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職場のメンタルヘルス1

いま話題の「社内うつ」って?

最近、「社内うつ」が各誌で取り沙汰されています。この「社内うつ」、実はうつ病でなく軽い適応障害の一種なんだとか。

 職場には、様々なストレスの要因があります。セクハラやパワハラ、社内いじめ…。正社員にバカにされるフリーター、働きすぎでへとへとの正社員。ノルマに追われる新人、上司と部下の板挟みで頭を痛める管理職。ここに挙げたのはほんの一例ですが、職場でストレスを感じない人はほとんどいないのではないでしょうか。

「社内うつ」は、そうしたストレスのために、職場にいるときだけ気分が落ち込んでしまう状態(抑うつ状態と言う)を言います。職場でもプライベートでも抑うつ状態の続くうつ病とは、この点で区別されます。
でも「社内うつ」からうつ病に悪化するケースも少なくありません。「社内うつ」は常に私たちのプライベートを脅かしているのです。

「職場のメンヘル」がいつから悪化したのかを示す正確なデータは残念ながらありません。しかし、1998年以降、日本では毎年12,000人以上の労働者が自殺を図り亡くなっています。最近の厚生労働省の調査でも、中小企業の従業員の約1割が自殺を考えたことがあることが明らかになりました。うつ病に苦しむ労働者の数も、年々増えています。
 まさに多くの人々が認識しているように、「職場のメンタルヘルス」は危機に陥っています。そして、それは同時に、私たちの生活全体が危機に陥っていると言っても過言ではないのです。

○セルフケア・自己責任 

 しかし、「職場のメンタルヘルス」に対して、現在のところあまり有効な策は講じられていないように思います。
 例えば大手広告会社では、「職場のメンタルヘルス」と称して、ストレスを軽減する方法やメンタル面のコントロール法を社員に教えています。「社内うつ」の特集記事を見ても、ストレッチや「気の持ちよう」、コミュニケーションの方法が「ストレス対処法」として紹介されています。

 このように、「職場のメンタルヘルス」は社員のセルフケアの問題として認識されがちです。ここには、大きく2つの問題があります。

 1つ目は、社員のセルフケアは対処療法に過ぎず、「職場のメンタルヘルス」を向上させるにはあまりに不十分だということです。職場に遍在するストレスを減らそうとせずに社員の「打たれ強さ」だけを鍛えたところで、「職場のメンタルヘルス」は改善しえないに決まっています。
 それに、長時間労働やノルマのきつさについては、労働者のセルフケアだけでは絶対に解決できない問題です。働きすぎとうつ病との関連性は強く、厚生労働省も何度も勧告を出しています。「職場のメンタルヘルス」に対して企業は何をするのか、これこそを問わなければいけません。

 2つ目は、セルフケアだけで「職場のメンタルヘルス」を改善しようという発想が、どういう結果を生むかを考えればよくわかります。

 もし働いていて精神障害にかかった人がいた場合、会社はどう評価するでしょうか。「あの人はセルフケアをさぼっていた。」「自己管理能力が欠如している。」精神障害にかかったという事実に、更に労働者は苦しめられるのです。もし病気になっても誰も助けてくれないばかりか、逆に責められてしまう、ひどい場合には解雇されてしまうような職場では安心して働けるはずがありません。その不安感もまた、ストレスを生み出す要因に他ならないのです。

 結局のところ、「企業が何をするのか」を問わないメンタルヘルスケアは、労働者だけに責任を押し付けて、更に労働者を追い込んでしまいます。そうしているうちにストレッチも「義務」になり、休憩時間さえ息苦しいものになってしまうのです。

○「人を雇う」ことの責任を!
 
 メンタルヘルス対策が十分とは言えない現状において、どういうメンタルヘルスケアが望ましいのでしょうか。この問題を考えるに当たって、「人を雇う」ことに関わる責任を私たちは認識し直すべきだと思います。
 「人を雇う」ということは、契約した時間の間その人を自由に働かせることができる、という単純な話ではありません。他人の人生の一部を自分のものにするという、それだけで責任の重いことなのです。だから、法的にも様々な責任が課せられています。突然クビにしてはいけないとか、通勤途中に事故に遭ったら医療費を補償するとか。一言で言うなら、「人を雇うときにはそれなりの責任を背負って雇わなければならない」のです。
 
 「職場のメンタルヘルス」についても、同じことが言えます。労働者が快適に働けるような職場を、人を雇うならば会社は用意していないといけないのです。法律用語で、これを「職場環境配慮義務」と言います。
 もちろん、仕事をしている以上、ストレスを全く感じないことはないでしょう。でも、精神障害にかかるほどのストレスがある職場は、正常ではありません。正社員も非正規社員も、男性も女性も、快適な職場で働く権利は誰にも共通の権利です。

 このように、「職場のメンタルヘルス」の問題は、実は社員個人的の問題ばかりではないのです。「社内うつ」がこんなに広まっているのに会社の責任がなかなか問われずにいたのは、恐らくこの点が認識されていないことに一因があるでしょう。「社内うつ」を単に「思いつめやすい性格」とか「働きすぎ」のせいにする前に、職場の環境や会社の「働かせすぎ」を疑ってみる必要があるのではないでしょうか。「個人の」問題に封じ込めるのでは無く、文字通り「職場全体の」問題ととらえてこそ、「職場のメンタルヘルス」は向上しうるのです。
 
 ストレスのできるだけ少ない職場、そして万が一うつ病になった場合にも生活をしっかり保障してくれる会社。これは決して贅沢な注文ではなく、安心して働くための最低限の条件です。この最低限の条件をまずは確実にするためにも、POSSEは「職場のメンタルヘルス」に積極的に取り組んでいこうと思います。(つづく)




コメント ( 4 ) | Trackback ( 2 )
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コメント
 
 
 
Unknown (jim)
2007-08-30 13:43:51
 以前読んだ職場のいじめに関する本の中で、いじめへの対応策として上手な人間関係のさばき方や気の持ちようを変えることが挙げられていて、違和感を感じたことがあります。もちろんそういった対応の仕方が必要なときもあるかもしれませんが、本来はこの記事で書かれているように、快適な職場の実現が求められるべきですよね。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2007-09-01 16:35:38
職場のメンタルヘルスの問題って、やっぱりまだまだ労働問題として社会的に認知されていない感じがします。

 この前「職場いじめ」という新書を読みましたが、本の趣旨としては、いじめも労働問題といいたいんでしょうが、結局パワハラ問題も上司等の個人的なモラルや性格の問題にすりかえられていました。

 POSSEではメンタル面の問題も対応した労働手帳「しごとDIARY]を作成しているみたいなので、それをどんどん働いている人に職場で使ってもらい、メンタルヘルスの問題を社会的に知ってもらう運動をつくっていきたいですね。
 
 
 
Unknown (ing)
2007-09-09 03:37:01
コメントありがとうございました。


皆さんがコメントされているように、「メンタル」故になのか何なのかよくわかりませんが、どの本の内容も個人の処理で何とかしよう、という感じですね。

blogに画像を出している天笠さんの本が職場の問題としてメンヘルを捉えていて◎なので興味のある方は読んでみてください。天笠さんは精神科医で、過労死裁判で証人になったりしている人みたいですね。医学的な見地からも「職場のメンヘル」は自己責任では解決しえないことがよくわかります。
 
 
 
精神障害に労災認定を! (acceleration)
2007-09-24 09:29:59
僕は精神科医ですが、従来の産業精神保健の本や論文に書いてあるような対応ではどうしようもないところに来ていると日々の仕事で感じています。
あっさり首を切られる派遣社員の人(休んで回復する、ということができない!)。
相当な負担をかけられて発症が必然的と思える正社員の人、など。

後者のようなケースではどんどん労災申請することが必要だと痛感しています。
 
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