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映画・演劇のレビュー

競泳水着 大阪部『Nice to meet you, My old friend』

2016-10-29 20:37:50 | 演劇
実に痛い芝居だ。13歳の頃、感じた想い。それが30歳に手が届く今、今もなお自分を支配している。友だちなんか一人もなくていい、なんて言えるのは友だちがちゃんといるから。彼女には誰もいなかった。いつもひとりぼっちだった。自分だけが特別で、みんなと自分は違うから。そんないいわけでごまかすしかなかった。モデルとして活躍していたから、という理由があるけど、でも、まだ子供で本当はみんなと一緒にいたかった。



僕が見たのはBチームのヴァージョンで、主人公の玲奈を山岡美穂が演じる。背が高くて奇麗なのに、人を寄せ付けない暗さを内面に抱え持つ。そんな彼女の内に押し込んだコンプレックスが表出していく過程がとてもスリリングに描かれる。山岡さんはこの危うい存在を実に上手く表現した。とても真面目で暗い内面をむき出しにしていく。結果的にとても重い芝居になる。登場人物は5人だけ。TV番組で、母校訪問というような企画。あまり売れてないタレントである彼女と、マネージャー。TVクルー。母校の先生。中学時代の親友という設定で雇われた女性。



架空の友だちが、本当のともだちになるかもしれない。未来はまだ始まっていない。この先にある。そんな結末が素晴らしい。



古い友だちとの再会という架空の物語を作る。これはだだの偽物だ。そのはずだった。しかし、彼女は自分の過去を知っている。彼女はいったい何者なのか。芝居自体は、ちょっとしたミステリー仕立てだ。



見えているものが、正しいとは限らない。見えていない、いなかったところに、真実があったかもしれない。自分はひとりなんかじゃない。自分を見てくれていた人がいた。でも、彼女は自分に声をかけることもできなかった。だから、出会えなかった。過去の思い出の中に埋もれていた友だち。マグリットの絵のように、何が正しくて何がそうじゃないのかは、わからない。表と裏が一瞬で反転していく。カメラで撮るという行為で作られるドラマ。ドキュメンタリーのはずの番組がフェイクで、フェイクの中から真実が明らかになる。誰もいない美術室が舞台だ。美術の先生はマグリットが好きで、美術室にはさりげなく、飾られてある。



誰も友だちがいない13歳。きれいだったから、みんなから羨ましがられる。嫉まれる。モデルの仕事をしていて、芸能界で活躍している。そうすることで、中学という日常世界からスポイルされていく。彼女の原風景が今の虚構の中から浮かび上がるだけではなく、そこから確かな未来が紡がれていく。感動的なお話だった。
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