江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場の作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」二編を収録。
出版社:角川書店(角川文庫)
本書には、金田一耕介初登場作の『本陣殺人事件』を含め、三作が収録されている。
どの作品も、おどろおどろしいガジェットが目を引く作品で、読んでいてもおもしろかった。
横溝作品特有のある種の暗さは、金田一初登場のころから一貫していることを知れて興味深かった。
たとえば『本陣殺人事件』。
舞台となる、旧家然とした本陣の家の雰囲気。殺人現場のおぞましい道具立て。謎が謎を呼ぶ奇怪な事件現場、などなど。
どれも不気味な雰囲気が出ており、興味深い。
これぞまさに横溝正史風味と個人的には思う。
その事件を解決に至る金田一耕介の推理も、論理展開もなかなかおもしろい。
真相自体は、すでに存在している作品のアイデアに近いものはある。
しかしそれを踏まえた上で、日本風にアレンジしているところは見事。
雰囲気だけでなく、ミステリとしても充分にすばらしい作品と思う次第である。
併録の『車井戸はなぜ軋る』もおもしろい。
少し怪談っぽい雰囲気がまず目を引く。
こういうどろどろした旧家の感情のもつれこそ、横溝正史の真骨頂かもしれない。
だがもっともすばらしいのは殺人現場の謎である。
ミステリ的にはよくアイデアかもしれないが、ああ、そっち、と読んでいて思っただけにどきりとさせられた。
『黒猫亭事件』は「顔のない屍体」を扱った作品である。
既存のネタを使い、上手く凝った見せ方をしているあたりはさすがだ。
先行作品をいかにして越えていくかという、著者なりの意欲が伝わる。
雰囲気作りやストーリーもおもしろい。
幾分計画に手が込み過ぎているように見えるのだが、それを含めて作者の苦心の跡が見えるようだった。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
ATG映画「本陣殺人事件」をご覧になった事はありますか?予算不足の為に現代劇にしてあります。また、中尾彬が演じる金田一耕助が意外に合ってるのが驚きです。
qwrr0987さんのHNの意味。
たった今、わかりました・・・(ニヤリ)。
原因はまさに旧家然としてますね。これぞ横溝って感じがします。
映画の方は未見です。現代劇ってのは、予算とは言え、ちょっと斬新ですね。どんな感じなのか、興味があります。ありがとうございました。
ところでHNの意味がわかった、ってどういうことです?
キーボードの並び順に適当に押した、が正解なんですけど、ひょっとして、違う解釈ってあります。そっちも興味があります!