私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「英国王のスピーチ」

2011-02-28 20:17:00 | 映画(あ行)

2010年度作品。イギリス=オーストラリア映画。
1936年の英国。国王ジョージ5世の後継として長男のエドワード8世が即位するが、離婚歴のある米国女性と結婚するために1年もしないうちに王座を捨ててしまう。ジョージ6世として王位に就くことになった弟のヨーク公は内気な性格に加え幼い頃から吃音症に悩み、公務でのスピーチは常に苦痛の種だった。そんな夫を優しく励ます妻のエリザベスは、オーストラリア人のスピーチ矯正専門家ローグを見つけ出すのだった。(英国王のスピーチ - goo 映画より)
監督はトム・フーパー。
出演はコリン・ファース、ジェフリー・ラッシュら。




僕は自分のことを対人能力の低い人間だと思っている。
少なくとも、初対面の人と話すときは緊張するし、ある程度知っている人間相手でも、心のどこかで精神的に身構えてしまう。たとえ相手が打ち解けて話しかけてきても、僕はたいてい打ち解けることができない。
仕事の関係で電話をかけるときなんか、必ず一回以上は噛んだりもする。

そういう人なんで、本作の主人公のアルバートこと、ジョージ六世の気持ちはよくわかるのだ。
もっともさすがに、僕は吃音まではいかないけれど。


アルバートは幼少期の心因的ストレスもあって、吃音癖をもっている。王族という立場上、スピーチは必須なのだが、彼はその役割をこなせない。
その上、望んでもいないのに、国王に就任しなければならず、ますますスピーチの要求は高まっていく。

そういうのを見ていると、アルバートも大変だよな、と思ってしまう。
特に、彼のように自分にあまり自信の持てない人間にとって、感じる重圧は相当なものだ。
国王は、アルバートには向かない職業である。しかし向かないからと言って、辞めるわけにもいかない。本当に大変だ。


そんなアルバートを妻と、言語療法士のライオネルは支えようとする。
夫を影ながら支えるヘレナ・ボナム=カーター演じる妻からは、夫に対する愛情が感じられ、見ていて微笑ましい気分にもなる。

そして、ライオネルとの友情にも、温かいものを感じる。

ライオネルはざっくばらんな感じの人で、アルバートを王族の人間だからと、特別扱いはしない。
そのため、王族としての権威を保とうと、ときには癇癪も起こすアルバートとは、激しくぶつかることもある。
しかしそういう風に腹を割ってぶつかるからこそ、アルバートとライオネルには、真の友情を築くことができたのだろう。その過程がなかなかいい。


そんな二人の言語療法の集大成とも言える、ラストのスピーチの場面は実にすばらしかった。

アルバートのスピーチは成功するのだろう。そう思いながら僕は見てはいたのだけど、それでもひょっとしたら失敗してしまうんじゃないか、と気を揉み、シーンの間は、ずっとハラハラし通しだった。
それだけに、上手くスピーチを乗り切ったときには、ほっとし、同時に深く感動もした。

派手さはない作品と思うのだけど、そういうシーンや人物の描き方などが、胸に響く。
今日、本作はアカデミー賞を取ったわけで、それにふさわしい、なかなかの佳品、と思った次第だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)



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・ジェフリー・ラッシュ出演作
 「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」
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