蓮華の咲き乱れる野原で生まれ

いままで継続して日記を書くことのなかった「わたし」が、また継続できないことを予感しつつはじめる日記です。

ムショーに映画の観たくなるとき(18)

2011-02-11 21:04:29 | diary
「ノルウェイの森」

とても大切にしている物語が映画化されるとき、それはいつも不安定さを伴う。
見ようか、見まいか。
世界的ベストセラーの映画化だけに上映前こそ騒がれたものの、ロングランなど望むべくもないこの作品に、迷う時間はあまり与えられなかった。
仕事帰り、スガシカオの唄う「夜空ノムコウ」を聴きながら(いったい何年ぶりだろう!)、“週末に映画館に行こう”と思い立ったわけだけれど、木曜の夜に足を運ぶとそれは思ったとおり上映終了の前日だった。

私はトラン・アン・ユン監督に心をとらえられた。
原作ファンからは賛否両論喧しいようだけれど、そんな議論、私には関係ない。
よき映画、よき映像、よき表現。それらは強張った心を慰撫してくれる。

丁寧に、親密に描かれるキズキの排ガス自殺。
浴室で独り震え、部屋の灯りを一つ一つ消していく、「神曲」の巡行を思わせるレイコさんのセックス。
無音の回想。
雪山に宙かぶ直子の黒い足。

原作を大切にするものとして、描かれなかったことを残念に思う場面もある。
(余命いくばくもない緑の父に、エウリピデスを語りつつキュウリを食べさせるシーンがもっとも好きだ)
でも、描かれなかったものよりも、ユン監督が描いてくれたものに、より震えた。

あと、菊地凛子の演技力にも驚いた。
直子が向こうに行ってしまう瞬間の表現に、胸の奥の柔らかい部分を逆撫でされる思いがした。
そして、ときどき彼女が可愛らしく見えることにもびっくり。

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