Tenのおぼえがき

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コンテンツ・フューチャー

コンテンツ・フューチャー ポストYouTube時代のクリエイティビティ を読んだ。

 本書はAV機器ライターの小寺信良氏、音楽ジャーナリストの津田大介氏両名が、各業界の第一線で働くプロフェッショナル9人に対して個別にインタビューを敢行し、それを1冊の本にまとめたものである。大きく2つのカテゴリに分かれ、Aパートは「通信と放送の『融合』を検証する」、Bパートは「コミュニケーションのパワー」というテーマで編集される。また、著者両名の対談もある。

 コンテンツという大軸を取り囲む技術、システム、権利、メディアなどの様々なプロフェッショナルが、過去から今までをどのように考えて進んで来たか、また、これからの時代にコンテンツをどう生み出し、活用していくかを語る。どのインタビューも、非常に濃い内容で読み応え満点。濃いゆえにバンバン専門用語が飛び交うが、極力脚注が入っていて、読みやすいよう配慮がされているのも嬉しいところだ。というか、これが無かったら意味不明になること必至だった。この脚注のおかげで、本単体として見事に完結できているように感じる。

 特に面白く読んだのは以下(どれも面白いんだけど)。

 音楽家 椎名和夫氏のインタビュー。最近私的録音録画補償金関係の動向をみていると常に「悪」としての印象をもたざるを得ない人だったが、この対談を読んでから大分印象が変わった。youtubeなどの新しいテクノロジーに対して、「どう接していいかわからない」とぶっちゃけ、文化審議会も、権利者・メーカー・消費者のジャンケンで終わってしまってはまずいと語る。ここは本音であると信じたい。

 編集工学者 松岡正剛氏のインタビュー。これは凄くいい。ブログやSNS、youtubeなどぶつ切りのコンテンツが流行する中、「編集」するという行為やその「過程」・アーカイブ技術を重視するべきだと語る。この「編集」という視点は俺の中でほとんど無かったので、読んでいて非常に新しかった。

 また、SIDE Bでの両氏の対談もいい。「スルー力」についての話題があり、「何気ないことでものすごい激昂したり傷ついちゃったりする人が、クリエイティブな表現に向かうと人を感動させるものを作っちゃうわけですからね。(略)」(津田氏)、「コンテンツって人の心を動かさなきゃいけないわけで、自分の心が動いてなければ、動かされていなければ作れないじゃないですか」(小寺氏)と語る。そういう繊細なクリエイターは個人のスルー力だけに責任を負わせるべきではなく、システムとして心を守る(フィルタリングなど)方向へ進むべきだと。これには大いに同意した。「炎上」を阻止するべきだ…との発言は出ていないのも興味深い。おそらく両氏は、ウェブの炎上はある種コントロールできない必然だと割り切っている感があるように感じる(し、逆に言論を規制することになるからだろう)。

 実は、この書籍はウェブで全文を公開しようとしている人がいる。というのも、この書籍はクリエイティブ・コモンズの形式で出版されており、「著者表示・非営利目的・改変禁止」の条件をクリアすれば複製・転載は自由に出来るという、非常にラディカルな取り回しが可能な著作物なのだ。著者両名の、コンテンツ(著作物)に対する柔軟な姿勢がうかがえる好例だ。これじゃウェブで読まれちゃって、利益でなくなっちゃうんじゃないの?と思う。ところが、かのサイトを見ると、お世辞にも読みやすい形式で公開されているとは言えず(サイト主自身が認めている)脚注も無い(2007/08/27現在)ので、本の形式の方が圧倒的に読みやすい。本という媒体の「読みやすく、アーカイブされている価値」が非常にアドバンテージをもっている事を再確認する。そもそも、本は縦書きなのに対してネットは横書きが基本だ。読む物理的なベクトルが違うだけでこうもテキストに対する印象が変わるものかと思った。最初に縦書きを読んでしまったから、横書きに違和感をもっているだけかもしれないが…ケータイ世代とかが読むとまた違ってくるのだろうか。

CONTENT'S FUTURE(公式)
コデラノブログ3(小寺信良氏のブログ)
音楽配信メモ(津田大介氏のブログ)
松岡正剛の千夜千冊 遊蕩篇 コンテンツ・フューチャー
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