ん中にある、数千人の白人と数十万人の黒人が暮らす南ローデシアに、我々の戦時公債と同じような条件で無担保ローンを与えるなんて馬鹿らしい。 もしカナダの Grand Trunk 鉄道の株券が紙屑になったら、我々には何も残らないが、ロンドン地下鉄の株券が紙屑になっても、ロンドンの人々には地下鉄が残る。


どうやらケインズは、重くのしかかる植民地維持コストに苛立ちを感じていたようだ。

また London School of Economics 教授で、大英帝国の植民地政策が専門の Patrick K. O'Brien 氏は著書「The Costs and Benefits of British Imperialism 1846 - 1914」で、19世紀の植民地への投資は国内産業の近代化に必要な資金を奪い、植民地への投資は国内への投資に比べてリターンが低かったと主張する。

以下のグラフは、アメリカ・英国・アフリカ・インド中国以外のアジア・インド・中国の、1820年から1950年までの年平均の一人当たりGDP成長率だが、大停滞期の中国(清朝末期〜中華民国時代)を除くと、インドの成長率の低さが目立つ。 ずいぶん投資したのに生産性は上がらなかったようだ。

 
植民地支配と聞くと、その土地の財宝を略奪し放題というイメージがあるが、インフラ投資や安全保障(被支配者の反乱から身を守る)にお金ばかりかかって、遅かれ早かれ財政がきつくなる。

アメリカは世界の警察という支配的な役割を経験して、人的・金銭的負担が大き過ぎて割に合わないことに気づき、アジアの番犬に収まることにした。

中国はこれからアフリカで、思っていたほど美味しい商売でないことに気づくだろう。(パキスタンやビルマでも、それが明白になりつつある)

帝国(強国)が勢力を広げ過ぎると、財政難に陥り衰退するというのは、昔も今もこれからも変わらない。


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米軍をむやみに追い出すもんじゃない

2012年01月27日 | 世界
以下の記事の要約: 20年前に太平洋地域で最大の基地から米軍を追い出したフィリピンは、米軍のプレゼンスを再び拡大する話し合いをオバマ政権と進めている。 選択肢として考慮されているのは、米海軍をフィリピンで活動させる、米軍部隊をローテーション・ベースでフィリピンに配置する、合同訓練をより頻繁に行うなどだ。 フィリピン政府との戦略的会談は、オバマ政権が東南アジアの国々(ベトナム・タイを含む)との軍事協力を強化する試みの一環だ。 


フィリピンには、クラーク空軍基地とスービック海軍基地という、アメリカ国外では最大の米軍基地があった。

1947年に調印された軍事基地協定により、1991年9月まで米軍の使用が認められていた。

基地の使用期限延長に関する交渉中の1991年6月、クラーク空軍基地から20kmほどのピナトゥボ山が大噴火し、空軍兵士とその家族はスービック海軍基地へ避難した。

米軍はクラーク空軍基地の使用期限延長を断念したが、スービック海軍基地に関しては10年間の使用期限延長を要請した。

しかしフィリピン議会の左派勢力が使用期限延長に強く反対し、両基地は1991年11月26日に返還された。

米海軍が撤退すると、それを待っていたかのように、フィリピン・パラワン島すぐ西の南沙諸島(スプラトリー諸島)付近で中国海軍の活動が活発化し、1995年にミスチーフ礁などフィリピン主張の島を占領して建造物を構築した。

ご承知の通り日本の左派政治家たちも、20年前にフィリピンの左派勢力が米海軍撤退を主張したように、普天間の米海兵隊・航空戦闘部隊(第36海兵航空群:第1海兵航空団所属)のグアム移転を主張している。(キャンプ・コートニーの地上戦闘部隊(第3海兵師団)の移転は要求していないので、地上部隊と航空部隊が沖縄とグアムに分かれることになり、米海兵隊がそんな要求を受け入れるわけがないのに...)

その代表格の福島瑞穂は、米海兵隊がグアムに移転しても、日本が憲法9条を堅持すれば、中国は日本の平和姿勢を評価し、絶対に攻めてくることはないと主張する。(彼女が繰り返す「憲法9条が最大の抑止力」というやつ)

私は心配性のせいか、そうは思わない。

中国は第2次世界大戦終了以降、世界で唯一、領土拡大目的で三つの地域(チベット・ウイグル・ベトナム)に侵攻した歴史を持つ国だ。(南沙諸島も入れると四つか...)

◆ ◆ ◆

軍事に詳しい人はこのセクションを飛ばしてもらうとして、沖縄の米海兵隊がどんな役割を果たしているのか考えてみよう。

以下は南西諸島の地図だが、南西諸島には数十の島があり、これらすべての島に自衛隊を配置し、敵の侵攻に備えるのは難しい。


そこで上陸・奪還作戦が専門の海兵隊を、すべての島に短時間で到達できる位置に配置し、もし敵がある島に侵攻した場合、短時間でその島に到達し、島を奪還するというのが島嶼防衛のセオリーだ。 

特に短時間で到達できるというのが重要なポイントだ。 なぜなら上陸した敵に時間を与えれば与えるほど、敵は守りを固めることができ、島を奪還しに来る海兵隊の任務を困難にするからだ。

理想的には、敵の上陸から12時間以内に到達して奪還を開始したい。(あくまでも目安だが...)

米海兵隊が駐留する沖縄本島は、垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイで尖閣諸島や日本最西端の与那国島まで2〜3時間で到達できる理想的な位置にあるので、敵の上陸から6時間以内に出撃すれば、12時間以内に到達できる。

6時間以内に出撃する訓練を繰り返す第24海兵隊遠征隊(24th MEU)

よって中国軍は、米海兵隊が沖縄本島にいる限り、南西諸島のどの島に侵攻しても、海兵隊にすぐ奪還されてしまうので、侵攻する意味がない。 これがいわゆる米海兵隊の抑止力である。

逆に言えば、もし米海兵隊がグアムに移転すれば、オスプレイで南西諸島に到達するまで最低3回の空中給油を必要とし(米海軍公式サイトのデータによると、強襲部隊員24人搭乗の場合、オスプレイの給油なしの行動半径は448km)、12時間以内には到達できないので、中国に侵攻のインセンティブを与えることになる。

◆ ◆ ◆

私は長期的には、自衛隊が日本の島嶼を自ら守るべきだと思っているし、いずれアメリカもそれを日本に要求してくるだろう。

日本にも、島嶼の防衛・奪還を任務とする西部方面普通科連隊という部隊が、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に駐留している。

ただ隊員の数は僅か650人で、毎年のようにサンディエゴの米海兵隊基地で、米海兵隊と合同訓練を行っているが、米海兵隊員と比べると体格が二周り小さいし、戦闘能力は米海兵隊員とはまったく勝負にならないレベルだ。

日本の島嶼を自ら守るには、隊員数を2000〜3000人に増やさないといけないだろうし、戦闘能力も高めないといけない。

もし米海兵隊が沖縄を去ることになれば、普天間は閉鎖して、米海兵隊・地上戦闘部隊(第3海兵師団:3rd Marine Division)や第3海兵遠征旅団(3rd MEB)が使用していたキャンプ・コートニー、或いは第31海兵隊遠征隊(31st MEU)その他が使用していたキャンプ・ハンセンに、西部方面普通科連隊が移ってくるべきだろう。(長崎県佐世保市では日本最西端まで遠すぎる)

それは将来のこととして、米海兵隊・航空戦闘部隊(第36海兵航空群:MAG-36)が、普天間からどこへ移転するのが最善なのかを考えてみよう。

以下は沖縄本島の地図だ。


移転先として主に三つの候補地が挙げられてきた。 

(1) 現行案: 辺野古沖にV字滑走路を埋め立てて造る。
(2) 嘉手納基地統合案: 米空軍嘉手納基地滑走路を空軍と米海兵隊が共用する。
(3) キャンプ・ハンセン案: 31st MEU のキャンプ・ハンセンに滑走路を造る。

現行案(辺野古案)の問題点は、巨額のお金がかかる。 自然を破壊する可能性がある。

嘉手納基地統合案の問題点は、滑走路が混雑し過ぎて管制官への負担が大きい。 騒音問題が、さらに悪化する。  

キャンプ・ハンセン案の問題点は、31st MEU がジャングル訓練に使うだけあって、森林で埋め尽くされており、起伏が激しく、森林伐採や土地の平坦化に多額の費用がかかる。

私は米空軍に友人がいたおかげで、嘉手納基地内のゴルフ場で何度かプレーさせてもらった経験があるし、嘉手納基地内の様々な場所をチェックさせてもらったことがある。

とにかく馬鹿でかくて平坦な土地がいくらでも余っているという印象を受けた。

もし現存の滑走路が混雑し過ぎるのなら、新たな滑走路を低コストで造れるだろう。 ただ既に3700mの滑走路が2本もあるのに(成田空港や関西国際空港に匹敵する)なんでそんなに混雑し過ぎると予想するのか意味不明だ。

騒音に関しては、既にF-15C戦闘機が5〜10分おきに離着陸するせいでかなり酷く、これにF-15Cよりはるかに静かなMV-22オスプレイやCH-46Eが加わっても、何の変化も感じないだろう。

多額の費用がかかる辺野古案やキャンプ・ハンセン案に比べて、嘉手納基地統合案が圧倒的に優れているというのが、私の考えだ。

嘉手納基地統合案が今まで採用されなかったのは、米空軍のわがまま(滑走路を海兵隊とシェアしたくない)というのがコンセンサスだ。

以下の記事を要約すると: 米空軍太平洋地区トップの Gary North 空軍大将は、嘉手納基地での共同通信とのインタビューで、海兵隊の普天間飛行場と空軍の嘉手納基地の統合案を切り捨てた。「嘉手納基地の現状維持が我々にとって最も都合がいい」 一方、米上院軍事委員会委員長の Carl Levin 上院議員、James Webb 上院議員(ヴァージニア州選出)、John McCain 上院議員(アリゾナ州選出)は、普天間の辺野古沖への移転は、費用がかかり過ぎると主張している。


現行案に決まる前は、民主党の岡田克也や自民党の河野太郎が、嘉手納基地統合案を主張していた。

せっかく米上院軍事委員会でも、嘉手納基地統合案を推す意見が出てきているのだから、日本政府は移転先が辺野古沖に決まったからといって、それに固執すべきではない。

日米両国の財政難を考慮すると、嘉手納基地統合案が唯一の選択肢なのは明白だ。


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マカオのカジノ特有のシステム

2012年01月23日 | 中国
(前回からの続き)

マカオのカジノには、ジャンケットという特有の機能がある。

ジャンケットとは、ひと言で言えばハイローラー(大金を賭ける客)をカジノへ連れて来る商売だ。

プライベート・ジェットで中国本土からマカオ国際空港まで同乗し、そこからリムジンでホテルまで連れて来る。(広東省南部のVIP客の場合、ヘリコプターでホテルのヘリポートへ直行するケースもある)

ホテルは客が最低○時間カジノでプレーすることを条件に、豪華スイートを無料で用意する。

ジャンケットの分け前は、客の負けた金額の半分というのが相場だ。

ラスベガスには、ジャンケットは存在しない。 各ホテルにVIP客専門部署があり、そこでプライベート・ジェットでのお迎えから豪華スイートの用意まで、すべてをアレンジする。

なぜマカオのカジノが、客の負け分の半分をジャンケットに渡してまで、彼らを使うのかというと、それは多額の資金を容易に国外へ送金できないという、中国特有の事情があるからだ。

例えば温州の資産家が、マカオのカジノでプレーしたいとする。 ジャンケットは独自のネットワークを使って、彼の金融資産を事前に調べておく。

この資産家は、手ぶらでマカオへ向かう。 カジノでは彼の希望する額のチップが用意される。(もちろん金融資産の範囲内で)

もし10億円分のチップが用意され、彼がその全てをカジノですってしまえば、ジャンケットに5億円の分け前が入る。

ただジャンケットの仕事はそれで終わりではなく、最も重要な任務は、温州に戻った客から10億円を取り立て、それを地下銀行を通じてカジノに返済することだ。

借金の取り立てというのは、普通の人間が請け負えるほど容易な仕事ではなく、日本でいう「喧嘩が商売の方々」的な人間が、マカオのジャンケット業に就く。

ラスベガスのカジノの場合、VIP客専門部署内にいわゆる怖い人がいて、借金は自ら回収し、ジャンケットに50%の分け前を与えない。

そういえばバブルの頃、日本人の柏木とかいう土地成金がラスベガスで数十億円負け、借金を返済しなかったため刺客が日本に送られ、日本刀で殺されるという事件があった。 

その頃、日本人の土地成金には、ラスベガスで数十億単位の借金を抱える者が何人もいて、柏木氏が惨殺されたのを知った彼らがビビッて数日以内に借金をすべて完済したという面白いエピソードがあった。

カジノは他の借金を回収するため、見せしめとして柏木を殺したのだ。

話しをマカオに戻すと、ジャンケットというシステムは、実は客にとっても利点がある。

中国の多くの資産家は、中国脱出を模索している。

もしマカオのカジノで勝たずとも負けを回避し、トントンで終わったとする。 温州の客は10億円分のチップを換金して、香港の銀行口座に預ける。

そして温州へ戻ると、ジャンケットに前貸ししてもらった10億円を支払う。 こうすれば当局に気づかれずに、温州から香港へ10億円送金したことになる。

彼らは、マカオのカジノでの負けをできるだけ少なくして、金融資産を中国から持ち出すのにジャンケットを利用しているのだ。

ジャンケット・システムの問題点は、これから倒産が続出するとされる温州や広東省南部の中小製造業のオーナー達が、自らの財務状況をうまくカモフラージュし、ジャンケットを利用して香港の銀行口座に入金した後、夜逃げする可能性だ。

客に夜逃げされたら、ジャンケットも商売あがったりだ。 カジノとしては、客が用意されたチップをカジノで全てすってくれれば損こそしないが、チップの一部が換金され、現金が持ち出されれば赤字になる。

現在、カジノの収入の7割はジャンケットが連れて来るハイローラーの負け分、そして3割が一般客の負け分といわれている。

中国の企業家の懐具合が悪化する中、マカオのカジノにはこの割合を、5割・5割にしようとする動きがある。

今のところ、一般客からの収入の拡大に最も成功しているのが、サンズの経営する「ザ・ベネチアン・マカオ」だ。


「ザ・ベネチアン・マカオ」は、テーマパークに巨額の投資をしただけあって、ギャンブルだけが目的ではない、一般の家族連れ客が多い。

もし中国の中小製造業に倒産が続出した場合、カジノ6社の中ではサンズに妙味があると言えるだろう。

◆ ◆ ◆

最後にカジノ6社の経営者の資質について考えてみよう。

この部門で突出しているのは二人のユダヤ人、サンズの Sheldon Adelson と ウィンの Steve Wynn だ。(Wynn の名前は元々 Weinberg だったが Wynn に改名した)

Sheldon Adelson は、コンピューター・トレード・ショー COMDEX の創始者で、1995年に当時150億円程度の価値とされていた COMDEX を、ソフトバンクの孫正義氏に1000億円で売りつけ、その金を「ザ・ベネチアン・ラスベガス」「サンズ・マカオ」「ザ・ベネチアン・マカオ」につぎ込んで、何十倍にも増やした。 現在の資産は約2兆円で、アメリカで8位、世界で16位の資産家・辣腕経営者だ。(ちなみに孫氏は COMDEX の購入で当然のことながら大損を被った)

Steve Wynn は、50年近くカジノ業に携わる世界で最も優れたカジノ経営者と言えるだろう。 彼を一躍有名にしたのは、1989年に開業した Las Vegas Mirage だ。 この豪華プロジェクトに彼は700億円近くを投入した。 これは当時のラスベガス業界では破格の金額で、しかも資金の多くは Michael Milkin が扱うジャンク・ボンド(高利債)によってファイナンスされたので、絶対に上手くいかないと言われていたが、見事に成功させ、その後 Treasure Island、Bellagio、Wynn Las Vegas、Wynn Macau、Encore と大型プロジェクトを次々と成功させていった。 

二人の狡猾な業界ベテラン・ユダヤ人が、ギャンブル熱にのぼせた中国人から金を巻き上げる。 これほど美味しいビジネス・モデルが、他に存在するのだろうか?

他では MGM の経営者はウィンからヘッドハントされた Steve Wynn の元右腕なので有能だろうし、その他3社の経営陣も決して無能ではないと思うが、経営者部門では、明らかにサンズとウィンに軍配が上がる。 

総括すると、短期(1年以内)ではサンズとギャラクシー、長期(2〜3年)ではウィンと SJM に妙味があると感じる。


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旧正月に中国からの観光客で賑わうマカオ

2012年01月22日 | 中国
以下の記事の要約: 1月23日から始まる旧正月休暇中、中国本土からの観光客は、マカオや香港でギャンブルや買い物をして収益に大きく貢献する。 中国銀行香港支店のアナリスト Edwin Fan によると「投資家は旧正月中に、マカオへの来客数が急増すると見込んでいる」 世界最大のギャンブル都市マカオのカジノ収入は、中国からの観光客のおかげで12月に25%上昇し、236億パタカ(約2400億円)に達した。 中国人のギャンブル熱が、マカオ(元ポルトガル植民地)のギャンブル収入を過去4年で3倍に吊り上げた。



◆ ◆ ◆

マカオのカジノ産業は2006年まで、以下の地図のマカオ半島に集中していた。


1990年代のマカオの地図

最初はスタンレー・ホー率いるSJM(澳門博彩)がカジノの経営権を独占し、彼はカジノ王として巨万の富を築いていた。(後に彼の子供達による醜い遺産相続争いが世間を騒がせた)

2002年にカジノ経営権の国際入札が実施されると、香港系のギャラクシー(銀河)、アメリカのウィン(永利)・サンズ(金沙)・MGM(美高梅)、オーストラリアのメルコ・クラウン(新濠)が新たに経営権を取得し、数々のホテル・カジノが建設され、マカオ半島には空き地がなくなってしまった。

没問題!(メイウェンティ) 中国人の異常なまでなギャンブル熱を熟知するマカオ行政区は、さらにいくつものカジノ・プロジェクトを認可すべく、新たに巨大な土地を用意していた。 

以下の地図のコロアネ島とタイパ島の間のピンクの部分は、もともと浅瀬の湿地帯で、この部分を埋め立てて、二つの島の頭文字をとってコタイ(Cotai Strip)と名付け、大型プロジェクトの誘致を開始した。


国際空港にも近いこの埋立地を、マカオの中心にしようと、様々なインフラ工事を急ピッチで進めている。

コタイ地区に建設されたホテル・カジノ・リゾート第1号は、2007年8月に開業したラスベガスでも有名なサンズの「ザ・ベネチアン・マカオ」


ザ・ベネチアン・マカオ

第2号は、2009年6月に開業したメルコ・クラウンの「シティー・オブ・ドリームズ」

第3号は、2011年5月に開業したギャラクシーの「ギャラクシー・マカオ」

そして最近、ウィンに土地取得の認可が下り、MGM と SJM も近々土地を取得する予定だ。

◆ ◆ ◆

相変わらず前置きが長くて申し訳ない。 そろそろ本題(カジノ6社の比較)に入るとする。

現在、マカオでカジノを経営する6社は、すべて香港市場に上場している。

 
ユーロ信用不安で急落した2011年10月4日の最安値(赤線)からの上昇率は、以下の通り。

 ギャラクシー: 93.33% (8.69 → 16.80)
 サンズ: 69.80% (14.90 → 25.30)
 メルコ・クラウン: 53.95% (4.30 → 6.62)
 MGM: 44.35% (8.05 → 11.62)
 SJM: 28.77% (10.22 → 13.16)
 ウィン: 23.72% (15.68 → 19.40)

コタイ地区で開業しているかどうかで、上昇率に大きな差が出ている。(上位3社はコタイで開業済み)

2007年にコタイ地区で最初のカジノ「ザ・ベネチアン・マカオ」が開業するまでは、少々不便でもマカオ半島まで行くしかなかったのが、今や国際空港のすぐそばに三つもカジノがあるのだから、ある意味当然の結果だろう。

下位3社のコタイ地区でのカジノ・プロジェクト開業は2014〜15年の予定なので、株価が大きく跳ねるのは2013〜2014年になるだろう。

◆ ◆ ◆

もう一点、注目すべきは、2015年初めに開通予定のマカオ軽鉄道(LRT)だ。 このプロジェクトを落札したのは、ドイツ・シーメンス、カナダ・ボンバルディアとの競争入札に勝利した三菱重工だ。

三菱重工が提案したのは、「ゆりかもめ」などに採用されるゴムタイヤ式の新交通システム「全自動無人運転車両(APM)」だ。 


この方式は、レール方式に比べて車体・路線の重さが軽量で、マカオ半島とコタイ地区を結ぶ西湾大橋の補強工事が不要というのが勝利の鍵になったようだ。(入札価格では2位だった)

以下が路線図で、この軽鉄道が完成すると、マカオ国際空港からの便が悪いとされるマカオ半島まで、20〜30分で行けるようになる。


マカオ半島でカジノ市場の圧倒的シェアを誇るのは SJM とウィンなので、この鉄道が開通すれば SJM とウィンにとって追い風となるだろう。

以下は昨年撮られたコタイ・ストリップの写真だが、椰子の木に沿って立つ緑色の長方体状の柱の上に軽鉄道の路線が引かれることになる。


(次回に続く)


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カフェで隣に座っていた美女

2012年01月20日 | ジョーク
ある男がカフェでコーヒーを飲んでいると、隣にすごい美女が座っていた。

その女は「セックス統計学」という本を熱心に読んでいた。


男が本について尋ねると、その美女は言った。

「これ、面白い本なんですよ。 この本によると、世界で一番大きいペニスを持っているのはロシア人、一番硬いペニスを持っているのは日本人なんですって。 あ、ごめんなさい、名前も名乗らずに。 私はリサ・スミス。 あなたは?」
 

すると男は誇らしげに名乗った。

「ウラジーミル・タナカです」


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Mr. Energy

2012年01月16日 | 日本
Global Energy Policy Research のホームページに田中伸男氏のコラムが掲載されていた。

田中氏の略歴は、

 1972年 東京大学経済学部卒業
 1973年 通商産業省入省
 1979年 米ケース・ウェスタン・リザーブ大学でMBAを取得
 1989年 OECDに出向
 1992年 OECD科学技術工業局長に就任(史上最年少)
 2007年 国際エネルギー機関(IEA)事務局長に就任(欧州人以外では田中氏が初)
 2011年 事務局長を退任し、日本エネルギー経済研究所特別顧問に就任

私は田中氏の講演を10年ほど前に聴き、彼の知識の深さに感銘を受け、それ以来ずっと注目してきた。

IEA時代の彼のニックネームは「ミスター・エネルギー」「世界で最もエネルギーに詳しい男」だった。

以下は田中氏のコラムの一部で、その下の動画は2010年9月にコロンビア大学の国際関係・公共政策大学院 SIPA(School of International and Public Affairs)で行われた彼の講演の模様だ。 特に47分辺りから始まる Q & A で、彼の知識の片鱗が伺えるので、是非ご覧下さい。




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イラン情勢 雑感

2012年01月15日 | 中東・アラブ
以下の記事の要約: オバマ政権は「ホルムズ海峡が封鎖されればアメリカは報復措置を取る」とイランの最高指導者ハメネイに警告した。 今週始め国際監視委員は、イランが新たな地下施設でウランの濃縮を開始したことを確認した。 アメリカとヨーロッパは、イランの石油収入を枯渇させるため制裁措置を強化している。 水曜日にイランの核物理学者が爆弾で殺されたのを受けて、イランの政府系新聞はイスラム革命防衛隊による報復があるかも知れないと警告した。


ここ数日、イラン情勢がかなり緊迫しているような報道をよく目にするが、私はイランによるホルムズ海峡封鎖はないとみている。

◆ ◆ ◆

まずアメリカが提案するイランに対する最新の制裁措置が功を奏するのか考えてみよう。

イランの石油の60%は、アジアに輸出されている。 主な輸出先は、中国・インド・日本・韓国だ。 

ガイトナー米財務長官は、これらの国々に制裁への協力を申し出たが、これまでのところ「は〜い」と二つ返事で了承したのは、某国の子ども店長ならぬ子ども財務大臣(安住とかいう)だけで、インドと韓国は協力を渋っている。(つまり引き換えに出来るだけ多くを得ようとしている) 中国は協力を拒否した。


ちなみに安住氏の同意があまりにも軽率だと感じたのか、野田首相は翌日、「これは安住財務大臣の個人的見解だ」と、お得意の結論先延ばしを表明した。

同じくイランから石油を輸入するイタリア・スペイン・ギリシャ等は、今それどころではなく、少なくとも半年間は制裁に同意しない模様だ。

そしてトルコもファイナンシャル・タイムズの記事によると、イランに対する制裁には強く反対している。

それではイランにとって、最新の制裁が痛くも痒くもないのかというと、そうでもない。

イランのアフマディネジャド大統領は、インドや韓国が原油輸入の削減に同意した場合を想定して、反米左派政権の協力を得るためラテンアメリカを訪問したが、空振りに終わったようだ。

以下は、スペインのエルパイス紙ラテンアメリカ版がアフマディネジャド大統領のラテンアメリカ訪問をカバーした記事の一部だが、要約すると「アフマディネジャド大統領は今回のラテンアメリカ訪問で、ベネズエラ・ニカラグア・エクアドル・キューバの大統領と記念撮影した。 それだけだ。 おきまりの反米レトリック以外には、チャべスもオルテガもコレアもカストロも、イランの政治的・経済的危機に手を差し伸べる具体的な提案を行わなかった」


また今回の制裁には、イランの中央銀行と取り引きのある金融機関が制裁対象に含まれており、貿易に携わるイラン商人たちが大きな打撃を受け、イランに入ってくる物の量が大幅に制限され、インフレがさらに深刻化する可能性が高い。

◆ ◆ ◆

イランが今回の制裁に耐えられるのかは分からないが、耐えることができて核開発が進むと仮定して、アメリカやイスラエルがイランの核施設を攻撃し破壊する或いは破壊できるのか考えてみよう。

まずアメリカがイランの核施設を攻撃する可能性はゼロに近い。 アメリカが数少ない核保有国の一つとして自らの特権を守るため、イランに核開発して欲しくないのは言うまでもない。

ただ同時に、もしイランが核兵器を手に入れたとしても、アメリカを攻撃することはあり得ないこともアメリカはよく理解している。(そんなことをしたら、一瞬のうちにイラン全土が火の海になる)

アメリカでイランの核開発阻止に大声をあげているのは、右派のユダヤ系アメリカ人たちで、彼らはアメリカをイランの核開発から守ろうとしているのではなく、イスラエルを守ろうとしているのだ。

せっかくイラクからの撤退が完了したばかりなのに、オバマ政権がイランを攻撃するとは考えにくい。

今アメリカが集中したいのは中国だ。(中国の「A2AD戦略」に対抗する「ASB戦略」)

軍事に詳しい人はスキップしてもらうとして「A2AD戦略」対「ASB戦略」について簡単に説明しておく。

中国の「A2AD(Anti-Access Area Denial)戦略」とは、中距離弾道ミサイル(東風-21:DF-21)で日本や韓国にある米軍基地、南シナ海に面する台湾やフィリピンの基地などを一時的に麻痺させる(Anti-Access)と同時に、西太平洋西部に位置するステルス潜水艦によって、米第七艦隊の東シナ海・南シナ海での活動を一時的に妨害する(Area Denial)戦略だ。

これに対抗するアメリカの「ASB(AirSea Battle)戦略」とは、無人攻撃機やステルス戦闘機により中距離弾道ミサイルや潜水艦を攻撃し、破壊できずに発射されたミサイルは、中距離弾道ミサイル射程圏外(西太平洋東部)の海洋上から発射される迎撃ミサイルで打ち落とす空中戦(Air Battle)と、中国に一定のダメージを与えてから第七艦隊が東シナ海・南シナ海に進出する海戦(Sea Battle)のことを指す。

次にイスラエルがイランの核施設を攻撃するかだが、現在の右派政権内には、攻撃を支持する者も少なくない。 しかし2011年06月25日の記事でも触れたように、攻撃に反対する者も多くいて、議会でコンセンサスを得るのは難しい。

最後にイスラエルがイランの核施設を攻撃できるかだが、これも非常に困難だ。

イランはこれまで、濃縮度20%の濃縮ウランの製造作業を中部ナタンツで行っていたのだが、今年に入ってテヘラン南方約150キロのフォルドにある地下核施設に移動し、製造能力も3倍に強化された。

以下はフォルドの核施設がある場所の航空写真だが、この地下核施設は厚さ約100メートルの岩山の下にある。 いくらイスラエルの攻撃力が優れているといっても、この施設を破壊するのは至難の業だ。 



◆ ◆ ◆

アメリカもイスラエルもイランの核開発を阻止できないとすると、これからどのような展開になるのか考えてみよう。(もちろんイランが制裁に耐えることができたらの話しだが...)

まずイランがインド・パキスタン・北朝鮮のように、核兵器の保有を宣言することはない。 イランはあくまでも核の平和利用(発電、がん治療のためのアイソトープ生成など)を主張し続けるだろう。

イランが表向きに目指してきたのは、3・11以前の日本だ。 それは核兵器は保有しないが、もし脅威にさらされた場合、短期間で核兵器を製造できる技術を持つことだ。

ちなみに我が国は3・11以降、国民の大半が放射能アレルギーに陥ってしまい、せっかく長年かけて築きあげてきた周辺諸国からのリスペクト(いざとなったら直ぐ核兵器を製造できる技術をもっているという)を失ってしまった。

ただいくらイランが核兵器は保有しないと宣言しても、関係諸国はそれを疑い続けるだろうし、イランは極秘で核兵器を製造するだろう。

イランが極秘で核兵器を保有した場合、影響を受けるとされるのは、以下の三つのカテゴリーの国々だ。

(1) イスラエル

(2) ペルシャ湾周辺諸国(サウジアラビア・クウェート・バーレーン・カタール・UAE等)

(3) 既に核兵器を保有している大国(アメリカ・中国・ロシア)

それぞれのカテゴリーの国々がどういう影響を受けるのか考えてみよう。

まず(1)のイスラエルについて。 イランのアフマディネジャド大統領は以前「イスラエルを地図から消す」という過激な発言をしたことがあるが、あれはイラン国内、そしてイスラム諸国での人気取りが目的で、イランがイスラエルに対して核攻撃を仕掛けることなどあり得ない。 イスラエルはイランよりはるかに多くの核兵器を保有しており、イランがイスラエルに核攻撃を仕掛けるようなことがあれば、イランこそ地図から消えてしまう。 イラン人とイスラエル人は、中東地域では飛び抜けて知性の高い民族で、それゆえに対立しているのだが、たった数十年前までは(1979年のイスラム革命以前までは)極めて良好な関係にあった。 イランが核を持とうが持つまいが、イスラエルとイランが直接戦争することはない。

次に(2)のペルシャ湾周辺諸国。 私はこれらの国々への影響が一番大きいと見ている。 以下のアラビア半島の地図を見れば分かるが、紅海に面したアラビア半島西岸にはサウジアラビアしかないのに対して、ペルシャ湾に面するアラビア半島東岸には、クウェート・バーレーン・カタール・UAEなど、小さな王国がいくつもある。 これはペルシャ湾沿岸が世界で最も石油・天然ガスが豊富な地域だからだ。 そしてこれらの国々はスンニ派の国王によって統治されているが、シーア派の住民が多く住んでいる。 シーア派のイランがこれらの国々を直接攻撃する事はないが、シーア派住民による反乱を手助けする可能性は高い。(実際アラブの春で手助けしている) イランの野望は、ペルシャ湾周辺諸国に影響力を持つことだ。 イランが核兵器を保有した場合、スンニ派の王政にさらなる圧力がかかるので、彼らも核兵器を持ちたがるだろう。 ただアメリカは恐らくそれを許さず、核の傘に収まるよう説得するだろう。

最後に(3)に関して。 アメリカ・中国・ロシアは核兵器を保有する大国として、当然インド・パキスタン・北朝鮮に核兵器の保有を許してしまった失敗を繰り返したくはない。 しかしイランが核兵器を保有したとしても、自分らに攻撃してくることがないことも理解している。 今年大統領選をむかえるアメリカや指導者が代わる中国は、事態がヒートアップして原油価格が急上昇するのだけは避けたい。 イラン国内には優秀な核物理学者が多数いるので、イランの核開発を防ぐのは困難だ。 表向きには認めないが、ペルシャ湾周辺諸国に核が拡散しないことに、より集中するだろう。 

上記の2011年06月25日の記事でイスラエルの諜報機関モサドの前長官Meir Daganが指摘する「イスラエルは、イランの核開発の野望をを遅らせることはできても、止めさせることはできない」が実に的を得ていると思う。


P.S. 台湾総統選は残念ながら馬英九氏が再選を果たした。 "It's the economy, stupid." 尖閣問題等で日台関係が悪化する可能性が出てきた。


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