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映画・演劇のレビュー

川村元気『四月になれば彼女は』

2017-03-15 02:04:19 | その他
正直言ってうさんくさい、と思った。『世界から猫が消えたなら』を読んだとき、あざとすぎて無理、と思った。でも、映画になった作品のほうは監督が彼ではないからかもしれないけど、とても静かないい映画だと思えた。あの原作から、こういう映画ができるのだ、と感心した。川村元気は映画監督ではない。プロデューサーなのだけど、作家としても活躍している。そこにはプロデューサーとしての、リサーチされた観客の嗜好に合わせたようなものが感じられて、そこがなんだかなぁ、と思わせる。でも、彼の嗅覚や勘は確かでヒット作を連発させていることからも明らかだ。才能がある。興行的にも作品の評価でも認められている。成功を絵にかいたような人だ。だから嫉妬から色眼鏡で見てしまうのかもしれない。(なんで、そこで自分と比較しているのか、訳が分からないけど)昨年『君の名は』を大ヒットとさせてしまった仕掛け人である。今回のこの本の帯には新海誠の応援メッセージが乗せられてあるのにも、なんだかなぁ、と思い読み始めた。



でも、読み終えた今は、もうここまで書いてきたことなんか、忘れた。それくらいにこの本の世界にのめりこめたのだ。まぁ、確かにやはりあざといけど、そこが彼の個性だと思う。



1年間のできごと。4月に昔つきあっていた彼女から9年ぶりの手紙が届く。忘れていたわけではない。ずっと心の中には彼女がいた。だから、今も結婚できずにいた。4年前から付き合っている彼女がいる。彼女とは今年結婚式を挙げる予定で準備している。でも、同棲もしているその彼女とは2年前からセックスはない。愛していないわけではない。好きだから結婚する。しかしそこには熱い想いはない。結婚は生活だから、と思う。しかし、そうじゃないことは自分が一番よく知っている。



その日から、1年後までが12章仕立てで描かれる。もちろん、4月から1ヶ月刻みで時を追っていきながら、いろんなことがはっきりしてくる。そこで描かれるストーリーが大事なのではない。彼の心の軌跡をしっかり見つめるべきなのだ。そして、たどりつく場所。そこで待つ人に再会し、新しい一歩を踏み出すまで。



川村元気のあざとさ。その先にあるものが胸に突き刺さる。これはとてもいい小説だった。でも、これも映画にしてしまうのかなぁ。まぁ、いいけど。
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