私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「長州ファイブ」

2007-02-11 18:20:46 | 映画(た行)


2006年度作品。日本映画。
攘夷と開国に揺れる幕末の日本。そんな中、命がけでロンドンに渡ろうと決意した五人の長州藩士がいた。彼らはそこで西洋文明を学び、「生きたる機械」となって日本に帰国することを誓い、英国行の船へと乗り込んでいく。
監督は「地雷を踏んだらサヨウナラ」の五十嵐匠。
出演は「青い春」の松田龍平、山下徹大 ら。


高校時代、司馬作品を愛読してきた者としては、こういうテーマはドツボである。当然のごとく、見に行った。

この渡航した五人では、どうしても伊藤俊輔と井上聞多に注目してしまう。僕に限らず大抵の人はそうだろう。実際、映画の中でも日本を離れるまでは、渡航のため積極的に行動する聞多の方に視点が注がれているように思う。
しかし丁寧に描いているのは明らかに知名度が低く地味な山尾庸三の方である。その作り手の姿勢に、個人的に好感を抱いた。
歴史は偉い人間がつくるが、それを支える大多数は地味な人間なのだ。忘れられている人間にだってドラマはある。そんなことを思わせられる。

登場する五人に共通するのは国を憂う思いだ。その彼らの思いは純粋で、ひたすらまっすぐである。
たとえば山尾の場合だと、国の工業化には人材を育てていくことが大事だと真剣に考え、彼なりにどうすべきかを考えている。山尾という人物は画面を通じて見る限り、寡黙で若干不器用そうな男だ。だからこそ、彼の行動と思いには、真剣で切実なものが感じられて、見ているこちらの胸を打つものがある。
そのほかにも伊藤がロンドンの街の貧困を見つめる視線に、将来政治家になる人間の予兆が感じられて、胸に響くものがある。

僕ははっきり言って、憂国なんて感情を持ってはいない。
しかし、それでも彼らのなにかを思い、それを成し遂げたいと願う、青臭い感慨は、印象深い。どんな形であれ、それは普遍的なものであるし、その真剣さゆえに、見ている側の心に直接訴えかけてくるものがあった。

本作ははっきり言って地味な作品だ。だが、まっすぐすぎるくらいまっすぐな人の思いを丁寧に描いた力作だと思う。必見の映画だろう。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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