エミール・ガボリオ ライブラリ

ホームズに先立ち、「推理する探偵」を生み出した19世紀フランスの作家ガボリオの未邦訳作品をフランス語から翻訳しています。

第一部  第五章 16

2017-04-20 11:26:56 | 「ファイルナンバー1...
「あなたは、サン・レミに」ルイは尋ねた。「親戚の女性がおられるのではなかったですか? 大層年を召された未亡人で、娘さんが二人おありの……」
「ええ、従姉のド・ラゴール夫人ですわ」
「そうそう、その方です。その方の財政状態はどのようなものですか?」
「貧しいです。ええ、とても貧しい状態ですわ」
「そうですね。あなたが密かにしておられる援助がなければ、救貧院に行かねばならないほどの」
ルイがこれほどよく知っていることに、フォヴェル夫人は驚きが止まらなかった。
「まぁ、そんなことまでご存じなの!」彼女は呟いた。
「知っていますとも。それだけじゃない、もっと他のことまで知っています。たとえばあなたの御主人があなたの親戚を誰ひとりご存じないこと。だからラゴール未亡人の存在を疑うこともまずないであろう、ということも。私の計画に察しがつきましたか?」
彼女は少なくとも薄々感づいてはいた。そして、どうやって抵抗したらよいかを考えていた。
「私の考えた筋書きはこうです」ルイは続けて言った。「明日か、明後日、あなたはサン・レミの従姉から一通の手紙を受け取る。それには、息子をパリにやることにしたので、どうか面倒を見てやってくれ、と書いてある。あなたは当然、その手紙をご主人に見せる。すると数日後、親戚の素敵な青年ラウル・ド・ラゴールが到着する。魅力的な若者で、金はある、才気はある、好感が持てる、と来て、おまけにご主人に気に入られるよう全力を尽くす。そして実際、気に入られる、という寸法です」
「絶対に!」フォヴェル夫人は叫んだ。「絶対に、私の従姉はそんな胸のむかつくような茶番に手を貸したりしませんわ。あの人は立派な婦人ですもの」
ルイは、満面に自惚れを浮かべ笑った。
「その従姉の方に本当のことを打ち明ける、などと私が言いましたか?」
「だって、そうしなきゃなりませんでしょ!」
「おお、さに非ず、さに非ず。あなたが受け取り、ご主人に見せる手紙は、誰でもいい、どこかの女に私が口述筆記させ、信用のおける者にサン・レミで投函させます。御従姉様があなたに感じておられる恩義について申しましたのは、もし不測の事態が発生した場合、その方の利益が我々への保証になるということをあなたに分かっていただくためです。これでもまだ何か障害がありますかな?」
フォヴェル夫人は憤怒に我を忘れて立ち上がった。
「私の気持ちです!」彼女は叫んだ。「私の気持ちを忘れているでしょう!」
「お言葉ですが」ルイは揶揄を込めた礼儀正しさで言った。「私はこの道理に賛同いただけるものと確信しておりますよ」
「でも、それは犯罪ではないですか。あなたが私にしろ、と仰るのはおぞましい犯罪だわ!」
ルイもまた立ち上がっていた。彼の邪悪な情熱が全開となり、彼の顔に極悪非道な表情を与えていた。
「どうも我々は」と彼は猛々しさを滲ませた声音で言った。「お互い理解しあっていないようですな。犯罪という言葉を口にする前に、過去を思い出していただきたい。あなたは若い頃、さほど引っ込み思案な娘さんでもなかったようですな、愛人を作ったお手並みから見ると。しかしあなたがその愛人を袖にしたことは確かなようです。あなたは彼と共に逃げることを拒否した。彼はあなたのために二人の男を殺し、絞首刑になる危険を冒したというのに。
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