手術が成功して目が見えるようになった盲目の少女。しかし彼女は自殺をしてしまう。盲目の少女と牧師一家の相克と葛藤を描いた作品。
本作は昼のテレビドラマ「緋の十字架」の原作にもなった。
フランスのノーベル賞作家ジッドの中篇。
本作は古典的な悲恋ロマンである。
死んだ唖の老婆のもとで見つけた盲目の少女ジェルトルート、牧師は彼女を教え導くつもりで引き取るが、彼はやがて男として彼女に惹かれていく。妻はそんな夫の変化に気付いているが、牧師自体は自分自身の感情に気付こうとしない。
筋を細かく書くと、こうなる。ベタという点で昼ドラ的ともいえるだろう。昼ドラの方は見ていないけれど。
一応、本作は恋愛物と言えるが、同時に父と子の確執の話としても読むことができる。
僕自身はカトリックとプロテスタントの対立についてうまく理解できないし、牧師とジャックが交わした聖書の文言を用いたやり取りも完全に理解できたわけではない。
そういうわけで、幾分わからないものはあるけれど、父親と息子が精神的なレベルでは分かり合えていないことが伝わってくる。
ジャックがジェルトルートに改宗を勧めたのは、昔その女を愛していたこともあるだろうし、建前上、自身の司祭としての使命感もあっただろう。しかしそれ以上に父親に対するあてつけもあったのではないだろうか、と思えてくる。
それが救いを求めるジェルトルートの心を傷つける行為になっていなかっただろうか、という気もしないではない。
それにプラスしての、アメリーの苦悩に牧師の行動。そういった諸々の事に絶望と憤りと苦悩をジェルトルートは感じたのではないだろうか。そしてジェルトルートはカトリックによって禁じられている自殺に(ある意味、ジャックへのあてつけみたいな思いもこめて)踏み切ったのではないだろうか。
僕はそのように読み取った。もちろん誤読に決まっているのだけど。
それはそれとして4人が共に盲人であったというこの本のテーマはなかなかに良いと思う。ありきたりな感じではあるが、優れた小品と感じた。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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