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映画・演劇のレビュー

『エイリアン:コヴェナント』

2017-09-23 20:53:47 | 映画

リドリー・スコットがもう一度、『エイリアン』に挑んだ。何本も作られた続編(キャメロンに始まり、フィンチャー、ジュネという、そうそうたる監督たちが作ったそれぞれの作品は確かに面白かったけど)の続編ではなく、『プロメテウス』に続く前日譚である。これでリドリー・スコットによる『エイリアン』3部作はコンプリートされた。

 

哲学的な『プロメテウス』とは違い、今回は第1作のテイストを取り戻し、活劇であり、ハリウッドの娯楽映画にもちゃんとなっている。しかし、このダークなムードと厭世的な世界観はリドリー・スコットの宇宙だ。後味の悪さも含めて、とてもおもしろかった。ただ、どうしても、初めて『エイリアン』を見たときのあの衝撃には及ばないのも仕方ない話だが、事実だ。

同じものをもう1本作っても、意味はないし、レジェンドである前作を超えることは最初から不可能だったのだろう。本作前半の緊張感は半端ではない。だが、謎の惑星にやってきて、そこでエイリアンと出会うところから、お決まりの展開なのだけど、少し映画のテンポが落ちる。派手な戦いを描くにもかかわらず、いや、それゆえ、つまらなくなるのは、どういうことか。さらには、無事、逃げて、宇宙船に戻った後の、これもお決まりのエイリアンとの再度の戦いを描く部分も、前作の衝撃には及ばない。こういうストーリー展開は1作目のリメイクではないか、と思わせる。

 

だが、それでも、彼はこの1作を作りたいと思ったのだ。それは、なぜか? 

 

今年は彼のキャリアにおけるもう1本のレジェンドである『ブレードランナー』の続編もまもなく公開される。だが、こちらの方を彼は手掛けなかった。伝説のSF映画の金字塔である彼の2作品の続編がこの2017年同時公開される。その時、彼は2択問題で、「エイリアン」を選ぶ。そこには彼なりの思惑があったはずで、その答えはちゃんとこの映画の中にある。

 

人類がこの先、生き残るためには何が必要なのか。その答えのひとつが、ここには用意されてある。レプリカント(エイリアン)が支配する世界を描くのではなく、人類は自らの中にある悪意と戦うべく運命付けられていることを描こうとした。この映画の主人公はロボット(レプリカント同様)であり、これは彼らが生命の根源に挑む話なのだ。滅びゆく人類はその命運を宇宙に託すのだが、残念ながら、そこに新しい世界を築くことはできない。エイリアンと戦うのではなく、受け入れること、共存すること、その可能性を探るしか生き延びる術はない。この映画が描こうとしたのはそういうことではないか。

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