SPIDERS IN LOVIN' COOL

ケロロ軍曹(主にクルドロ)や、名探偵コナン(主に平和)の小説。
毎週土曜日は「今週のクルドロ萌え」を予定。

19.もしも明日が(ケロロ軍曹【クルル×ドロロ+その他大勢】)

2008-02-19 18:15:42 | クルドロ50のお題
ケロン星に、帰らなくてはならない。
しかも今日中にだなんて…。
本部からの指示は絶対だ。
隊長たちが、どれ程本部を恐れているのか、俺にもよく判る。

「クルルくん…」
「あんだ?」
「今日中にペコポンを出なくちゃいけないんだって…」
「あぁ…」
「クルルくんは、ペコポンを離れるのが寂しくないの?」
「別に…」
「僕は寂しいよ、すごく。
小雪殿たちに、もう逢えなくなるなんて…」
「お前さぁ…」

こんな時まで東谷小雪のことを出すな。と言いたくなったが、止めた。
こいつにとっては、東谷小雪は命の恩人で、
ペコポンに来てからずっと一緒に暮らしてたんだ、無理もない。
俺だって、一緒に住んではいなかったものの、
サブローに逢えなくなるのは…。
特別干渉するような仲ではないが、
俺が明日突然いなくなったら、サブローはどう思うんだろう?

「言うのか?“さよなら”って…」
「い…言えるわけ、ないじゃない」
「そうだよな…」

さよならなんて言ったって、無駄なんだ。
だって、明日には俺たちと関わった記憶が、
すべて消去されているんだから…。
だから、もしも明日俺がいなくなったって、
サブローは俺たちがペコポンに来る前の生活に戻るだけ。
それが、日常なんだ、今が非日常なだけ。

「やっぱり…ちゃんと言おうかな?
“さよなら”って…」
「言ってどうすんだよ?
どうせ明日には忘れられてるんだぜ?
出逢ったことも、さよならしたことも…」
「でも…すぐ忘れられるんだとしても、気持ちは伝えたいよ。
“ありがとう”って。」
「それは自己満でしかないぜ。
あんたの“ありがとう、さよなら”で、
東谷小雪は苦しむんだ。
すぐ忘れるもんでも、一瞬だけでも苦しむ。
あんたには、どんな理由があったとしても、
一瞬でも、東谷小雪を苦しめるなんてこと、
絶対に出来ないはずだ。」

ドロロは黙って答えない。
鼻をすする音がする。

「…泣くな…っての」
「帰りたくない…ケロン星になんて、帰りたくないよ…」

こんな時にさえ、俺はドロロの素直さが羨ましくなる。
俺だって、本当は帰りたくないさ。

「しょうがねぇだろ、本部の命令は絶対だ。
あんたも軍人なら、よく判ってるはずだ」
「………うぅ…」
「とりあえず、お前は水車小屋に戻れ。
あとはあんた次第だからよぉ」

そうは言ったが、ドロロはきっと、
東谷小雪には言わないだろう。

------------------------------

ドロロには自己満だなんて言っちまったが、
俺だってさよならぐらい言いたい。
せめてメールで…

「サブロー、さよならだぜ」

何やってんだ、俺は…
こんなことして、何になるってんだ。
打ったメールを慌てて消した。

「俺はあんたより天才(@皿@)」

何の脈絡もないメールでいい。
これが、俺からのさよならだ。
受け取れ、サブロー。

------------------------------

水車小屋に戻ると、小雪殿は学校から帰ってきていた。

「ドロロ、お帰り~今日ね、夏美さんとデートする約束しちゃった!」
「よかったでござるな、小雪殿」

僕は出来るだけの笑顔で祝福する。
きっと、上手く笑えてるはずだ。

「ドロロも、お友達と仲良くやってる?」
「も…もちろんでござる!」
「ドロロが楽しそうで、私も安心できるよ。
お友達とこれからも仲良くするんだよ!!」

うん、ケロン星に帰っても、仲良くやっていくよ。
だから、小雪殿は、僕なんか忘れて、安心して夏美殿と仲良くしてね。
僕も、夏美殿と小雪殿が仲良くやってて、
嬉しいでござるよ、小雪殿。
きっと僕がいなくなったって大丈夫。
君は、一人じゃないんだから。
君が憧れてた、“友達”がいるんだもの。

-------------------------------

結局、隊長もおっさんもガキも、
相棒に直接さよならを言うことは出来なかったらしい。

「ドロロ先輩は、言えたんですかねぇ……」

ガキが問う。

「さあな…だが、あいつのことだ、
きっと言えないだろうな」
「どうしてですぅ?」
「タママ二等、ドロロはさよならなんてしないでありますよ。
さよならしたら、別れを認めることになるでありますからなぁ。
ドロロだけじゃない、ギロロもクルルもタママも、そして我が輩だって、
さよならを認めたくないのでありますよ」

隊長も、俺と同じ意見だったのか…。

「それにしても、ドロロ先輩遅いですねぇ」
「出来るだけ長く、一緒に居てぇんだよ、きっと…」

ついつい本音が出た。

------------------------------

小雪殿を起こさないように、僕は水車小屋を出る。
この星の空気を吸っていられるのも、あと少し。
僕は大きな深呼吸をした。
もしも明日が、小雪殿にとって幸せなら、
僕は、それだけで幸せだよ。
例え、君が僕を忘れても…。
もしも明日が来なければ…にこって笑う君の顔がずっと見れるのに。
もしも明日、君が僕を忘れても、僕は君を忘れない。
モシモアシタガ…

------------------------------

覚悟は出来た…と言えば嘘になるが、
覚悟しなければならない。

「ドロロ!」
「こっ…小雪殿!!」
「良かったね、ドロロ。お友達と、一緒に帰れて」
「……小雪殿~~!!」

東谷小雪が何かに気づいてドロロの後をついてきたらしい。
言葉を越えた心…いや、それ以上、絆でも足りない。
俺たち4人はそんなドロロが少し羨ましかった。
ガキがもらい泣きしてる。
隊長もおっさんも今にも泣き出しそうだ。
俺も、柄にもなく…もらい泣きしちまいそうだ。

「隊長、あんたの合図で、俺はこのスイッチを押す」

俺たちに関わった奴らの、俺たちに関わる記憶の全消去。

「記憶、消去であります!」

隊長は覚悟が出来た…いや、覚悟せざるを得なかったのかもしれない。
俺も一瞬、スイッチを押すことを躊躇った。
もしも明日が来なければ、俺はこんなスイッチ、押さなくて済むのに。
もしも明日が…明日なんか来なけりゃ良かったのに…。
もしも明日が…明日が、あんたらにとって最高でありますように。


Fin


【あとがき】
まあ、ただの健康診断で、
ご丁寧にバックアップまでしてたわけですが(爆)。
51話は何度見ても泣きます。
最初の頃はやっぱり小雪とドロロの抱擁シーンだったけど
クルルがサブローに送ったメールも
らしくて泣けるのさ!!
なんかただ長くなって51話の感動が伝わらなくてすみません!!