国際情勢の分析と予測

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米国が在韓米軍を撤収させ米韓同盟を解消、中国は金正日政権を転覆させ親中政権をたてて非核化を保障?

2006年11月23日 | 韓国・北朝鮮
●【社説】「米国の対北政策、パートナーを韓国から中国に変更」

 米国の時事週刊誌タイムの電子版は18日、ベトナム・ハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を分析し、「ブッシュ大統領、北朝鮮の核開発問題を解決するためのパートナーを変えた」という記事を掲載した。

 これは、「これまで韓国が担ってきた米国の同盟国としての役割を、中国が完全に引き継ぐことになった」という内容だ。タイム誌は「中国が金正日(キム・ジョンイル)の核開発に対し、より一層断固とた態度をとることになったのがよい便りだとすれば、表面的には米国の同盟国である韓国が、北朝鮮の核開発問題で志を同じくする米国、日本、中国のグループからはっきりと離脱したことは悪い便りだ。金正日は米国と韓国の仲を裂くのに成功した」と分析した。

 またニューヨークタイムズ誌は「ホワイトハウスの報道官は米国と日本、中国が北朝鮮に圧力を加える措置をとることで『志を同じくした』と話した。一方、同報道官は韓国についてはこうした表現を用いなかった」と伝えた。

 ハノイで行われた韓米首脳会談でブッシュ大統領は「韓国の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に対する支持と協力に感謝する」と語った。そして韓国政府の当局者はこれについて「韓米両首脳が心を通わせた。韓国のPSI不参加にともなう韓米摩擦の懸念は完全に解消された」と説明していた。

 ところがその実状は正反対だ。米国はすでに韓国を北朝鮮の核問題を解決する上でパートナーと見なしておらず、だからこそ韓国に否定的な話をする必要さえ感じていないのだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の関係者は中国と手を握り、米日両国による北朝鮮圧迫政策に対抗するとしたが、中国は韓国が差し出した手には目もくれないまま、米日両国と手を握ったのだ。

 さらには米国と中国の間で「米国が在韓米軍を撤収させ、韓米同盟を解消する代わりに、中国は金正日政権を転覆させ、親中国政権をたてて非核化を保障する」という「取引説がある」との話まで出回っている。

 現政権の関係者が3年9カ月間にわたって最優先してきた「自主」とかいうスローガンによって、韓国は自らの存続や将来を左右する北朝鮮の核問題、北朝鮮の政権問題から排除される結果を招いた。

 現在の韓国の立場は、100年前のそれとあまりにも似通ったものとなりつつある。当時の状況を招いたのが無能な王のためだったとしたら、現在の状況は誰の責任なのか、国民はみな知っている。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/23/20061123000012.html





【私のコメント】
 上記の朝鮮日報社説の『米国と中国の間で「米国が在韓米軍を撤収させ、韓米同盟を解消する代わりに、中国は金正日政権を転覆させ、親中国政権をたてて非核化を保障する」という「取引説がある」との話』は、実現の可能性は別として、米中両国にとって非常に利益の大きい政策である。
 米国は韓国に兵士を駐留させるという苦痛から解放される。これによって、米国は東アジアで大陸から全ての軍を撤退させることが出来るようになる。シーパワーである米国が朝鮮半島で中国と対決することによりランドパワーも兼ね備えることを余儀なくされたことは米国の軍事費を増大させ、結果的に米国の世界覇権の寿命を縮めることとなった。今後は純粋なシーパワーとして軍事費を削減し国力を温存することが出来るようになるだろう。
 この、朝鮮半島に軍事力を置くというシーパワーの苦悩を最初に引き受けたのは日本であった。決して大国ではなかった戦前の日本がシーパワーとランドパワーの両方を兼ね備えるのは到底不可能であったが、英国政府=国際金融資本の命令で日本はやむなく朝鮮半島に軍事的プレゼンスを置くことになった。そして、第二次大戦と朝鮮戦争を通じてこの苦行は米国にバックパッシングされたのである。

 中国、あるいはロシアにとっては、朝鮮半島にシーパワーの強国が軍事的プレゼンスを持つことは大きな脅威であった。中国やロシアなどの大陸の大国は常に隣国に侵略され滅亡させられる悪夢に怯えているからである。そして、この脅威が実際に戦争に結びつくことで当事国は多くの人命と金を失い、国際金融資本が大儲けしたのが日露戦争であった様に思う。日露戦争の後に米国のハリマン財閥が南満州鉄道の共同経営を日本に申し出たのは、日本という鵜に捕らせた満州という魚を国際金融資本が奪い取るという意図であったと思われる。国際金融資本が日本という国に目を付けて文明化させたのは、恐らく中国をインドやアフリカのように植民地化するための道具として使う目的であったのだろう。そして、中国全土が植民地化された暁には、「狡兎死して良狗烹らる」の諺どおりに日本は中国を侵略した犯罪国家の汚名を着せられて滅亡させられたことであろう。それを理解したからこそ、小村寿太郎外務大臣は、「血を流して手に入れた満州の権益を米国に売り渡すことはできない」という明目で南満州鉄道の共同経営案を拒否し、ここに日本と国際金融資本の決定的な対立が出現したのだと思われる。そして、日本が長期的に生存するための苦しい選択として、「米国と戦ってわざと負け、その後の東アジアでのシーパワーの軍事活動を全て米国にバックパッシングする」という戦略が採られたのだと想像する。

 日本に代わって米国が朝鮮半島南部に軍事的プレゼンスを置くようになった第二次大戦後も、中国とソ連は米国の軍事的脅威を感じていた。特に、国際金融資本が日本に命じて韓国を先進工業国化させたことは、途上国である中国にとっては非常に大きな脅威であった。それ故、韓国から中国を切り離すために北朝鮮と韓国の対立を激化させ、北朝鮮を支援し続けることを中国は余儀なくされた。

 米国も中国もホンネでは在韓米軍の撤収を望んでいる。金正日一族は裕福な生活さえ保障されれば亡命を希望することであろう。日本にとっても、日本の技術を盗み日本の工業製品市場を過剰生産で荒らす韓国が滅亡することは経済的に非常に有益である。米国の世界覇権消滅後の世界恐慌を解消するためには東アジアの工業生産の過剰生産の解消が必須であり、韓国という国の製造業が消滅することは日本にとっては理想的な解決策である。北朝鮮及び韓国からの難民の流出の防止さえ可能であれば、日本・中国・米国のいずれにとっても、「米国が在韓米軍を撤収させ、韓米同盟を解消する代わりに、中国は金正日政権を転覆させ、親中国政権をたてて非核化を保障、その後北朝鮮が韓国を吸収合併」というシナリオこそ最も理想的であろう。ロシアのみが中国に対抗する勢力としての朝鮮半島国家を希望する可能性のある国であるが、日本・中国・米国が一致する政策に反対するほどロシアは朝鮮半島政策に死活的利益を有さない。

 しかし、現状では米韓軍事同盟は厳然として存在する。それを一方的に米国が破棄することは、日米安保条約にも同様の疑念を招き日本を破滅させかねないので日本は同意できない。かなりの搦め手でなければこのシナリオの実現は不可能だろう。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-11-24 16:11:11
盧泰愚政権誕生以来、日韓、米韓関係共に悪化ないし緊張するようになりましたが、反面朝鮮半島を冷静に見詰めるリアリストを生んで来たようにも思います。韓国が親日政権であったとしたら、日本人にもかなり油断が生じたでしょうが、「拉致の事実確認は出来ない」などと口走る統一相の存在は、かの国との交渉が一筋縄ではいかない現実を直視させてくれます。

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