エミール・ガボリオ ライブラリ

ホームズに先立ち、「推理する探偵」を生み出した19世紀フランスの作家ガボリオの未邦訳作品をフランス語から翻訳しています。

第一部  第七章 9

2017-05-15 09:18:15 | 「ファイルナンバー1...
私は本当のところ、国債による年二万四千リーブルの利子を得ている。それだけじゃない。ブラジルの私の土地が売れるらしい。運が良かったんだ。既に私の代理人が四十万フランを私のために確保してくれたよ」
ルイは喜びに震えていた。ついに、どの程度まで危険が迫っているかが分かるときが来ようとしている。
「代理人って?」と彼はいかにも興味なさそうな様子を装って尋ねた。
「そりゃ、リオで以前付き合いのあった男さ。その金は現時点でパリの金融家のもとに預けてある」
「友達なんだね」
「いや、とんでもない。パオでの取引銀行の頭取から名前を聞いて、裕福で慎重な男だし、誠実さは折り紙つきだからと推薦されたのさ。ええと、何ていう名前だったかな……フォヴェル、プロヴァンス通りに住んでいるという話だ」
ルイほどの自制心の持ち主、しかも予め覚悟が出来ていたのであったが、それでも彼の顔は青ざめ、それから目に見えるほど紅潮した。しかしガストンは自分のことに気を取られていたので、それに気づかなかった。
「その金融家のことをお前は知っているかい?」彼は尋ねた。
「ああ、評判は聞いたことがある」
「いずれにせよ、私たちはすぐにその人と知り合うことになるだろうよ。というのは、お前と一緒に私もパリに行こうと思っているんだ。お前はここに住み着く前に身辺整理をしにパリに戻らなきゃならないだろうから」
この計画が実現すればルイは破滅することになるのだが、そう突然言われても彼は表情を出さないでおくことが出来た。彼は兄の視線が自分に注がれているのを感じた。
「パリに行くの? 兄さんが?」彼は尋ねた。
「もちろんそうだよ。別に驚くようなことじゃないだろ?」
「ないね」
「私はパリが嫌いだし、足を踏み入れなくてもパリが嫌いなことは分かっている。その気持ちはとても強いんだ。けど、気になることがあってね」彼は躊躇った。「大事なことなんだ。……ラ・ヴェルブリー嬢がパリに住んでいると聞いたもんだから。彼女に会いたいんだ」
「へぇ!」
ガストンは考えに沈んだ。彼は深い思いに心を突き動かされ、気持ちの昂ぶりが表面に出ていた。
「お前には打ち明けるけど」と彼は語り始めた。「何故彼女に再会したいかというと、私は昔、彼女に亡き母上の装飾類を預けたんだよ」
「それで、二十三年後にそれを返して貰いに行こうっていうのかい?」
「ああ、そうなんだ……というより、いや、そうじゃない。それは単なる口実さ。それを口実にすれば彼女を訪れることができる。彼女にもう一度会いたい……何故かっていうと……私は彼女を愛していたんだ。それが真実さ」
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