ピントが外れている文章こそ正解!問題を読まないでも答はわかる!?国語が苦手な受験生に家庭教師が伝授する解答術は意表を突く秘技。国語教育と受験技術に対する鋭い諷刺を優しい心で包み、知的な爆笑を引き起こすアイデアにあふれたとてつもない小説集。吉川英治文学新人賞受賞作。
出版社:講談社(講談社文庫)
ユーモア小説を多く手がける作家なだけに、本作もなかなか楽しい作品が多かった。
それでいて、小説の技巧的に冴えている部分が多く見られ、質の高い作品集だな、とえらそうに思ったりする。
表題作の『国語入試問題必勝法』が、またおもしろい。
国語の問題に対する、皮肉たっぷりな見方がすばらしかった。
だが本作において、本当にすばらしかったのは、ラストの要約のところにあるだろう。
確かにこの解答は、超がつくほどの正論なのだけど、そのまとめ方のアホらしさに声を出して笑ってしまう。
ユーモア小説以外では、『靄の中の終章』がいい。
内容としてはボケ老人の思考の動きを追っているのだけど、ご飯を食べたことを忘れ、嫁の顔を忘れ、徐々に死んだ妻のことを嫁に重ね合わせる様が、実に丁寧に描いていて、すばらしい。
その思考の混乱っぷりと、変なところでプライドが入り混じる点、ときどき頭の冴えに波があるところなどは、リアリティがあって、変な迫力がある。
小説の上手さをぞんぶんに堪能できる作品と思う次第だ。
そのほかにもおもしろい作品は多い。
元ネタは知らないけれど、妄想に近い論理の強引さがユーモラスな、『猿蟹合戦とは何か』。
なかなか皮肉が利いていて、むちゃくちゃな部分もあり、それが小説っぽくなくておもしろかった、『人間の風景』、など。
作品の質に波はあるが、いい作品は本当にすばらしく、笑えたり、考え込んだりしてしまう。
清水義範の上手さを味わえる作品集であった。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
そのほかの清水義範作品感想
『永遠のジャック&ベティ』
『蕎麦ときしめん』
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