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映画・演劇のレビュー

『一頁台北』(『Au Revoir Taipei』)

2010-09-23 22:23:09 | 映画
 台北にある大きな本屋が舞台になる。何度か行ったことがあるところなので、それだけでこの映画になんだか親しみが感じられる。主人公はその本屋の店員と、そこで座り読み(台湾の人は本屋で平気で地べたに座り込んでいる!)している男。そんなほとんど見知らぬ男女が、偶然から、台北の街を走り抜けることになる青春映画。

 台北の街が生き生きと捉えられるのがいい。期待した映画とはちょっと感じが違って、少しがっかりしたが、それでもこれはこれで悪くはない。ポスターとスチルから好き勝手にイメージを作っていただけなので、仕方ない。もっと可愛い『アメリ』タイプの映画だと思っていた。少しシリアス過ぎて、予想と違う。でも、原色を多用した色彩設計とか、雰囲気は似ている気もする。

 本屋さんを舞台にした恋愛ものだと思ったのに、主人公たちはヤクザに追われて、手に手を取って逃げまどう話になったりもする。後半、彼女が反撃に出るのがすごい。銃を手にしたチンピラ(高校生だが)も出てきて、刑事(彼の家庭も描かれる。彼は、新妻とはなんだか上手くいってないようだ)も当然追いかけてくるし、ヤクザから渡されたものを巡るいざこざが話の中心にあるのだが、残念ながら言葉がわからない(現地で購入したDVDなので、日本語字幕はない!)から、詳しいことは理解できない。

 夜市の雑踏を手に手を取って走り抜ける疾走感が心地よい。夜の公園でダンスを踊る人たちに紛れて一緒に踊ったり、バイクを走らせたり、夜の街を右往左往する2人の姿は見ていて爽快だ。見慣れた風景が、彼女(彼)と二人なら違って見える。そんな経験って誰にもあるはずだ。台北の街がまるで旅行者になったように新鮮に描かれる。たった一夜の出来事を通して二人の心が接近していく様は、よくあるパターンなのだが、爽やかでいい。こういうたわいもない青春映画に台湾の若者が熱狂したのって、なんだかわかる気がした。そして、それってなんだか可愛い。85分と短めの上映時間もいい。監督は陳駿霖。日本では公開されるのかなぁ。ちょっと微妙。ラストの本屋で踊るシーンをもっと見たかった。



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