2006年度作品。イタリア映画。
若い哲学教授が、時代に絶望し、過去を捨て、光あふれるポー川をさかのぼり、岸辺の廃屋に住み始める。そして彼をその風貌から「キリストさん」と呼ぶ、素朴な村人との交流をとおして、生の息吹を蘇らせ、真実を見出してゆく――。
監督はエルマンノ・オルミ。
出演はラズ・デガン、ルーナ・ベンダンディ ら。
この映画は冒頭がすばらしい。
本が釘で床に打ちつけられるという事件から物語が始まるのだが、それが奇妙な犯罪であるだけに、展開はなかなかミステリアスだ。
おかげで物語にすっと入り込むことができ、興味を終始惹きつけられる。
結局、犯人は主人公の大学教授であることがすんなり判明するのだけど、動機がさっぱりわからないため、適度な緊張感があるのも優れた演出だ。
これは単純に構成の上手さだろう。
その大学教授は世捨て人のように、川のほとりの廃屋で暮らすことになる。
近隣の住民から、主人公は「キリストさん」と呼ばれることになるが、実際彼はそこで頼られる存在になっていく。
その交流の過程は心に響くというほどのものはない。だけど穏やかに展開しているためか、いい味が出ている。
結構悪くない映画だな、と思いながらじっくりと楽しむことができた。
と、途中までは良かったのだが、個人的には、ラストの展開がいささか不満である。
主人公が犯罪を犯した動機は、物語としては意味があるけれど、少し弱いし、終わり方も、あれがベターなのはわかるとは言え、もう少し何かあっても良かったんじゃないのって思ってしまう。
一言で言えば物足りない。
そのため後味はいまひとつなのだけど、途中までは優れているし、トータルで見ればいい映画であるということは事実である。
地味ではあるが、つくり手の感性が良い感じに出ている作品と言ったところだ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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