「ノルウェイの森」
とても大切にしている物語が映画化されるとき、それはいつも不安定さを伴う。
見ようか、見まいか。
世界的ベストセラーの映画化だけに上映前こそ騒がれたものの、ロングランなど望むべくもないこの作品に、迷う時間はあまり与えられなかった。
仕事帰り、スガシカオの唄う「夜空ノムコウ」を聴きながら(いったい何年ぶりだろう!)、“週末に映画館に行こう”と思い立ったわけだけれど、木曜の夜に足を運ぶとそれは思ったとおり上映終了の前日だった。
私はトラン・アン・ユン監督に心をとらえられた。
原作ファンからは賛否両論喧しいようだけれど、そんな議論、私には関係ない。
よき映画、よき映像、よき表現。それらは強張った心を慰撫してくれる。
丁寧に、親密に描かれるキズキの排ガス自殺。
浴室で独り震え、部屋の灯りを一つ一つ消していく、「神曲」の巡行を思わせるレイコさんのセックス。
無音の回想。
雪山に宙かぶ直子の黒い足。
原作を大切にするものとして、描かれなかったことを残念に思う場面もある。
(余命いくばくもない緑の父に、エウリピデスを語りつつキュウリを食べさせるシーンがもっとも好きだ)
でも、描かれなかったものよりも、ユン監督が描いてくれたものに、より震えた。
あと、菊地凛子の演技力にも驚いた。
直子が向こうに行ってしまう瞬間の表現に、胸の奥の柔らかい部分を逆撫でされる思いがした。
そして、ときどき彼女が可愛らしく見えることにもびっくり。
とても大切にしている物語が映画化されるとき、それはいつも不安定さを伴う。
見ようか、見まいか。
世界的ベストセラーの映画化だけに上映前こそ騒がれたものの、ロングランなど望むべくもないこの作品に、迷う時間はあまり与えられなかった。
仕事帰り、スガシカオの唄う「夜空ノムコウ」を聴きながら(いったい何年ぶりだろう!)、“週末に映画館に行こう”と思い立ったわけだけれど、木曜の夜に足を運ぶとそれは思ったとおり上映終了の前日だった。
私はトラン・アン・ユン監督に心をとらえられた。
原作ファンからは賛否両論喧しいようだけれど、そんな議論、私には関係ない。
よき映画、よき映像、よき表現。それらは強張った心を慰撫してくれる。
丁寧に、親密に描かれるキズキの排ガス自殺。
浴室で独り震え、部屋の灯りを一つ一つ消していく、「神曲」の巡行を思わせるレイコさんのセックス。
無音の回想。
雪山に宙かぶ直子の黒い足。
原作を大切にするものとして、描かれなかったことを残念に思う場面もある。
(余命いくばくもない緑の父に、エウリピデスを語りつつキュウリを食べさせるシーンがもっとも好きだ)
でも、描かれなかったものよりも、ユン監督が描いてくれたものに、より震えた。
あと、菊地凛子の演技力にも驚いた。
直子が向こうに行ってしまう瞬間の表現に、胸の奥の柔らかい部分を逆撫でされる思いがした。
そして、ときどき彼女が可愛らしく見えることにもびっくり。