私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「言えない秘密」

2008-10-17 20:51:08 | 映画(あ行)

2007年度作品。台湾映画。
天才的なピアノ・テクニックを持つ転校生シャンルンは、耳にしたことのない曲を音楽室で弾いていたシャオユーと出会い、たちまち恋に落ちた。学校を休みがちなシャオユーを心配しながら、シャンルンは少しでも多く彼女と一緒の時間を過ごしたいと願う。しかし、シャオユーにはシャンルンにどうしても言えない秘密があった…。
監督はこれが初監督となる台湾のアーティスト、ジェイ・チョウ
出演はジェイ・チョウ。グイ・ルンメイ ら。


この映画は前後半で二つのパートに分かれている、と見た。

前半は、コッテコテかつベッタベタな展開がきわめて目立つ恋愛パートだ。
主人公はある少女に恋をするが、それは、いやいやそれは物語の中でしかありえませんよ、と言いたくなるような、いわゆるお約束の展開で進んでいくお話だ。あまりにストレートすぎる展開で、見ているこちらが気恥ずかしくなるくらいである。
しかもそこに出てくる女性キャラが古いことなんの。いかにもかわいらしげに媚びるように振る舞い、ちょっとすねたりする女の子の姿は日本で言えば昭和を髣髴させる。
もちろんその古さには意味があるのだが(まさか、天然じゃあないでしょ)、この手の女が嫌いな僕としては見ていてイラッとする部分もないわけではない。

何かけなしているようにしか聞こえないだろうが、それでもこの恋愛パートはつまらないわけではない。
その理由の一つは張られた伏線について、想像しているのが楽しかったからであり、もう一つは、ピアノ演奏のシーンが圧巻だったからだ。特にピアノ対決は鮮やかで、音楽も美しく見ていても心地よい。そこはさすが、監督がミュージシャンだけのことはあるだろう。

そして物語は後半になり、ファンタジーパートへと突入する。
その展開は丁寧に伏線が張られているので、容易に先が読める(一応誉めている)。
しかし正直言うと、その展開に持っていくのだけはやめてほしかった。前半の基調がリアリズムだったので、いくら伏線を張っているとはいえ、その展開に持っていかれると引いてしまう部分もないわけではない。
だがジェイ・チョウの演出もあってか、それも徐々に気にならなくなっていく。
特に主人公が真相に気付くシーンのサスペンスフルな演出は、音楽の使い方もあってか、情感に訴えるものになっている。ここら辺はセンスがあるのではないだろうか。

ラストの写真は百パーセント、後の世に矛盾を起こすことは請け合いだろう。それに知的障害者の人の扱いも説明不足だ。だがそれらを細かくつっこむのも野暮というもの。
映画自体はまとまりもよく、それなりに楽しめるつくりになっている。ヒマなときに見るには申し分ないだろう。

評価:★★★(満点は★★★★★)

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