タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

クールビスにはパンを召し上がれ!?

2017年08月12日 | Weblog
ある県の教育研究会が、県の小学生の夏休み向けにある課題図書を推奨しました。
食育・食農教育の本だったのですが、その本によると「パン食は体を冷やす。お米は体を温める。」だそうです。

そうなのかー。じゃあ、夏はクールビスのためにも1日3食パンを食べようね。
エアコンも不要になって、パン食は環境保護の頼もしい味方だね!
地球に優しいエコでサスティナブルでロハスでエシカルな暮らしのために、夏は和食をやめてパンにしよう!

、じゃないですよねー!!と、和食大好きタミアは叫びます。

「パン食は体を冷やす」というお話の方が、疑似科学の匂いがプンプン漂います。

私の知る限り、パン食が体を冷やすことを医学的に証明した論文はありません。
民間療法でも、例えばアフガニスタンでは小麦は「熱い」食物に分類されています。メキシコではパンは「中性」(熱くも冷たくもないこと。)に分類しています(味の素食の文化センター「食の思想と行動」に収録された論文、「民間医療の中の食べもの」吉田集而先生、によります)。

つまり、パン食が体を冷やすという説は、血液型占いと同じく、日本など一部の国だけで信じられている迷信、と考えられるのです。ではなぜ日本ではパン食が体を冷やすと信じられているかを調べましたら・・・ああ、またかぁ。このブログでしばしば紹介している「食養」にたどり着きました。

食養思想の創始者である石塚左玄氏が明治時代に「カリウムの多い食品は体を冷やし、ナトリウムの多い食品は体を温める。小麦はカリウムを多く含むから、パン食は体を冷やす。」と唱えたのが始まりでした(参考図書「食医石塚左玄の食べもの健康法」ほか多数)。するとパンはカリウムがものすごく多いんでしょうか?

ということで、文科省の食品成分表で、食品100gに含有されるカリウム量(mg)を調べました。食パンと比較するのは、石塚先生が体を温める食品と指導した、玄米ご飯(食品成分表では「水稲めし/玄米」という名称で記載。)です。

水稲めし/玄米        95mg
食パン            97mg

あらら、ほとんど同じ値ですね。

ちなみに石塚先生が「体を温める」とした食品のカリウム含有量も調べてみました。
ダイコン(皮むき、生、おろし) 190mg
ニンジン(皮むき、ゆで) 240mg

・・・大変驚きますね。石塚先生は「カリウムの多い食品は体を冷やす」と唱えたのですが、石塚先生が「体を温める」と指導したダイコンやニンジンの方がパン食よりよっぽどカリウム含有量が多いのです。

公平のために、石塚先生が「体を冷やす」とした食品のデータも記します。
キュウリ(果実、生) 200mg
ナス(果実、ゆで) 180mg

これも驚きますね。ニンジンに比較したらむしろカリウムが少ない位です。おそらく明治時代の食品分析技術が低かったために、石塚先生は、いろいろと誤解したのでしょう。

以上のように現代の分析技術をもって考察すると、「カリウムが多いからパン食は体を冷やす」というのは勘違いなのです。それに、そもそも論としてカリウムが体を冷やすという前提が正しいなら、冷えが心配な方はまずダイコンやニンジンを避けるべきですね。

「それでもパン食は体を冷やす」と主張したい方は、でしたら、世のため人のため地球環境のために、夏は毎日ずーっとパン食で、エアコンも扇風機も止めて過ごしてくださいね。

(ご注意*「体が冷えるとはどういう現象か。何をもって冷えの指標とするのか。」は実はまだ医学的に明確に定義されていません。その上でこの文章は、仮に「体が冷える」が定義できたとしたらこんなおかしな論法になってしまう、ということを示しています。)


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