自転車の重量が走行状態に及ぼす影響について
自転車を持運んだり、持上げたりする動作では当然軽い方が良い。
しかし「自転車が1kg軽くなっても、体重が1kg重くなれば、走行状態は実質的に変わらないのではないか」と言う単純な疑問が生じる。
検討の結果は下記のようになった。
1.終末速度(下記)より低い速度(85%程度)で走行するとき、車体重量が1kg軽く なったとしても、体重が1kg増えれば走行状態は殆ど改善されない。軽量自転車 を購入するよりも、体重を絞った方が良いと云う至極一般的な結論になった
2.ある人体動力に対して到達し得る速度(加速度ゼロの状態 以下終末速度と云 う)に近いところで走行するとき、車載重量が同一の場合、軽量自転車の方が有 利である。終末速度近辺で加減速を繰り返す走行をする場合、車体重量の影響が 大きい
3.リム、タイヤなどの回転体の慣性二次モーメントが加速度抵抗に与える影響 は、車体全重量に、回転体の重量を加えたものにほぼ等しくなる。従ってこの部 分の重量は極力軽いほうが良い
4.軽い走行を得るために軽い車体(10kg ±2kg程度)を選ぶことは余り意味がな いかも知れない
むしろ軽い走行を得るためには、転がり抵抗係数の低いタイヤ用いること
その上、風圧面積を減少する前傾姿勢が得られるハンドルを用いること
の方が重要である
検討の詳細は以下の通り
以下の検討に用いたデータの一部は「鳥山新一著 サイクリング事典」から引用した。
走行抵抗には内部摩擦抵抗、転がり抵抗、空気抵抗、加速抵抗、登坂抵抗があるが、検討では平地走行のみを対象とし、また内部摩擦抵抗は他の抵抗に比べ微小であるので省いた
走行抵抗=転がり抵抗+空気抵抗+加速抵抗 となる。
走行抵抗 R (kg)
転がり抵抗 Rr=fr×W (kg)
fr:転がり抵抗係数 タイヤの構造、材料、路面状態で大幅に変わ
り、その値はアスファルトの道路で0.005~0.008である
26×11/8w/oタイヤでアスファルト道路の場合0.007程度である
W:車載荷重+車体荷重 (kg)
空気抵抗 Rf=fa×A×V^2 (kg)
fa:抵抗係数 0.056 ドロップハンドルの下を持つと10%小さくなる(注.訂正あり 最後尾)
A:受圧面積 体格により違い 0.3~0.38 (m2)
V:走行速度 (m/s)
加速抵抗 Ra=(W+Wt)/g×α (kg)
Wt:回転部分相当重量 タイヤ、リムなどの回転部分の慣性モーメン トによるもので、700×25Cに対するもので 2.35kgとした
α:加速度 (m/s2)
g:重力の加速度 (m/s2)
人の動力 Mp:0.2hp (15.2kgm/s) とする
これらを整理すると下式になる
Mp=(Rr+Rf+Ra)×V ①
Mp=(fr×W+fa×A×V^2)×V ② Ra=0 のとき
加速出来なくなった時の最終到達速度(V0)を②式から計算する。
人体重量を含めた車載重量を60kgとし、車体重量を変化させた時の最終到達速度(V0)
自転車重量 8 9 10 12 15 kg
V0 30.45 30.40 30.36 30.27 30.14 km/hr
このように8~15kgの車体重量については殆ど差が無い。
終末速度(最終到達速度)に至るまでの状態を検討するには加速抵抗を考慮する必要がある。
Mp=(fr×W+fa×A×V2+(W+Wt)/g×α)×V
Mp=(fr×W+fa×A×V2+(W+Wt)/g×dV/dt)×V ③
③式の微分方程式を解いた結果を下記に示す。
下表は初速0から25km/hrに到達するまでの所要時間を示したものであるが、車体重量10kg±2kgの範囲では車体重量10kgを中心として1sec程度である。
車体重量(kg) 8 9 10 12 15
所要時間(s) 18.8 19.2 19.6 20.4 21.7
回転部分相当重量Wtは車体重量に比例するとした。
下表は車体重量8kgと15kgの2車種について走行速度V(m/s)と、それに至る経過時間t(s)を示したものである。
走行速度が大きくなると、所要動力が大きくなるので人が発生する動力との差が小さくなる。従って、加速度も徐々に減少し、速度の増加に多くの時間を要する。
速度 1 2 3 4 5 6 7 8 m/s
車体重量 8kg 0.3 1.1 2.4 4.5 7.4 11.7 18.8 36.5 sec
15kg 0.3 1.2 2.8 5.1 8.4 13.4 21.7 44.7 sec
終末速度の8.4m/s(30km/s)に近づくにつれて所要時間の差が大きくなっている。
ここでは計算結果を記していないが、20km/hrの走行速度では転がり抵抗と風圧抵抗はほぼ同等である。このことから、風圧抵抗と加速度抵抗を減少することは難しいが、転がり抵抗の少ないタイヤを使用することは有効である。
注)ドロップハンドルの下を持つと空気抵抗係数faが10%小さくなると記述しているのは間違いで、姿勢によっては抵抗係数は変わりません。ドロップハンドルの下を持つと受圧面積Aが10%小さくなります)
以上
自転車を持運んだり、持上げたりする動作では当然軽い方が良い。
しかし「自転車が1kg軽くなっても、体重が1kg重くなれば、走行状態は実質的に変わらないのではないか」と言う単純な疑問が生じる。
検討の結果は下記のようになった。
1.終末速度(下記)より低い速度(85%程度)で走行するとき、車体重量が1kg軽く なったとしても、体重が1kg増えれば走行状態は殆ど改善されない。軽量自転車 を購入するよりも、体重を絞った方が良いと云う至極一般的な結論になった
2.ある人体動力に対して到達し得る速度(加速度ゼロの状態 以下終末速度と云 う)に近いところで走行するとき、車載重量が同一の場合、軽量自転車の方が有 利である。終末速度近辺で加減速を繰り返す走行をする場合、車体重量の影響が 大きい
3.リム、タイヤなどの回転体の慣性二次モーメントが加速度抵抗に与える影響 は、車体全重量に、回転体の重量を加えたものにほぼ等しくなる。従ってこの部 分の重量は極力軽いほうが良い
4.軽い走行を得るために軽い車体(10kg ±2kg程度)を選ぶことは余り意味がな いかも知れない
むしろ軽い走行を得るためには、転がり抵抗係数の低いタイヤ用いること
その上、風圧面積を減少する前傾姿勢が得られるハンドルを用いること
の方が重要である
検討の詳細は以下の通り
以下の検討に用いたデータの一部は「鳥山新一著 サイクリング事典」から引用した。
走行抵抗には内部摩擦抵抗、転がり抵抗、空気抵抗、加速抵抗、登坂抵抗があるが、検討では平地走行のみを対象とし、また内部摩擦抵抗は他の抵抗に比べ微小であるので省いた
走行抵抗=転がり抵抗+空気抵抗+加速抵抗 となる。
走行抵抗 R (kg)
転がり抵抗 Rr=fr×W (kg)
fr:転がり抵抗係数 タイヤの構造、材料、路面状態で大幅に変わ
り、その値はアスファルトの道路で0.005~0.008である
26×11/8w/oタイヤでアスファルト道路の場合0.007程度である
W:車載荷重+車体荷重 (kg)
空気抵抗 Rf=fa×A×V^2 (kg)
fa:抵抗係数 0.056 ドロップハンドルの下を持つと10%小さくなる(注.訂正あり 最後尾)
A:受圧面積 体格により違い 0.3~0.38 (m2)
V:走行速度 (m/s)
加速抵抗 Ra=(W+Wt)/g×α (kg)
Wt:回転部分相当重量 タイヤ、リムなどの回転部分の慣性モーメン トによるもので、700×25Cに対するもので 2.35kgとした
α:加速度 (m/s2)
g:重力の加速度 (m/s2)
人の動力 Mp:0.2hp (15.2kgm/s) とする
これらを整理すると下式になる
Mp=(Rr+Rf+Ra)×V ①
Mp=(fr×W+fa×A×V^2)×V ② Ra=0 のとき
加速出来なくなった時の最終到達速度(V0)を②式から計算する。
人体重量を含めた車載重量を60kgとし、車体重量を変化させた時の最終到達速度(V0)
自転車重量 8 9 10 12 15 kg
V0 30.45 30.40 30.36 30.27 30.14 km/hr
このように8~15kgの車体重量については殆ど差が無い。
終末速度(最終到達速度)に至るまでの状態を検討するには加速抵抗を考慮する必要がある。
Mp=(fr×W+fa×A×V2+(W+Wt)/g×α)×V
Mp=(fr×W+fa×A×V2+(W+Wt)/g×dV/dt)×V ③
③式の微分方程式を解いた結果を下記に示す。
下表は初速0から25km/hrに到達するまでの所要時間を示したものであるが、車体重量10kg±2kgの範囲では車体重量10kgを中心として1sec程度である。
車体重量(kg) 8 9 10 12 15
所要時間(s) 18.8 19.2 19.6 20.4 21.7
回転部分相当重量Wtは車体重量に比例するとした。
下表は車体重量8kgと15kgの2車種について走行速度V(m/s)と、それに至る経過時間t(s)を示したものである。
走行速度が大きくなると、所要動力が大きくなるので人が発生する動力との差が小さくなる。従って、加速度も徐々に減少し、速度の増加に多くの時間を要する。
速度 1 2 3 4 5 6 7 8 m/s
車体重量 8kg 0.3 1.1 2.4 4.5 7.4 11.7 18.8 36.5 sec
15kg 0.3 1.2 2.8 5.1 8.4 13.4 21.7 44.7 sec
終末速度の8.4m/s(30km/s)に近づくにつれて所要時間の差が大きくなっている。
ここでは計算結果を記していないが、20km/hrの走行速度では転がり抵抗と風圧抵抗はほぼ同等である。このことから、風圧抵抗と加速度抵抗を減少することは難しいが、転がり抵抗の少ないタイヤを使用することは有効である。
注)ドロップハンドルの下を持つと空気抵抗係数faが10%小さくなると記述しているのは間違いで、姿勢によっては抵抗係数は変わりません。ドロップハンドルの下を持つと受圧面積Aが10%小さくなります)
以上
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