
F log
2 月 21 日火曜日。
五反田ゆうぽうとへ アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト B プロ初日を F 嫁と観に行きました。
拙ブログをご覧の皆様、特にバレエ関連でお越しの皆様は、F が アリーナ・コジョカル 好きであることはご承知かと思われます。
2005 年 4 月にブログを開設。
その 5 日後にはすでに コジョカルちゃんの記事 を書いております。
そんな F が観た彼女の初めてとなる座長公演。
観客を楽しませようする姿勢、バレエに対する情熱、いずれも素晴らしく感銘を受けた公演でした。
もう何年前になるのでしょう。
動いている彼女を最初に見たのは NHK の短い映像でした。

ロイヤル・バレエ期待の若手ダンサーとして紹介された二十歳そこそこのコジョカルちゃん。
このキラキラとした輝きにノックアウトされて以来、ずっと応援してきましたが
東京でグループ公演のリーダーを務めるまでになるとは感無量です。
ダンサー生命を脅かすほどの怪我から復帰して以降、彼女は大きく、強く、たくましくなりました。
もともと超がつくほどの完全主義者といわれていましたが、いまはもう何段階も上のステージにいるような気がします。
F がもっともそうした括りで捉えがちなのですが、小柄で可憐なだけのバレエダンサーではありません。
ゆるぎない…
言葉でいうならこうでしょうか。
古くからのバレエファンではないので、シルヴィ・ギエムのダンサー人生は後半しか知りません。
好き嫌いは別として、意識した時すでにギエムは別次元にいました。
そうした境地にコジョカルちゃんも到達しつつあるのではないでしょうか。

可愛らしさが先に立った ( あくまで素人目にはですが ) 時代。
上野の出待ちで コボーの影に隠れて恥ずかしそうにしていた コジョカルちゃんではもうありません。
舞踏手として充実の極みに達するであろう 30 代。
これからますます目が離せなくなるであろう事を確信させるドリーム・プロジェクトでありました。
終わり
…ってなわけにもいかないので簡単に各演目の感想を。
以前から公言していますが F は全幕大好きなので、ガラ公演にはあまり食指が動きません。
わからんちんで頑なな感想もありますがなにとぞご容赦願います。
第 1 部
ラリナ・ワルツ
アリーナ・コジョカル、ローレン・カスバートソン、ロベルタ・マルケス
ヨハン・コボー、スティーヴン・マックレイ、ワディム・ムンタギロフ、セルゲイ・ポルーニン
若干 25 歳のリアム・スカーレットがこの公演のために振付けた世界初演の作品ということです。
音楽はチャイコフスキーのワルツで間違いはないし、振付けもガラのオープニングらしい華やかなもの。
しかしながら衣装については若干の注文あります。
とくに女性陣のそれについては、コジョカルちゃん、マルケスの逞しい組 ( 失礼 ) とカスバートソンのお姫様に違和感がありました。
その違和感は体動にも表れ、逞しい組のキレに対してカスバートソンがほんの少し遅れるきらいがあり気になりました。
でもカスバートソンを観ているとニコニコしてきちゃうのは何故でしょうね。
RB は大事に育てたいんだろうな。
この作品、本公演だけでなく出演者数が多少変わっても対応できるだろうし、こうしたガラ公演では引き合いが多いのでは。
タランテラ
ロベルタ・マルケス、スティーヴン・マックレー
マルケスのイメージが大きく変わった一夜です。
第1回ミス村娘コンテスト世界大会 第 3 位という実績 ( 笑 ) は何処へ。
お人形さんのような大きな目が印象的な可愛らしいダンサーだと思ってましたがいつの間にか逞しい組に。
踊りの方も若干精彩を欠いていたような気がしました。ピルエットのときの手が変だったし。
でも明るい表情は魅力的でした。
A プロのゼンツァーノだとまた印象も違ったのかも。
対してマックレーの素晴らしいことといったら。
タンバリンという小道具を持っているにもかかわらず、マイナス面はいっさいなく急速なテンポにも完璧に追従。
2007 年の初来日 を観ましたが、いや見事なダンサーに成長したものです。
今回のプロジェクトが洗練されたものになったのは、マックレーに依るところが大きいと思いました。
くるみ割り人形よりグラン・パ・ド・ドゥ
ダリア・クリメントヴァ、ワディム・ムンタギロフ
21 歳の若きムンタギロフがベテランのクリメントヴァと踊ります。
テレホワ姐さんの胸を借りた若き日のルジマトフみたいw
イングリッシュ・ナショナル・バレエというカンパニーを日本で見るのはなかなか難しいです。
そういった意味でも貴重な体験でした。
クリメントヴァは正確なクラシックのテクニックで正統派というべきダンサーです。
ムンタギロフは身長もありノーブルな雰囲気も漂わせる大器ですね。
F 嫁曰く、素材は素晴らしいのでもう少しメイクや髪型に注力すれば雰囲気が垢抜けると思う‥とのことです。
世界中のカンパニーから引き合いがありそうですね。
古典の王子を究めて欲しいです。
ディアナとアクティオン
ローレン・カスバートソン、セルゲイ・ポルーニン
生粋の英国人ダンサー、ローレン・カスバートソンは楽しみにしていました。
他の出演者が小柄なのでカスバートソンが大きく見えます。
長い手足を存分に使った優美な踊り、にこやかな表情に好感を持ちました。
しかしこの演目にバッチリ合っていたかといえば意見の分かれるところです。
「 不思議の国のアリス 」 を BD で見たくなりました。
気を揉ませつつ無事にやって来たセルゲイ・ポルーニン。
確かにあり余る身体能力を存分に発揮したアクロバティックなムーブは見応えあります。
ジャンプは限りなく高いし、回転は火を噴くよう。
でもいかにも荒削りに思えてしまいます。
とくに指先など…
もっとも年齢を考えればまったくもってこれからのダンサーですよね。
だからこそ RB は辞めてもクラシックバレエは止めないでね。
椿姫より第3幕のパ・ド・ドゥ
アリーナ・コジョカル、アレクサンドル・リアブコ、三原淳子( ピアノ )
この演目のみピアノによる生演奏でした。
この演目のみを踊るために単身やって来て、3 日間踊ってカテコにも出ずサクッと帰るリアブコ仕事人過ぎますw
「 椿姫 」 という演目に思い入れはありませんが、ふたりのパ・ド・ドゥは圧巻でした。
生々しい肉体のぶつかり合い。
とくにからみつく独特の足さばきには目を奪われます。
B プロの中でも楽しみにしていた方が多いだろうし、実際に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。
でも個人的な意見として言わせていただければ、ノイマイヤー先生の振付けは好きではありません。
表面だけを撫でるダンスファンもどきが何を‥‥と思われるでしょうけれど。
無知をさらけ出すようで恥ずかしいのですが、F にとってこの演目はコンテンポラリーに思えます。
床を転げまわるような振付けがどうにも中途半端でしっくりこないのです。
コンテならコンテで上に載せたクローマのような 100 %抽象的振付けの方が納得できます。
ああ~全世界のノイマイヤーファン、「 椿姫 」 ファンを敵に回したなぁ。
ちなみに F 嫁とはバッサリ意見がわかれた所で、F 嫁は濃密な物語がビンビン伝わってくる名演と捉えています。
要するに F は ( 床に手をついたら負けよw的な ) 超古典的なクラシックの振付けが好きなわけで、
自身の許容範囲の狭さが本当に情けなくなります。
ショパンのピアノ曲はごく一部を除いてあまり好きではないので、この夜のピアノ演奏がどうだったかは評価できません。
ただ途中からコジョカルちゃんとリアブコの動きと息遣いに集中するあまり、ピアノの音がまったく聴こえなくなったことは事実です。
そんなセミ・ゾーン状態をぶち壊したのは B プロ初日最悪の出来事、携帯電話の着信音でした。
猛省を促すものであります。
OLYPUZ XZ-1

第 2 部
ザ・レッスン
ヨハン・コボー、アリーナ・コジョカル、ローレン・カスバートソン
F がいちばん楽しみにしていたのはこの演目です。
舞台上にちゃんとセットが用意されていたのは嬉しかったです。
初めて通して観た印象は思っていたより長いな、ということでした。
コボー先生の独壇場…と予想していましたが、ローレン・カスバートソンがよかったです。
無表情でコミカルな動きをするところがたまらなく不気味でした。
コジョカルちゃんは半時間ほど前のマルグリットから一変、無邪気で可愛らしいバレエを習う生徒になっていました。
コボー先生は圧巻でした。
まるで彼のために創造された世界のようなハマリぶり。
やはり良いダンサーは良い演技者でなければならないと痛感させられます。
映画音楽の作曲家が手がけた曲らしく非常に劇的で、短編映画を見たような気持ちになります。
ダンサーを選ぶ演目としてはその筆頭ともいえるでしょう。
ルドルフ役の後継者たるエドワード・ワトソンのバレエ教師を観てみたいです。
しかし自分で書いていて混乱して訳がわからなくなっています。
なぜ 「 椿姫 」 がダメで 「 ザ・レッスン 」 は好きなのでしょう。
この作品も正統なクラシックバレエとは到底いえないはずのものだろうに。
B プロ初日を観ていながら、こんなにも記事が遅くなったのはそのためなんです。
もうしばらく考え続けます。
( F 嫁から 「 ショパンが嫌いだからじゃないの? 」 とのツッコミあり )
このガラ公演でもなければ日本で観ることはそうとう難しかったであろう 「 ザ・レッスン 」
その 1 日を観られたことはたいへん幸せでした。
OLYPUZ XZ-1

第 3 部
ドン・キホーテ ディヴェルティスマン
アリーナ・コジョカル、ローレン・カスバートソン、ロベルタ・マルケス、ダリア・クリメントヴァ
ヨハン・コボー、セルゲイ・ポルーニン、スティーヴン・マックレー、ワディム・ムンタギロフ、東京バレエ団
ガラ公演のシメとしてお約束ともいえるドン・キホーテ。
全員がキトリでバジルという華やかな演目でした。
東バの露払いでまずコジョカルちゃん、コボーが登場。
コジョカルちゃんは黒赤で、ロイヤル伝統の長袖衣装でした。
プログラムに掲載されていたインタビューでコボーは言います。
「 ぼくがちょっとだけ年上なこともあって、二人のパートナーシップは年々貴重なものになっている… 」
その通りです。
今やコヴェントガーデンにおいてもコボーの踊りを観ることはなかなかできないようです。
アダージョだけとはいえ、ふたりのドン・キをじっくり観ることができたのは貴重な体験です。
こういった公演の最後だけにコジョカルちゃんもサービス精神たっぷりです。
止まる、止まる。
このふたりならではの片手リフトもバッチリ決めました。
その他の出演者もそれぞれ印象的なヴァリエーションを踊りました。
マックレー、ポルーニンの運動能力には唖然とさせられます。
ムンタギロフの背中の柔らかさも印象的でした。
コーダの頃には会場中が熱狂の渦でした。
男性陣が飛ぶ、飛ぶ。
女性陣は回る、回る。
中でもグランフェッテの前にコジョカルちゃんが回った超ゆっくりのイタフェにはど肝を抜かれました。
すげぇ!!!!!
最後はリアブコを除く出演者全員と東バメンバー全員が踊りまくっている間に緞帳が降りてきました。
ゆうぽうとの大ホールは熱狂的な歓声に包まれました。
はぁ~楽しかった。

“ アリーナ・コジョカルと仲間たち ” のガラ公演はバラエティーに富んでいてたいへん楽しかったです。
ダンサーとしての高みに登り、自身のグループ公演を大成功に導いたアリーナ・コジョカル。
何度目かの 「 ちゃんづけ封印 」 もチラつきましたw
しかしカーテンコールでキラキラしたオーラを撒き散らす彼女はやはり 「 コジョカルちゃん 」 でした。
いつまでもその可愛らしさを失わず、踊り手としては自身の信じる道を突き進んでもらいたいです。
いまの日本にこのステージを届けてくれて本当にありがとう。
おまけ
B プロしか観なかったうっかり者の F さん、F 嫁さんにアンケート。
質問 : A プロで 1 演目だけ観ることができるとしたら何を選びますか?
F 嫁
そんなもん 「 レ・リュタン 」 に決まっているでしょう。
チャーリー・シエム ( Vn ) を双眼鏡でガン見するのよw
F
「 ゼンツァーノの花祭り 」 だね。
コボー先生の脚さばきを観られるうちに観ておきたかった。
コジョカルちゃんとのペアだったらなお良かったが。
金の紙吹雪の舞う中コジョカルちゃんの座長公演が幕を閉じました。
カーテンコールではコボーが彼女の背中を押してはにかみつつも一人で姿を現しました。
会場は割れんばかりの拍手で全員が総立ちでした。
それはもう感無量でこちらまで泣きそうでした。
素晴らしいレポ、ほぼ同感です。(椿姫は大好きですが)
いはやは彼女は凄いバレリーナです。
超楽しかったです。Fさんにも...感謝!です。(^^
コジョカルのイタリアンフェッテには「ひえ~」でした(笑)そしてムンタギロフがジャンプ後の着地で大きく背中を反らす柔軟性も印象に残りました。
「ショパンが嫌いだからじゃないの? 」>という奥様の言葉、的を得ている気がします(^w^)私自身がバレエを観るにあたり音楽の影響を大きく受ける人なのでそう感じました。
携帯音・・・。慌てて切るならまだしも画面を開いて(光がもれる!)鳴らしたままゆっくりと会場の外に出て行きましたからね。もう私、怒りでしたよ(笑)
全6公演の最終日、盛り上がったでしょうね。
ガラ嫌いと意地を張ってみたものの、皆さんのレポを読ませていただき、
やはりAプロも観ればよかったと思っています。
舞踏人生の頂点に向かいつつあるコジョカルちゃんを今後も応援よろしくお願いします。
「椿姫」のくだりは読み飛ばしていただけたら幸いです(笑
当夜はお声がけいただきありがとうございました。
直前までF嫁と喧々諤々の議論中でしたので反応鈍くてすみませんでした。
出演者各人のダンスセンスがそれぞれ炸裂した素晴らしい公演でしたね。
「椿姫」に関しては仰るとおりかもしれません。
バレエは視覚と聴覚をフル稼働させることが必要な芸術ですよね。
その片方が好みでなければ全体の印象も変わってくるのでしょう。
携帯…お近くだったんですね。
そんなに大事な連絡待ちならバレエなんて観てる場合じゃないでしょうにね。