プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

村田元一

2016-11-12 11:54:56 | 日記
1962年

村田がベンチへ帰ってきたときは異様なふんい気だった。村田はいつものポーカー・フェイスだったが、ナインの方でいやに気をつかっている。だれも声をかけるものがいない。しばらく間をおいて鵜飼が「ゲン、いいピッチングだったぞ」といって手を出したら、村田はうすら笑いを浮かべてにぎりかえした。それからは「ハード・ラック(不運だったぞ)」と「ナイス・ピッチング」という二種類の声がナインからつぎつぎと出た。村田が敗戦投手になったような錯覚を起こすほどだった。星山は「イレギュラーしたのか」と聞いても無言、さっさとベンチを出ていった。グルリと報道陣にかこまれた村田はベンチのイスにすわると、小さな声で「アーア」とタメ息をついた。万感こもごもというタメ息だった。「ああ、暑かった」といってから冷静に説明した。「外角のまっすぐを投げた。ちょっとスライドがかかっていたかな。それが西山のバットの先っぽに当った。そしてあの人の前でワン・バウンドしたんです。ベースのへんでね。イレギュラーしたって?どうですかね」たんたんという村田だが、星山をあの人という微妙な言葉で形容したのをみても、必ずしも心おだやかではなかったのだろう。国鉄のある選手は「あれはエラーですよ。ヒットなんて判定はひどい」とおこっていた。おかげで村田はパーフェクトどころかノーヒット・ノーランまで逃がしてしまった。「パーフェクトということはすぐわかっちゃった。いつも三回ごろまでにじゃんじゃん走者を出してはホームランをポカリと打たれてるぼくですからね。あれっ、きょうはランナーを出していないなとすぐ分かる」やっとトボケた。「おしかった、おしかった」という報道陣のコーラスに「ちょっとね。しようがないですよ。まあ勝ったからいいですよ」といってロッカーへ歩き出した。金田が待っていた。「ゲン、気を落とすな。まだこれからやれる、やれる」と大声をあげた。ちょっと会釈してロッカーへはいった村田はいった。「プロ野球初の1勝のときも五回だったかに一本打たれてね。相手は大洋だった。五年くらい前の話ですよ。三度目にはやれるかな」真っ赤なバスタオルを巻きつけてフロから出てきた村田は、いままでのマンポ・スタイルならぬチャコール・グレーの背広をきちんと着た。「あすは休みだし、きょうは飲むぞ。ヤケ酒かって?とんでもない。もちろん祝杯ですよ」
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