
昨年、来日公演を果たしたジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン。
ギター・ウルフと共演するということで生まれた日本企画盤が掲載写真の
「THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION VS GUITAR WOLF」。
何の捻りもないタイトルが潔すぎる。
CDとDVDの2枚組で、CDは両者2曲づつ収録。面白いのは両者ともカバー曲を
1曲ずつ演奏しているところで、まずギター・ウルフは何とディープ・パープルの
『SMOKE ON THE WATER』を取り上げた。彼らが演奏するのだからギター・ソロを
完コピするわけもなく、イントロこそ忠実になぞっているものの後はギター・ウルフ以外の
何者でもない轟音の完全なメーター振り切り状態。パープルのファンからは決して褒められる
ことのない演奏だろうが、これはこれで痛快。
JSBXはビースティー・ボーイズの『SHE'S ON IT』とリンク・レイの『JACK THE RIPPER』を
繋げて演奏。これも彼ららしいカバーで空気を豪快に鳴らす録音とは正にこの音。
『SHE'S ON IT』では「She wants to waste my time and that's no delusion」と
歌うところを「She wants to waste my time and BLUES EXPLOSION」と歌うのが
滅茶苦茶格好良い。『JACK THE RIPPER』も切れ味鋭く、加速しながらの掛け声も快調。
実に素晴らしい。
圧巻は両者が共演した下北沢シェルターでの映像を収録したDVD。尺が短いのが残念だが
この映像の価値は後になればなるほど上がるのは間違いないだろう。
良くも悪くも(いや、悪くはないか)昔から変わらない演奏スタイルのギター・ウルフは
お馴染みの曲ばかりで、デビュー時からのファンで「最近はちょっとご無沙汰」なんて人も
すんなり見ることができるはず。いつまでこのスタイルで演れるのか懐疑的になるのも事実だが
刹那を生きるロックンロールがあってもいいはずだ。
JSBXに関しては、これはもう必見というしかない。活動停止前の数年は正直な処、アルバムを
聴いても勢いに欠けると思うところもあったが、活動再開後に素晴らしい新譜をモノにした
自信がバンドを再び勢いづけたというところか。
以前から彼らは自身の曲をメドレー形式で演奏していたが、ここまで自由に緩急をコントロールして
演奏できたのは往年のザッパ・バンドくらいではないだろうか。大人数でなく、たった3人、しかも
ギター2本とドラムスでここまで表現できるというのは、もうその縛りなら彼らしかいない。
以前にも増してラッセルのドラム・プレイに深みが出ているのが、彼らの演奏を更なる高みに
持っていく。
オフィシャル商品として世に出たJSBXの映像というのは、それほど多くない。
それだけに、今回のDVDが世に出たのは本当に嬉しい。ま、ボーナス扱いのアレは無くても
良かったかもしれないけど。(笑)先にも書いたが、全体で35分ほどの尺はやはり短い。
次はDVD2枚組あたりでドカンとワールド・ワイドに(笑)映像作品を出してもらいたい。
ROCK'N'ROLL , LADIES AND GENTLEMEN , THAT BECAME MY NAME .
アッという間に終わってしまうCDですが、DVDと
あわせて楽しめますので、是非に。