エミール・ガボリオ ライブラリ

ホームズに先立ち、「推理する探偵」を生み出した19世紀フランスの作家ガボリオの未邦訳作品をフランス語から翻訳しています。

第一部  第五章 15

2017-04-19 10:06:53 | 「ファイルナンバー1...
「まぁ、どうしましょう!」と彼女は答えた。「そうしたいのはやまやまなのだけれど、でもどうしたら? 私は自分の体面を傷つけることなんて出来ないでしょう? 私には他に子供たちがいて、私の名誉はその子たちにも関ることなんですよ」
この返答はクラムランを驚かせたようだった。二週間前にはフォヴェル夫人は他の息子たちのことなど口にしなかったのに。
「よく考えてみましょう」ルイは答えた。「次にお会いするときには、すべてを丸く収める何らかの策をお聞かせしますよ」
経験豊富な男が熟考すれば、必ず何かをひねり出す。次の木曜日に姿を見せた彼は、自信たっぷりの様子だった。
「いろいろ考えてみましたが」と彼は切り出した。「結局はこれですな」
「何ですの?」
「ラウルを救う方法ですよ」
彼は説明した。フォヴェル夫人が夫に不審を抱かせることなく、毎日ラウルと会うためには、ラウルを彼女の家に客として訪問させることが必要である、と。この提案を聞いた夫人は、彼女自身も十分無分別で、咎を負ってさえいる身であるくせに、面目は重んじる人間だったため、ぎょっとした。
「そんなこと無理です!」彼女は叫んだ。「そんないやらしい、卑劣な、破廉恥なこと……」
「そうですな」考え込みながらルイは答えた。「しかし、それがラウルを救済する方法ですよ」
しかし、今回は彼女も抵抗した。彼女は激しく憤慨し、ルイ以外の人間なら諦めるほど頑強に抵抗した。
「いいえ、駄目です。そればかりは承知できかねます」
哀れな女よ!人は一旦正道を離れてしまえば、いかほどの泥やぬかるみに立ち向かうことになるかを知るべし! 彼女は心の底から『絶対だめ』と言いはしたが、その週の終わりにはもはやその計画を必死に拒絶するのでなく、その方法について議論するようになっていた。
かくして彼女は巧みなやり方で操られたのである。口先だけは丁寧だが執拗な脅しをかけるルイと、甘い言葉で哀願するラウルからの両面攻撃に遭い、彼女は半狂乱になりながら抵抗しようとしたが出来なかった。
「でも、どうやって?」彼女は言った。「どんな口実でラウルを迎えるのです?」
「至極簡単なことでしょう」ルイは答えた。「もし、ただの客としてラウルを迎えるだけのことなら。この私でも、既にあなたのサロンに出入りする名誉を得ています……ラウルには、更なる地位が必要です」
絶え間なく脅しと甘言を交互に繰り返してフォヴェル夫人を長い間苦しめた後、彼女から意志を奪い、殆ど理性も奪ってしまってから、彼は最終的な計画を披露した。
「この問題を解決する方法がありますよ。まさに天啓と言えるようなものです」
彼の口調から彼女は、ルイが彼女の胸の内を暴き立てることになるのであろうと推測した。被告人が自分の罪状を読み上げられるのを聞くときのような惨めな諦めの気持ちで、彼女は彼の言葉を聞いていた。
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