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対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ!

2017-05-06 | Weblog
シリーズ平成の本音ー対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ!
 米国のトランプ政権は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えたとして、従来とられて来た‘戦略的忍耐’を終了し、軍事的措置を含む‘すべての選択肢’はテーブルにあるとして強硬姿勢を表明している。もっともオバマ政権時代も、‘すべての選択肢’はテーブルにあるとしていたので新たな政策でもない。
 一方北朝鮮は、年初よりミサイルの発射実験を繰り返すと共に、6回目の核爆発実験を準備していると見られている。
 このような中で、4月8日頃、米太平洋司令部筋が原子力空母カールビンソンを朝鮮半島海域に展開することを明らかにしたとの報道を受けて、米朝関係の緊張が高まった。しかしその後、4月18日前後には同空母はシンガポールからオーストラリア、インドネシア海域で活動していたことが判明した。
 1、対北朝鮮米・中協力の模索と軍事介入のための環境作り
 4月16日、マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)は米TVインタビューにおいて、北朝鮮の核、ミサイル開発に関し、同国の挑発行為によって‘問題は頂点に達している’とする一方、‘平和的に問題を解決するため、軍事的手段に至らないすべての行動を取る時だ’と述べた。またトランプ大統領もこの日のツイッターにおいて‘中国が北朝鮮問題で米国と協力している時に、為替操作国と呼ぶ必要があるだろうか。何が起こるかに注目する。’とつぶやいている。
トランプ大統領は、4月6、7日に訪米した習近平中国主席とフロリダ州の別荘で会談している。この首脳会談においては、米中間の貿易不均衡や低く抑えられている元の為替問題とともに国際情勢につき広く意見交換された趣だが、第1回会談の後では、‘何も一致点はなかった’としていた。北朝鮮問題では、米国は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えており、‘中国の協力が得られなければ、米国1国で対応する’旨を伝えたものと見られる。中国は、朝鮮半島の非核化を支持しつつも、韓国における迎撃ミサイルTHAAD配備に反対すると共に、平和的手段による解決を主張したものと見られる。この間トランプ大統領は、化学兵器を使用したと報道されているシリアのアサド政権に対し、空軍基地へのミサイル攻撃を命じ、実施した。中国は、これに理解を示したと報じられているが、トランプ政権の強硬策を印象付けるには十分であったであろう。
習近平主席は、帰国後の4月11日にトランプ大統領と電話で会談している。習主席は、帰国後、北朝鮮への対応につき関係部局と協議し、米国の軍事介入を避けるため北朝鮮説得に踏み切ったと見られ、トランプ大統領に中国による北朝鮮説得努力の意向を伝える一方、THAAD配備にくぎを刺したものと見られる。トランプ大統領も電話会談結果を評価している。
原子力空母カールビンソンの北上を遅らせたのは、中国に時間を与えると共に、国際世論に対し平和的解決努力を尽くしていることを示すためなのであろう。
2、危うい日本の対応
4月18日、ペンス米副大統領は、韓国訪問後訪日し、安倍首相と会談した。その際、同首相より、‘トランプ政権がこれまでの「戦略的忍耐」を了し,「全ての選択肢がテーブルの上にある」という考え方に立って問題に対処しようとしていることを評価する’旨表明した。これは、日本として、米国の軍事行動を含む強硬策を容認することを意味する。
このような情勢を受けて、マスコミも連日のように、米国による対北朝鮮軍事介入の可能性を報じると共に、北朝鮮が日本を攻撃してくる可能性などを報じ、危機を煽る形となっている。
 原子力空母カールビンソンは、中国の動向を見極めつつ朝鮮半島海域に向けて北上して来ると見られている。そして防衛省は、海上自衛隊の護衛艦が同空母と合流させ、共同訓練を実施することを検討していると報じられている。
 このような日本の前のめりの姿勢は北朝鮮もキャッチしているであろう。
 北朝鮮は、朝鮮動乱後、韓国と休戦状態にあり、米国が庇護者となっている。韓国軍の指揮権は未だに米国が持っており、38度線を境として北朝鮮と対峙している。北朝鮮は、来るべき第2次朝鮮戦争に備え、米国との対峙関係から核とミサイル開発を行ってきている。攻撃目標は第1義的には米国と韓国である。日本は朝鮮戦争の当事国ではないのだ。
 しかし現自・公連立政権となって、安保法制が成立し、同盟国である米国との軍事連携が拡大すると共に、2月の首相訪米において北朝鮮への強硬策を打ち出しているトランプ大統領との間で同盟関係の強化が確認されたことなどから、北朝鮮は最近、‘日本の米軍基地’も標的であることを公式に表明している。
 その中で、朝鮮戦争の当事国でもない日本が何故、米国の北朝鮮への軍事行動を含む強硬策を内外に表明し、更に米国原子力空母カールビンソンに護衛艦を差し向け、共同訓練を実施するなど、突出した行動をとるのか。また沖縄嘉手納基地に米軍戦闘機が集結していると報じられているが、沖縄からの北朝鮮への直接攻撃を容認するのだろうか。米国が北朝鮮を攻撃すれば、南北間の休戦は破棄され、南北朝鮮は戦争状態となる。そうなると日本は第2次朝鮮戦争の当事者になるというリスクを負うことになる。誰のための安全保障か。米国の意向を忖度しての対応であろうが、防衛省はそれにより日本国民の安全を危うくすることになるリスクを考えているのだろうか。
 4月17日、北朝鮮の日朝国交正常化交渉担当宋日昊大使は、平壌において記者団を集め、‘日本人拉致被害者などの再調査を行う特別調査委員会は解体された’等としつつ、‘朝鮮半島で戦争の火がつけば、日本に一番被害が及ぶ’旨強調した。これは、対北強硬路線に転換した米国を支持する日本の姿勢を受けて、日本への揺さぶりと見られる。それが日米同盟強化の代償ということにもなる。
 日米は同盟関係にあるので、日本有事となれば連携して対処しなくてはならない。しかし対岸の戦争に何故日本が前のめりで首を突っ込まなくてはならないのか。朝鮮動乱の歴史を理解しない熟慮とバランスに欠ける対応と言えないだろうか。もっとも、政治的には米朝関係が緊張し、危機が煽られれば、森友学園問題等から世論の目をそらせることが出来るので好都合であろうとの見方もある。
 日米同盟は重要であるが、日本国民は、日米同盟を強化すればするほど、米国に引きずられて日本の安全を犠牲にしなくてはならないリスクを負っていることを認識すべきであろう。またこのように日米同盟を強化すればするほど、ロシアとの北方領土問題や平和条約締結問題も遠くなるであろう。このようなリスクを十分認識の上、安全保障や外交姿勢を判断すべきなのであろう。特に今回の場合は、休戦状態にある米・韓と北朝鮮間の問題が根底にあり、日本はその当事者ではない。そうなれば日本国民の生命、財産への被害は甚大なものになると危惧される。日本は、基本的に自国の防衛と米国に対し後方支援を行えば良く、米・韓と北朝鮮との紛争に直接顔を突っ込むべきではないのではないか。また北朝鮮による核兵器保有は阻止すべきであろう。しかしそれは北朝鮮の核の問題だけではなく、インド、パキスタン、イスラエル、イランなどの核保有、核開発問題などと共に、より広い世界大の問題として取り組むべきことであろう。日本の熟慮あるバランスのとれた政策選択と言動が求められる時であろう。
 3、過去のものとされた日本人拉致被害者問題(別稿)(2017.4.21.)
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天皇退位に関する特例法案に多くの疑問点!

2017-05-06 | Weblog
平成の本音―天皇退位に関する特例法案に多くの疑問点!
 天皇陛下のご退位に向けての有識者会合が最終報告を取りまとめ、特例法案の内容が今月にも明らかにされるようだ。そもそも、ご退位については2016年8月にご高齢等によりご公務が滞ること懸念され退位したいとのご意向が明らかにされたことによる。多くの国民はご退位に好意的と見られるが、天皇が退位された後の対応について、現行憲法に照らして疑問も少なくない。
 1、呼称と敬称
 問題となる退位後の呼称については、1月の段階では、‘上皇が天皇より上位’にあるかの印象を与え、問題がある等として、「前天皇」や「元天皇」とすることが検討されていた趣だが、天皇を‘上皇’、皇后を‘上皇后’とすることが検討されているかのように報じられている。
ご退位後‘上皇’、‘上皇后’とすることについては、天皇より上位の者が存在するかの印象を与えるほか、憲法上、国民統合の天皇は1人であり、憲法上にはないは‘上皇’という地位や呼称を設けることには大きな問題がある。敬称も‘陛下’とすることが検討されているようだが、あたかも2人の象徴がいるかの印象を与えるなど問題が多い。憲法上は、天皇を補佐する「摂政」を置くことだけしか規定していない。
昭和22年に現皇室典範が制定された際にも、譲位の制度を巡って議論があった趣だが、‘上皇’の存在による弊害に懸念が出され、見送られた経緯があるようだ。
明治時代まで‘上皇’という呼称が使われることが多かったようだが、明治憲法の下では天皇が専制君主であったものの、現行憲法では主権在民となっている時代に‘上皇’という呼称を蒸し返すのは時代錯誤も甚だしいのではないか。時計を逆に回そうというのだろうか。もっと主権在民の民主主義という価値観に沿った簡素で分かり易い形にすべきであろう。
‘上皇陛下’の地位が新設されれば、現天皇に親しみを感じている世代は‘上皇’に親しみを感じることになり、新天皇にはそれに次ぐものとなり、象徴は2分することになる恐れもある。
ご退位後は、「前天皇」、「前皇后」として公務から離れ、ご自由にゆったりと過して頂きたいというのが多くの人の願いではないか。極論をすれば、「前天皇」、「前皇后」ということを除けば、基本的には一般人と同様の生活を送られるということであろう。
 2、ご退位後の処遇
 ご退位後は、東宮御所(仙洞御所)に移られ、皇太子、同妃両殿下が皇居に入られる方向のようだ。
 そして宮内庁にそのお世話をする‘上皇職’、御所に‘上皇侍従長’が新設されるとも伝えられている。
 更に予算としては、両陛下と皇太子ご一家の日常の生活費や宮中祭祀などのために「内廷費」が充てられ、2016年度は3億2,400万円ほどとなっていたが、退位後にはその「内廷費」が当てられるようだ。そのような多額の「内廷費」で「前天皇」に何をさせようとしているのだろうか。
 他方、現天皇退位後に次の皇位継承者となる秋篠宮殿下には、現在年間6,710万円の「皇族費」が給付されている趣だが、現在の皇太子殿下と同程度の額を支給する方向のようだ。金額は別として、秋篠宮殿下への給付額を引き上げることは良いが、公務から解放された「前天皇」、「前皇后」お2人だけに皇太子と同額の内廷費が給付される理由が分からない。皇太子ご一家への内廷費と秋篠宮殿下への「皇族費」の合計を「前天皇」家と秋篠宮ご一家に配分することで十分ではないだろうか。
 3、ご退位の理由
 特例法案では、2016年8月の陛下の退位表明を踏まえ、「ご高齢となり、今後、これらの活動を続けることが困難となることに深いご心労を抱かれていること」を明記する方針と報じられている。
そして、「国民がご心労を理解し、共感していることや、皇太子さまが公務を長期にわたって務められてきたこと」から、陛下の退位と皇太子殿下の即位を実現することを定める」旨、退位の趣旨を記載するとも報じられている。
しかし「国民がご心労を理解し、共感していること」は何を根拠にしているのであろうか。退位の賛否について国民投票でもするなら兎も角、あたかも国民が天皇のお気持ちを忖度して退位させるような記述は事実に反し、不適当であろう。
更に、負担となっているご公務の内容について、「天皇が憲法に定められた国事行為に加え、被災地のお見舞いなど、象徴としての活動を続けられて来た」との説明を付けるとも報じられているが、「象徴としての活動」とは一体何なのであろうか。被災地お見舞いについてはご努力を尊重するところではあるが、憲法上、「天皇の権能」として、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(4条)と明記されており、その上で「国事行為」として、憲法改正、法令及び条約を公布することなど10項目が明記されているので、それ以外の権能は有していない。公務の中に「象徴としての活動」が含まれるかの表現は、憲法を逸脱するものであり、不適切と言えよう。
天皇の「公務」が負担と思われるのであれば、どうしてご公務の範囲を、憲法上の10項目に限定すると共に、一部を「委任」することも検討すべきであろう。各国元首等が来日される場合、拝謁や会食が持たれる場合があるが、厳密に言えば憲法上の「国事行為」ではないので、来賓者が皇室と関係の深い各国の王室や皇室等の場合に限るなど、負担の軽減を検討すべきではないだろうか。
 4、前天皇崩御の際も「大喪の礼」?
 前天皇崩御の際は、「大喪の礼」とする旨記載される趣だ。しかし「大喪の礼」には、各国の元首等が参加するものでもあるので、天皇崩御の際に限るべきであろう。前天皇については、‘大喪の礼に準ずるもの’として簡素化を図るべきであろう。「大喪の礼」とすると、国内的にも外交的にも制約が多くなり、国民活動に支障となる可能性がある。
 なお昭和天皇崩御の際には、‘歌舞音曲は控える’とされ、銀座、赤坂、六本木などからハイヤーやタクシーの車列が消え、国民活動は抑制され、平成時代に入っても景気は低迷し、因果関係は別として、バブル経済が崩壊した経緯がある。このような規制も望ましくなく、国民それぞれの気持ちの問題ではなかろうか。
5、「特例法」は「皇室典範」と一体となり得るか?
上記のような趣旨の退位とその後の呼称、処遇などに関する「特例法」を「皇室典範と一体をなす」旨の附則を設けるとされている。しかし特例法は特例法であり、それを恒久法と一体とすることには無理がある。更に憲法の規定を越えた呼称や制度、機能などとなっている。特例法と言いながら、実は「皇室典範」の改定と同様の効力を持たせることは、国民の目を欺くものであり適切ではない。そうであれば皇室典範自体を改正すべきであろう。(2017.4.19.)
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森友学園への国有地安値払い下げ、深まる忖度疑惑!

2017-05-06 | Weblog
平成の本音―森友学園への国有地安値払い下げ、深まる忖度疑惑!
3月23日、国有地を破格の安値で購入し、小学校を建設している森友学園の籠池理事長が、証人喚問され、衆・参両院で 証言した。また翌24日には、財務省の前理財局長(現国税庁長官)と前近畿財務局長(現国際局長)が参考人として証言した。
 この森友学園問題については、まず国有地の安値売却について、行政当局(理財局、近畿財務局、及び国土交通省)の対応が適正、公平であったか、関係文書の廃棄は公文書保管義務に反しないか、及び学校建設の‘条件付き認可適当’等を決めた大阪府(私学審、私学課)の対応は適正であったのか等の国及び地方の行政事務が適正だったか否かが問われなくてはならない。
 そしてこれに関連し、森友学園の天皇中心の保守的教育方針に傾倒する首相夫人、及び首相自身が行政による優遇措置に直接関与していなくても、国及び大阪府が、破格の行政判断に首相及び首相夫人の存在が‘忖度’されなかったか否かが問題となろう。
 1、国有地管理のずさんさと不誠実な行政
 国有地の格安売却が行われた発端は、大阪府の私学審が小学校建設につき条件付きで‘認可適当’としたことにある。小学校建設には、土地の確保等が条件であったが、国有土地が確保される前に‘認可適当’が出された。その前に、近畿財務局の担当官が大阪府(私学課)を訪問し、‘認可が下りれば国有地売却は可能’との趣旨を伝達したとされている。大阪府側には重要な認可条件に関することであるので、記録は残っているはずだ。
大阪府側が、規則にのっとって認可保留を継続していれば、今回の国有地の格安売却なども起こらなかったであろう。結果的には森友学園側にも悲劇となった。松井知事も認めている通り、その時点で例外的な‘忖度’があったのは明らかだ。同知事が属する維新の会も、橋本前代表を始めとして、思想的には保守であり、安倍首相の考えに近いことは広く知られている。
松井知事は、国有地の格安売却問題が表面化した後、森友学園側の対応や近畿財務局の対応に批判的な発言をし、距離を置き始めているが、最大の問題は、国家、国民の財産である国有地の安値売却である。
 担当の財務省理財局長は、適正に売却した旨繰り返し、‘忖度’等はないとしている。当時の理財局長(現国税長官)は、一連の話について、そのような報告等は受けていないとしている。また前近畿財務局長(現国際局長)は、報告は受けているが、忖度はしていない等としている。担当局の責任者が、こぞって国有地安値売却を巡る背景等を知らないとは驚きだ。怠慢、無責任である。知らなくとも、管理責任が厳しく問われる。逆に、安値で売却される国有地に建てられる小学校に、首相や首相夫人の名が出ていることも知らないというのも無神経で、仕事を真面目にやっているとも思えない。
 国有地、国有財産の管理方法を抜本的に透明化、適正化する必要がある。
 またもし財務省等が、首相や首相夫人の名に対する‘忖度’はないとするのであれば、売却時の決裁書類、価格や大幅値引きの根拠を含む資料を提出し、説明すべきであろう。敷地から‘ゴミが出た’ので減額したというのであれば、ゴミの種類や量、及び撤去費用の積算根拠や領収書や請求書類を提出し、説明すべきである。財務省は、これら文書を‘廃棄’したとしているが、公文書の保管義務違反であり、国有財産に係るものだけに、厳重な懲戒処分に相当する。不誠実、無責任な業務振りであり、国家、国民に対する背任行為と言えよう。
 財務相を含め、この政権は、公務の管理能力や内部統制が欠如している。防衛相によるスーダンからの日報の廃棄問題もあった。
 首相始め内閣が、このようなずさん、無責任な行政について、関係事務当局を厳重に注意し、国民の納得が得られるような行政事務を行うと共に、誠実な説明と改善措置を提示するよう指示すべきであろう。政権与党である自民、公明の両保守党もまた、ひたすら首相側を弁護しているだけでなく、事務当局に対し実質的な改善を求めるべきではなかろうか。内閣にも政権与党にもそのような姿勢は見られない。
 現在、保守勢力である自民・公明両党や大阪府側等が、森友学園側の不正や偽証などにつき追及する構えだが、それはそれとして、行政当局による不正の可能性をこの際徹底的に解明するすることこそが、国民全体に影響する行政の適正化とって必要ではないだろうか。
2、明らかとなった行政当局、大阪府の過度の‘忖度’
籠池理事長は、小学校建設及び国有地の払い下げについて、‘驚くほどの良い対応で’‘神風が不吹いた’との認識を示している。
それに先立つ大阪府の建設認可については、大阪府知事が、近畿財務局の係官が同府私学課を訪れるなど、好意的な対応をしており、‘忖度’があったのではとの印象を囲み記者に述べている。
 籠池理事長は、建設用の国有地を当初定期借地していたが、定期借地をなんとかできないか、首相夫人に電話で問い合わせ、直接返事はなかったものの、後日、同夫人付き係官(経産省出身)より、ファックスで、財務省に問い合わせたところ現在は困難との回答を得ている旨連絡している。
 首相側は、‘ゼロ回答であるから、忖度はない’としているが、このファックスを受けた後、籠池理事長は、2016年3月に財務省理財局の国有財産審理室長と面会し、その面談後、同理事長は、借入から購入に切り替えて申請し、短期間で破格の安値での国有地購入が実現している。ファックスが送られた時点での‘忖度’はなかったとしても、結果を見れば明らかであり、この小学校建設には首相、及び首相夫人が関係していると見られることが‘忖度’され、‘神風が吹いた’のであろう。そもそも国との借地契約には、「ゴミがある」などとは一切書かれていなかった由であり、値引きのために生活ゴミ問題が出され、土地価格を8億円強も割り引いたことになる。
首相側は、同夫人付き係官によるファックスでの回答は、同夫人付き係官の‘個人の行為’で、夫人とは関係ないなどとしている。まず100%あり得ない。そもそも財務省には首相夫人付というタイトルを言わなければ担当室長などは相手にもしてくれないだろうし、苦し紛れの言い訳としか映らない。もし‘個人の行為’であったとすると、上司である首相夫人に内緒で行った行為であり、公務員給与を受けながら勝手な個人の行為をしていたということになるので、いずれにしても懲戒に値する。そもそも首相自身が、当初‘夫人は私人’と言っていたのであるから、常勤で2人、非常勤で3人の公務員が首相夫人に付いているのも変な話ではある。首相は、議員報酬や秘書費、政務活動費なども受給しているので、必要であれば首相側が秘書を付けた方が合理的に見える。
いずれにせよ、行政側がどう説明しようとも、結果から過度な忖度があったことは明らかだ。行政当局が‘忖度’はなく、適正だというのであれば、上述の通り、関係資料を付して国会、国民にきちんと説明すべきであろう。
他方、首相側もどうして‘忖度’があったこと自体を否定し続けるのであろうか。‘過度な忖度’があったとしても、その責任は行政当局にあり、首相側が具体的な要請や要望、或いは何らかの示唆をしていない限り、首相側の問題ではない。それを否定するのは、その背後にある意図を隠そうとしているからではないのだろうか。
3、「教育勅語」の暗唱やその下での‘修身教育’復活は問題
 それ以上に問題であるのは、首相夫人が一時森友学園の幼稚園を複数回訪問し、教育方針に賛同し、小学校の名誉校長となり、また首相自体もそのような教育方針を評価する発言をしていたことであろう。それがなければこの問題も起こらなかったであろう。
 森友学園の幼稚園では、「教育勅語」を判断力もない幼稚園児に暗唱させている。「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、その中に「公のために奉仕し」というくだりがあり、それ自体は理解されるところである。しかしその次に「永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい」などとあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいとの勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制君主国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。信条、信仰の自由であり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
 文科省が「教育勅語」を教えることは法令上問題ないなどとしたり、稲田防衛相が「教育勅語」にも良いことが書いてあるなどとしているが、行政当局や閣僚が廃止になった「勅語」を教えることを容認する姿勢は、現行憲法に照らし適正を欠くと見られ、その是非が厳しく問われなくてはならなそうだ。
信条、信仰の自由があり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
 首相及び首相夫人についても、「教育勅語」を唱えさせるような森友学園の保守的教育方針に心情的に賛同し、鼓舞していたことは明らかだ。一議員ではなく、憲法や関連法規、基本的な教育政策を遵守すべき地位にありながら、国民の目の届かない所でそのような教育の場を拡大しようとしていたわけであるので、国会、国民に対し、説明をすべきであろう。
(2017.3.31.)
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対北朝鮮の米・韓‘首斬り作戦’はグロテスクな軍事演習!

2017-05-06 | Weblog
 シリーズ平成の本音ー対北朝鮮の米・韓‘首斬り作戦’はグロテスクな軍事演習!
 4月5日早朝、北朝鮮は2月、3月に続いてミサイル発射実験を行った。これに対し、ほとんどのマスコミは、北朝鮮の‘挑発行為’として非難した。また政府は、安全保障への脅威であり、また国連安保理決議に反する行為であり、‘断じて容認出来ない’として非難した。
 北朝鮮の今回のミサイル実験だけを取ってみればその通りだ。
 しかし他方で、米韓合同軍は、2016年から3月頃に北朝鮮の鼻先で「首斬り作戦(Beheading Operation)」と称する軍事演習を約1か月間実施しており、2017年も3月初旬より「首斬り作戦」を実施している。この軍事演習は毎年恒例のものではあるが、北朝鮮はこの米韓合同軍事演習に対し最大級の反発を繰り返してきている。米韓合同軍の北朝鮮の鼻先での軍事演習が北朝鮮への‘挑発’と映り、反発するのは不思議はない。その上2016年からの軍事演習の名称が北朝鮮の首脳に向けた「首斬り作戦(Beheading Operation)」であるので、この挑発に対し北朝鮮として強く反発して来ることは米韓両国にとっても想定内と見て良いであろう。
 南北朝鮮は現在も「休戦状態」であり戦争は終結していないので、どちらが先に挑発したかは直ちには言えないが、軍事的必要性は兎も角、「首斬り作戦(Beheading Operation)」とは何ともグロテスクで、野蛮な呼称ではなかろうか。北朝鮮でなくても反発するのは当然であると共に、国際社会がこのようなグロテスクで野蛮な軍事訓練や軍事行動を容認して良いものであろうか。カーボウイ時代のお尋ね者ハンテイングでもあるまいし、現在の国際社会において、特定国家によるこのような単独行動が許されて良いというものでもない。
 他方南北朝鮮間では戦争は終結していないので、北朝鮮の核・ミサイル開発が「休戦状態」を超える水準に達しているとの判断から、米国が北朝鮮の核・ミサイルを中心とする軍事拠点を攻撃することはあり得る。
 しかしそのための大きなハードルは、韓国の政治不安であろう。米国の北朝鮮攻撃には韓国の同意が不可欠だ。近く行われる韓国の大統領選挙で親北系の「共に民主党」の文候補が当選すれば北朝鮮攻撃は難しくなるという判断から、黄大統領代行の同意を取り付けて敢行できないことはないが、北朝鮮への軍事攻撃を行えば第2次朝鮮戦争に発展する可能性があり、戦争は長引くと予想されるので、次期大統領が選出される前の軍事攻撃は事実上難しそうだ。とすると軍事攻撃以外の強硬策となると予想される。
 ところで日本政府が‘断じて容認できない’としているが、それならば何をするのか、出来るのか。現自・公連立政権となって以来、核実験やミサイル実験のたびに、‘容認できない’旨繰り返してきているが、実態上有効な措置は講じられていない。せいぜい非難、抗議しているだけである。拉致者の奪還については何も結果を出せていない。被害者家族に言葉だけで期待を持たせているようだが、気の毒で仕方がない。(2017.4.6.)
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森友学園という国民洗脳モンスター!?

2017-05-06 | Weblog
平成の本音―森友学園という国民洗脳モンスター!?
 森友学園(籠池理事長)に国有地(大阪府豊中市)を破格の安値で払い下げた問題が混迷を深め、日本の政体や憲法にも係る重大な政治問題に発展する様相を呈し始めている。
 同学園の籠池理事長の国会招致が焦点となっていたが、‘民間人だから’という意味不明な理由で招致に反対していた自民党が、一転招致を了承し、3月23日に証人喚問という厳正な形で招致されることになった。
 籠池理事長が、3月16日、記者団に、建設中の小学校は多くの人の意志があり建設されているとしつつ、‘安倍首相から100万円の寄付を頂いている’ことを明らかにした。安倍首相側は、首相としては寄付していない、昭恵首相夫人についても、個人としてもない旨明らかにした。自民党側は、これを‘首相に対する侮辱’とし、喚問に応じることになったものだ。偽証すると罰則が掛かる証人喚問とすることで、発言に抑制を掛ける狙いもあろうが、新たな真実が語られる恐れもある。
 籠池理事長としては、小学校認可申請を取り下げるようにさせられたことや、財務省当局から10日間ほど身を隠しているように要請されるなど、これまで好意的に対応して来た行政当局等が手のひらを返したように圧力を掛けて来たのに対し、同理事長が発言している通り‘しっぽ切りになる’のではとの危機感を感じ、長期政権になることが期待されている首相との関係を前面に出し、首相の威光を借りて行政当局等を封じ込めようとする意図が見え隠れする。そもそも、国有財産の超格安取得や小学校建設認可などが嘗てない速さで進められたが、首相夫妻の名を最大限に使って行うことが出来たと見られるので、国会等での追及に晒された行政当局を黙らせるには、籠池理事長と距離を取り始めたものの、森友学園の教育方針、信条に好意的な首相の威光を借りるしかないと思っているのではなかろうか。
 森友学園籠池理事長は、国有地格安取得、小学校建設許可などを‘安倍晋三記念小学校’、‘安倍昭恵首相夫人名誉校長’などの名前を巧みに使用して進めたことは明らかだ。これらの名称は、国有地取得問題が国会等で追及された後首相側から取り下げられた。首相が‘自分たちが被害者’と主張していることにも一理はある。しかし首相夫妻は、森友学園の幼稚園児に明治天皇が公布した強固な天皇制を前提とした「教育勅語」を唱えさせ、これに沿った‘修身教育’的なしつけや保守思想を教えていることに共鳴し、幼稚園に止まらず、それを小学校等へと繋げたいとする願望に賛同しているようだ。
 森友学園問題は、不明朗、不適正な国有地払い下げや関連資料の廃棄という国有財産管理上の問題や「教育勅語」をはじめとする保守思想を教える幼稚園や義務教育課程の学校に対し政府の補助金その他の優遇、支援を与える問題など、行政上の公正さ、適正さがまず厳しく問われなくてはならない。
 しかし日本の将来にとって、これらの行政上の適性さの問題と勝るとも劣らない問題は、森友学園が目指している教育勅語や‘修身教育’などに象徴される復古的保守教育を判断力や批判力のない幼稚園児から始め、更に小・中学校へと広げようとする意図が根底にあることではなかろうか。
 これは天皇制を旧帝国時代に準ずる強固なものにしつつ、恒久的な制度としようとするもので、その擁護者としての保守勢力を利すると言えよう。しかしこのような教育を、判断力や批判力のない幼稚園児や継続して小・中学校生にまで行うことは、いわば洗脳教育に等しい。森友学園による小学校経営が認められていれば、そのような教育を支持、擁護している首相や首相夫人を始めとする新保守主義勢力の支持、協力を得てどんどん広がっていたかもしれない国民洗脳モンスターとなる可能性がある。
 「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、その中に‘公のために奉仕し’というくだりがあり、それ自体は理解されるところである。しかしその次に‘永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい’などとあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいとの勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制君主国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。信条、信仰の自由であり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、憲法で禁止されている‘国の宗教活動’には当たらないものの、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
 文科省が「教育勅語」を教えることは法令上問題ないなどとしたり、稲田防衛相が「教育勅語」にも良いことが書いてあるなどとしているが、行政当局や閣僚が廃止になった「勅語」を教えることを容認する姿勢は、現行憲法に照らし適正を欠くと見られ、その是非が厳正に問われなくてはならなそうだ。
 籠池理事長が、この小学校は‘いろいろな人の意思に支えられている’としつつ、首相よりの寄付金を同夫人を通じ得ている旨公表したが、小学校建設が首相及び同夫人の意思もあって進められているのだと言いたいのだろう。
 もし今回この問題が表面化せず小学校が建設されることになれば、中学校等の建設にも発展する可能性があり、そうなれば幼稚園児からの国民洗脳教育が根を下ろす可能性があった。それ自体問題であるが、このような日本の将来に関係する重要な事柄を、国民にきちんと知らせることなく、首相や首相夫人、保守政治家、教育者、知識人などの新保守主義グループにより、背後で密かに進められていることがより重大な問題であり、国民としてもこのような裏の動きを精査することが必要なのであろう。更にこのような政治的な勢力が、中央官庁や地方行政府による‘おもんぱかり行政’を作り出しているとすれば驚きだ。
 このような保守勢力が、天皇を憲法上の‘元首’に据えることを含め、憲法改正や女性宮家の創設などによる天皇制の恒久化などを進めていることは注目に値する。保守勢力は、政権維持、或いは保守党を常に日本政治の中心に据えるため、天皇制、或いは天皇の権威を利用することが出来る。それを背後で首相等が密かに進めようとしているのであれば公正を欠く。国民にきちんと説明して行うべきであろう。
 森友学園の各種行事で、籠池理事長が壇上に掛けてある国旗に敬礼をしている姿は、官邸の記者会見会場に掲揚してある国旗に敬礼する姿に似ている。諸外国でも、国旗は大切にされ、また愛着を持たれているが、軍隊の国旗掲揚等の際を除き、一々敬礼する姿は見られない。国旗を偶像化し、権威の象徴としているのだろうが、その先に天皇の権威があるのではなかろうか。国民はそのような権威主義的な国旗や特定政党を利する天皇制を望んでいるのだろうか。そうなれば一党独裁の専制国家的色彩が強くなり、天皇は、‘国民統合の象徴’ではなくなりそうだ。国民の選択次第であろう。(2017.3.20.)
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防衛省へ募る不信と不安

2017-05-06 | Weblog
シリーズ平成の本音―防衛省へ募る不信と不安
 政府は2012年より、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に100人規模の陸上自衛隊員を派遣しているが、政権が安定せず、治安状況の悪化と共に、派遣中断問題も検討対象となる。
 南スーダンは、2011年にスーダンが南北に分裂して独立したが、2013年12月に大統領派と副大統領派が対立し、その後両派の武力衝突が繰り返されており、事実上の‘内戦状態’とも言われている。その後2015年8月に両派間に和平合意がなされたが、2016年7月にジュバで両派間の大規模な戦闘が発生し、市民を含め数百人が死亡した。
 こうした状況を背景として、国会審議では民進党など野党から「PKO参加5原則」に照らし引き上げなどの検討が指摘されていた。自衛隊のPKO参加の前提条件として、(1)紛争当事者間での停戦合意、(2)日本の参加に現地政府や紛争当事者が同意、(3)中立の厳守、(4)以上のいずれかが満たされなければ撤収可能、及び(5)必要最小限の武器使用というPKO 5原則が定められている。
なお、武器の使用については、安全保障関連法(2015年9月)に基づく新任務として「駆けつけ警護」が付与され、これを盛り込んだ「実施計画」が閣議決定されている。‘駆けつけ警護’は、周辺で襲われた国連職員やNGO職員等の救援に向かう任務で、任務遂行のための武器使用が可能になる一方、生命の危険が高まる。
 国連平和維持活動に自衛隊を派遣する要件として最も重要な点は、表現の問題ではなく、紛争当事者間での停戦合意が維持されているか否かという実態であるだけに、南スーダンで武力衝突や戦闘行為があるか否かが大きな問題となる。
 ‘武力衝突’と‘戦闘’との間にはそれ程大きな差はない。前者は、状態を表現し、後者は行為を表現しているに過ぎず、どっちの表現が正しいかなどは不毛な議論だ。
 この問題で、技術的、法律的な問題は別として、将来の日本にとって深刻な点が2つある。
 一つは、防衛当局が国会を含め、情報や資料を隠し、また資料やデータを廃棄したなどと嘘をつくことではないだろうか。仮にも国会での答弁であるので、虚偽と分かれば処罰すべきであろう。現地部隊からの‘日々日報’は、情勢判断するための生の情報であると共に、今後派遣をされる場合の隊員にとって有用な情報となるので、短期に‘廃棄’すべき情報ではない。ましてや政府当局の公務上の情報は、いわゆる‘ヤバイ’情報でもない限り、3年間ほど、少なくても1年以上保管されているし、保管するのが義務であろう。当局が、勝手に短期に‘廃棄’するのは、ケースによっては証拠隠滅となる恐れがある。これは重大な問題であるので、厳重に調査し、適正な対処が必要だ。
 もう一つは、現場の部隊と本部との間で見解の差がある中で、防衛大臣が、国会や国民に誠実に事実を伝えないことだ。
 現場の部隊からは、‘戦闘’があった旨の報告があったのは明らかである。それを、防衛相は、国会での野党の質問に対し、‘戦闘’ではなく‘武力衝突’と答えた。更なる追及に対し、防衛相は、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とし、‘法律上の戦闘ではない’とした。要するに、憲法上問題になる表現は避けるというだけで、言葉をすり替えているに過ぎない。
 スーダン等で政府軍と反政府勢力が、衝突し、武器を持って射ち合えば‘戦闘’である。現場は生きるか死ぬかの状態であるので、日本の憲法や法律の問題などでは考える余裕はなし、その必要もない。
 現場の部隊と大臣を含む本部との間の情勢認識が違う場合、PKO活動を遂行する上で致命的な結果をもたらすことにもなる。本部が現地情勢を楽観し、国会や国民にそのように報告し、任務を継続させれば、現地の部隊に致命的な被害を与える恐れがあるばかりでなく、政府の姿勢が内外から問われる恐れがある。第2次世界戦争中、戦争遂行の中枢であった‘大本営’は、太平洋各地での戦闘で手柄のみを宣伝し、不利な情勢は流さず、戦争を続けて停戦の機会を逃し、また被害を拡大させた過去がある。‘大本営発表’として知られているが、今回の事件もそれに一脈通じるものがある。
 シビリアン・コントロールの確保は重要ではあるが、現場の部隊(制服組)と防衛相を中心とする幹部(背広組)や首相等との間に情勢認識や情勢判断に差異が存在することは望ましくない。特に部隊が発する情勢認識を首相や大臣が握りつぶし、また政権に都合の良い方に歪めて発表等することは、国家、国民の針路を誤らせることにもなり兼ねない。
 3月10日、政府は、本年5月で南スーダンの国連平和維持活動(PKO)参加している陸上自衛隊員を撤退させることを発表した。しかし、防衛大臣は、それはあくまでも‘任務達成のため’であり、‘治安情勢悪化のためではない’とした。最初に虚偽を発表するとその後の対応についてつじつまを合わせる必要があるのだろうが、こんなことでは防衛大臣も防衛相も信用は出来ない。
 国連のディエン事務総長特別顧問は、2016年12月7日にも、対立が続く南スーダンについて、‘衝突は継続し、大虐殺が起きる恐れが常に存在する’旨警告する声明を改めて発表した。危険な状況は続いているとみられ、治安の悪化は明らかなようだ。
 北東アジア情勢は、緊迫と混迷の度を増している。中国の軍備増強と海洋進出は一段と進んでいる。また中東和平は進展せず、イスラム過激派による国際テロはアフガニスタンや中東地域、一部アフリカ諸国に拡大し、その過程でイラク、シリアにイスラム国(IS)が台頭していると共に、国際テロの危険性は世界に拡散し、膨れ上がる難民問題等が欧州にも影を落としている。このような状況で、本来であれば日本も海・空を中心として防衛力を増強しなくてはならないが、情報隠しや情報の歪曲などをする現在の防衛省では、国民の理解は得られそうにない。
因みに稲田防衛相は、安倍首相同様、東条英機などの戦争責任者も祀られている靖国神社を‘防衛大臣’として毎年参拝している。2016年12月には、首相に同行して太平洋戦争に突入する直接の契機となったハワイのパールハーバーをオバマ大統領(当時)と共に訪問し、戦争体験を克服し和解したことを内外に示したが、その帰国直後、稲田防衛相は靖国神社を訪問した。何を懺悔し何を誓ったのか。同相は、首相やほとんどの閣僚がメンバーとなっている神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議など、神道や神社、天皇制を擁護する団体に属しているとされている。どのような宗教観、政治信条を持つかは各人の自由だが、政治家であれば、国民や有権者にそれを明らかにして活動し、また支持を集めるべきであろう。表舞台では建前やきれい事を言い、裏では特定の団体、グループを優遇するなど、不明朗且つ不誠実な活動を行っているとすれば、不気味ではある。(2017.3.14.)
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 マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)

2017-05-06 | Weblog
 マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、
取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選(その1で掲載)
 2、既成の世論調査の問題点                  (その1で掲載)
 3.既成政治の否定とポピュリズム
 トランプ大統領は、就任式の演説において、アメリカ第一主義を強調し、米国民の安全と雇用確保を優先課題としたが、それよりも先に重要としたことがある。それは、ワシントンD.C.における既成政治の打破であり、‘権力を国民の手に返す’ことであった。従って、従来米国政治で当然、或いは常識と考えられ、そのように報道されていたことが、トランプ政権により否定され、新たな政策が出されても不思議はない。既成政治の枠組みの中で報道していたマスメデイアが慌てるのも無理はない。トランプ大統領は、選挙期間中にそれらの考え方を全米各地で訴え、多くのマスメデイアがいぶかしがる中で、中西部と南部を中心として米国市民に支持され当選した。選挙結果を受けて主張してきたことを実施に移そうとしているので、マスメデイアがそれをいぶかしがり、批判し続けることは、選挙結果を受け入れないと言っているに等しく、それは米国自身の統治システムや大統領選挙制度の否定とも受け止められよう。
 既成政治を否定し、対決する姿勢であるので、既成政治の本拠地ワシントン、特に野党民主党グループの間では相対的に不人気であろうし、また民主党支持を表明しているマスメデイアには不人気であろう。
 既成政治、その支持基盤である既成社会や利益グループを打破することは容易ではない。トランプ政権は、少なくても政権発足時にはオバマ政権始めこれまでの政権で取られて来た政策や諸措置をひとまず否定し、新たな政策や措置を打ち出すことになる。対決色が鮮明となるが、もとより承知の上であり、反対があることも想定の範囲内である。同政権としては、当初は対決色を鮮明にし、反応や効果を見ながら調整して行くと予想される。米国では、特にマッチョ系の間ではこのような‘ファイテイング・スピリット’は、その結果は別として最終的に評価されることが多い。
 他方、このような姿勢に反対することは、既成政治や既成社会、既得権益打破に反対し、これを擁護することになる。またロビイストや利益団体に支えられた職業政治家以外の、財界人その他の民間人は大統領にはなれないとの前例を作ることにもなり兼ねない。
 トランプ大統領は、既成政治を打破し、‘権力を国民の手に返す’としているが、これ自体は民主主義を促進する上で望ましいことであろう。これを既成政治側や既成社会は、‘ポピュリズム’として軽蔑する傾向があるが、‘ポピュリズム’は時の流れではないだろうか。
 他方、トランプ政権側も、既成マスメデイアは既成社会や既得権益グループの一部であり、国際世論を含め、世論の重要な部分を構成していることを忘れることなく、合わせ聞く耳を持つことが必要なのであろう。むしろ自らの考えや政策を浸透させたいのであれば、マスメデイアを活用することが効果的であろう。また娘イヴァンカ・ブランドの製品の販売を停止した高級デパートを不公平としてトランプ氏がツイッター等で批判したが、どっちもどっちではあるが、自身及び家族の事業活動から手を引き、大統領としての公務に就いた現在、自身及び家族の事業への公の場でのコメントを控えるべきなのであろう。

 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決
 第2次世界大戦後、1991年12月のソ連邦の崩壊まで続いた東西冷戦構造は解消したが、米、欧とロシアとの対抗関係は残り、また中国の目覚ましい台頭という構図に変化し、新たな対応と国際秩序が必要とされている。
 だが戦後の国際的課題であった中東紛争の根源であるパレスチナ、イルラエル問題は解決するどころか、イスラム過激派による国際テロの拡大、イラクの長期の不安定とイラク、シリアでのイスラム国の台頭、難民の急増、アフリカ諸国のガバナンス低下と部族紛争の継続など、戦後の諸課題は対処療法で先延ばしされるだけで解決の見通しもない。国連も活動分野を広げ、財政的にも人員的にも膨張しているが、対症療法的であり、解決には結びついていない。アフリカの‘国連開発の10年’も60年以上継続しているにも拘わらず90年代は‘暗黒の10年’と言われ、アフリカの安定的な開発には程遠い。また難民問題も多くの地域で難民キャンプが恒常化し、増加の一途であるなど、諸問題の解決目途も立っていない。特に潘基文前国連事務総長時代では、シリアでの和平仲介にも失敗し、シリア難民は増え、拠出を募るだけで問題解決にはなっていない。北朝鮮の核、ミサイル開発についても、非難はするものの、時間の経過とともに実質的に開発が進む結果となっており、記憶に残る成果は見られない。
 米国は、カーター大統領(民主党)が人権、人道や民主主義分野での介入方針を打ち出し、その後の政権も大なり小なり介入政策を継続し、いわば‘世界の警察’的役割を行って来ているが、上記の通り、国連を含め既成の政治、外交は対症療法的な対応に終始し、問題解決を先延ばしし、ほとんどの問題が未解決のまま残っている。
 トランプ大統領は、従来の既成政治の対応を否定し、新たな対応に乗り出そうとしている。いわば‘建前’から‘本音’の政治、外交への転換とも言える。長い間既成政治の中で支持され、維持されて来た概念や政策であり、それがある意味で既成社会の‘常識’となっているだけに、その転換には批判や抵抗があろうが、トランプ政権としては批判があることは十分に想定しているので、必要に応じ調整はしつつも脱既成政治を進めるものと見られる。人道、人権、平等という概念は、世界で広く受け入れられているが、どこの国でも無制限に適用されてはおらず、また各国の発展段階や政治体制によって適用されている程度が異なるのが現実であろう。これが普遍的に適用されるべしというのが誰しも望むところであるが、それは‘建前’であり、各国には国境があり、一律普遍的に適用できないというのが現実であり、‘本音’であろう。グローバリゼーションも、国境がある国家関係が前提であり、世界連邦のような単一世界が形成され、共通の価値が同じようなレベルで適用されているわけでもない。
 このような反既成政治、既成の‘常識’に対する既成政治側の批判は継続されようが、上記の通り、国際問題において解決されていない問題や逆に深刻化や恒常化して解決の目途が立っていない課題があることは明らかである。トランプ政権の反既成政治路線を批判する前に、これら諸課題が時間ばかり掛けて何故解決されていないのか、政策転換の余地はないかを点検、精査することが望まれる。
 これは国連についても同様で、これまでの諸活動を再検討すると共に、費用対効果を重視し、必要に応じ抜本的な改革を検討すべきではないだろうか。‘国連開発の10年’はじめ、これまでのような活動を継続していても、組織、職員は増大し、分担金、拠出金も増加の一途を辿るだけで、問題解決には繋がらない可能性がある。それでも物事が改善して行けばよいが、これまで通りの対応では、多くが問題の先送りに終わり、何も解決しない恐れがある。
(2017.2.12.)(All Rights Reserved.)
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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)

2017-05-06 | Weblog
マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
 なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選
 英国は、EU(欧州連合)からの脱退か残留かを問う国民投票において、2016年6月23日、離脱支持が投票総数の約52%、1,740万票、残留が約48%、1,610万票で、EU離脱を選択した。投票率は約72%で、高い関心の中での選択と言えるが、同国の主要マスメデイアの世論調査や予想に反する結果となった。日本のマスメデイアも、いわゆるコメンテータや専門家等を含め、‘僅差ではあるが残留支持’が大方の見方であった。株式市場もそのようなマスメデイアの予想に基ついて楽観していたが、英国のEU離脱というショックウエーブが広がり株価やポンドは大幅に下落した。英国のEU離脱が日本のメデイアでは予想外の結果となり、市場は方向感覚を失い、欧州市場に追随した形だ。
 そして11月8日の米大統領選挙において、米国は主要マスメデイアの世論調査や予想に反し、共和党ドナルド・トランプ候補を次期大統領として選んだ。州ごとに選ばれた選挙人数は、トランプ氏が306人、民主党のクリントン前国務長官が232人をそれぞれ獲得し、トランプ候補が選挙人数では過半数を制した。投票率は、不人気同士の大統領選挙と言われていたが、54%台で、各候補の得票率はそれぞれ46%台、48%台であり、劣勢とされていた。トランプ氏が優勢との報道が流れると日本の株価は大幅に下落した。しかしトランプ次期大統領が、大統領補佐官はじめ大統領府の布陣に加え、財務長官や商務長官などの主要閣僚の人事を発表し始めると、米国の株価及びドルが大幅高となっており、‘トランプ・ショック’は‘トランプ効果’となった。そして1月20日の大統領就任後は、選挙戦中に約束した事項につき矢継ぎ早に大統領令が出されるたびにマスメデイアは一様に戸惑いを示した。選挙後のトランプ効果は後退し、トランプ不安が広がり、右往左往の状態となった。
 また2016年12月4日、イタリアで実施された憲法改正のための国民投票では、否決され、憲法改正を推進していたレンツィ首相が辞任した。目まぐるしく政権が変わるイタリアにおいて、政権を安定させるために上院の権限を大幅に縮小することを目的とした憲法改正への国民投票であったが、大衆の不満に率直な賛同を表明する人民主義政党(ポピュリズム)として行動する「五つ星運動」などに押され、予想に反する結果となった。
 世界の既成マスメデイアの世論調査は、何故予想に失敗したのか。
 2、既成の世論調査の問題点
 戦後欧米で採用されている世論調査は、多くの場合、無作為で一定数の回答者を選択し、回答があった数を基に賛否などの比率を出している。無作為で回答者を選択しているので、‘公平’、‘中立’とみなされているが、これまでの方法ではカバー出来ない層がある。
 1)まず回答率の問題がある。個々の調査により差はあるが、回答率はせいぜい60%前後で、概ね40%前後は無回答であるが、意見を持っていないということではない。賛否の比率等は回答者数で行われるが、4割前後ほどの無回答者の動向如何では、結論が大きく変わる可能性がある。
 調査は特定のメデイアが実施するが、各メデイアが既成政党を支持する等、一定の傾向を持っていることが多く、そのような偏向に好感を持っていない対象者は、調査に応じないであろう。一般的に有権者の約4割前後は無党派層、或いは無関心層であり、選挙やこのような世論調査を敬遠、拒否する傾向が強いが、意見を持っていないということではない。米国でも同様だ。他方調査メデイアに好意的な対象者を中心に回答することになり、調査メデイアの傾向がより強く反映されるのは当然のことであろう。事実、保守系メデイアが行う世論調査では、保守党支持が顕著に高くなる傾向があることは衆知のことだ。
 このような無党派層、無回答層を排除した統計は、世論の全体を反映せず、調査主体により偏向が出やすくなる。
 少なくても賛否の比率は、調査対象者(所在が分からなかった者を除く)をベースとして出すべきであろう。
 2)情報伝達メデイアの変化
 情報伝達の手段は、戦後マスメデイア化した新聞やテレビを媒体とするものから、デジタル媒体に移っている。既成の新聞やテレビは、巨大化、商業化すると共に、既成社会の一部となり、読者や視聴者に影響を与え、類似性の高い‘既成世論’とも言うべき世論やいわゆる‘常識’といわれる意見を形成している。従って、それがあたかも広く共有された‘常識’とみなされ、それと異なる意見を表明し難くしている。マスメデイアの調査に対し、そのマスメデイアが期待している意見に近い意見が述べられることが多いのもその一例であろう。またコメンテーターや専門家、有識者なども、マスメデイアが期待する意見に反しないコメント等をすることが多い。それに反することを言えば姿が消える。
 マスメデイアの更なる巨大化で、より多くの多様性を伝達すると思われたが、政治的には、特定政党を支持するか、支持政党の立場を代弁している場合が多いので、一定の方向性を持つと共に、類似性が高まることになり、それが繰り返し、繰り返し伝えられることにより、一定の世論や‘常識’が形成されて行く。そのメデイアによる調査では、結果が一定の方向性を持つことは不思議ではない。
 米国の、ニューヨークタイムズは民主党支持であり、ワシントンポストやウオールストリートジャーナルは共和党支持であるし、日本の主要都市新聞やテレビ局も同様である。
 このような中で、4割内外の無党派層や不回答層の意見は、選挙においても、マスメデイアによる世論調査などでも、ほとんど相手にされず、対象外とされて来たと言えよう。いわば場外世論だ。
 しかしデジタル情報手段の普及により、これらマスメデイアに依存することなく、ツイッター、フエイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、ラインなどのWebやSNSメデイアを通じ意見やコメントの発信、拡散が可能になった。その拡散力は瞬間的で広範に及ぶ場合がある。トランプ氏は、大統領候補の時からこれを巧みに活用していたと言えよう。
 従来気にも止められなかった無党派層や不回答層をどのように世論に反映させるかが今後の課題だ。そのため世論調査等の方法や手段も工夫が必要になっている。
 2016年当初は、不動産王の泡沫候補とマスメデイアを通じ報道されていたトランプ候補があれよあれよと言う間に共和党の大統領候補となり、そして3回のテレビ討論などを経て、クリントン候補優勢と諸‘世論調査’が伝えていたが、大統領選挙ではトランプ候補が選挙人の過半数を制した。そして選挙人による最終投票においては、トランプ支持の選挙人の何人かはクリントン候補に寝返るなどと報道されていたが、これら報道は見事に外れた。読者や視聴者にその理由を説明する責任がありそうだ。
 3.既成政治の否定とポピュリズム    (その2に掲載)
 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決 (その2に掲載)
 
(2017.2.17.)(All Rights Reserved.)
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賭博と麻薬まみれの読売ジャイアンツ!

2017-05-06 | Weblog
賭博と麻薬まみれの読売ジャイアンツ!
2015年11月、読売ジャイアンツの3人の投手が賭博に関与したことが明らかとなり、更に2016年3月、1投手の関与が明らかになったが、4月29日、警視庁は、笠原投手(事件発覚後契約解除)と開帳容疑で飲食店経営者を逮捕した。
これら4投手は、球団側から契約解除され、また野球連盟から資格停止処分を既に受けていたが、賭博事件として司直手に委ねられることになる。これより先、野球連盟は、4投手以外に関与した選手がいれば、処分を軽減するので名乗り出るように促していたが、名乗り出るものはいなかった。予想通りとも言える。
このような影響の大きな不祥事に対し、読売ジャイアンツの‘渡邉恒雄最高顧問、白石興二郎オーナー、桃井恒和球団会長の3首脳が辞任’した。しかし今回の選手の逮捕である。
このような複数の選手による事件が起これば、選手自身や監督責任のある球団幹部の処分に止まらず、チームの試合出場の自粛や出場停止処分が行われてもおかしくはないし、そのような論調があっても良いのであろう。高校野球や大学野球などでは、恐らくチームの出場の自粛や停止処分となろう。読売ジャイアンツの選手の賭博関与問題についてはそのような論調が起こっていない。野球連盟の対応も、選手の資格停止などだけで、実に手ぬるく映る。野球ビジネスを優先させるということなのだろうか。
読売ジャイアンツについては、清原氏の麻薬使用問題もある。同人については、有罪(執行猶予)となって罰を受けている。しかし同人の麻薬使用は、巨人軍の現役時代からで、読売ジャイアンツの同僚の投手にダッグアウトやロッカールームで麻薬の注文などをしていたようだ。野球賭博にしても麻薬にしても、いずれも複数の選手が関与しており、誰も知らなかったでは済まされない。特に読売ジャイアンツについては、最大手のマスコミの読売新聞グループが実質的なオーナーである。マスコミの論調や社会意識形成などへの影響も大きい。
球団首脳が球団の役職を辞任しても、親会社である読売新聞グループでの地位を未だに維持しているとすれば、社会的にはそれ程反省していないと映っても仕方がない。トカゲのしっぽ切りに終われば、それだけのことで終り、事件の不適切性についての諸選手や社会の意識への浸透は薄れ、いずれ同じような事件が繰り返されるだろう。新聞としての説得力も失う。
他方、バドミントン選手の闇賭博への出入りやスキー選手の海外での大麻吸引については、不適正であり厳重な注意や一定期間の謹慎処分、再教育は必要としても、プロ野球選手が野球賭博に関与したり、麻薬をやっているのとは重大さが異なる。出直す機会が与えられるべきであろうし、その方が抑止効果や教育効果が上がるであろう。(2016.4.29.)
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国民酷使政策を強行する自・公連立政権!?

2017-05-06 | Weblog
シリーズ平成の本音―国民酷使政策を強行する自・公連立政権!?
 11月25日、自民・公明両党は、年金支給額の抑制などを目的とした年金制度改革法案を日本維新の会を除く野党が反対する中で衆議院で強行採決し、今国会中に成立を図る方針だ。
 同法案は、年金支給額を従来の物価スライド制から賃金スライド制に変更するもので、産前産後期間の国民年金保険料の免除などの手直しも行われるが、
賃金が低下すると年金支給額も削減し、年金支給額を将来抑制することが最大大の制度的変更点だ。
 現在、自・公政権は、2013年以来、インフレ率2%を目標とする金融財政政策を実施し、インフレによる景気浮揚を推進して来ているが、インフレ・ターゲットにより物価スライド制による年金支給額が増加する恐れがある。
 他方現政権の下で、円安が進み、輸出産業を中心とする復調により大企業の賃金は若干上昇したものの、中小、零細企業の賃金にはそれ程変化はない一方、消費増税と日常物価の上昇により、実質所得は縮小ないし停滞状況にある。
 従ってこの‘年金改革案’は、特に中小、零細企業就労者にとっては‘年金改悪法案’となる可能性が強い。もともと年金支給額の抑制を目的としているのでそうなることは明らかだ。
 このような国民全体の福祉に関係する制度変更については、与党のみが独りよがりで強行に採択すれば良いというものではなく、与野党でより多くの国民の意見を汲み上げて制度設計することが望まれる。そもそも年金制度は、戦後長期に政権を維持していた自民党の下で形成され、そして今日では制度不安、年金不安が生じているので、同党は制度設計上の責任と年金破たんの責任を有していると言えよう。今回年金支給のルールの変更は、いわば後出しジャンケンをしているに等しい。現実的には野党の支持層に多いと見られる中小、零細企業就労者への影響が大きいので、野党とも十分協議をし、真に国民的な年金制度として行く努力が望まれる。こんなことをしていても、国民の年金不安は解消されない。逆に年金への安心感が低下し、年代を問わず消費を委縮させるであろう。
 更に政府、与党は、高齢者の医療負担を引き上げる意向であり、年長者であっても高所得者については自己負担の引き上げは仕方がないのかもしれない。しかし現在、厚労省は、‘70歳以上の医療費の自己負担の月額上限について、住民税を払っている全ての者を対象に加え、自己負担を引き上げる方針と伝えられている。
厚労省は、既に‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’については、医療費負担を‘現役並みの3割’に引き上げている。しかし、この‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’の370万円の年収には、年金所得が含まれており、就労で得た所得だけではないので‘現役世代並みの所得’とは言えない。国税庁の民間給与実態調査では、2013年度ベースで少し古いが、日本の平均給与収入は、男性511万円、女性272万円で、日本人全体では平均414万円であり、それよりもさらに低い370万円として‘現役世代並みの所得’としている上、年金所得を含めない所得では270万円内外の実質所得でしかない老齢者に‘現役並みみ’の‘3割’の負担をさせていることになる。老齢者に対し過酷な年収基準を付している。現自・公政権は、‘現役世代並み’と称する限界的な所得がある人に加え、年収約370万円未満でも住民税を支払っている約1200万人にも‘現役並みの3割’の自己負担を課そうとしている。老齢者からささやかな楽しみを奪い、過酷な負担を強いるものである。実質的には年金支給額の減額、天引きに等しい。これでは福祉政策ではなくて、国民酷使政策と言えないだろうか。
 自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2011年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
 そもそも社会保障の改善のために消費増税を実施したとされているので、国民の負担が増加することは仕方ないが、年金他の社会保障サービスの向上、充実が図られるのであればという期待感が国民サイドにあった。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付縮小」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
 年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
 国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また独立行政法人や特殊法人を含む公務員・準公務員の新規採用の段階的な削減など、定員の削減や給与の引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。事業経費については削減できないところは維持するということで良いが、ニーズのある事業は、民間事業に転換することにより維持出来る。国民のニーズのある事業であれば、事業化を望む企業家は多いであろう。
 この点は地方公共団体においても検討、実施されるべきであろう。2040年までに、全国1,748の市区町村の約3割が消滅するとの予測もあり、多くの地方の人口減は深刻で現実味がある。中央にしても地方にしても、少子高齢化対策の上で財政の節減が不可欠な対策と言えよう。
 与党は衆参両院で多数を占めており、抜本的な経費節減、無駄の削減を断行できる立場にありながら、過去3年半、その面での実績は見られない。政府、与党や官僚がそれを行わないのであれば、国民としては10%への再増税に徹底的に反対すると共に、節約と節税を図るしかなさそうだ。(2016.12.10.)
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