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映画・演劇のレビュー

プロトテアトル『MARCH 行進曲』

2017-05-03 18:46:23 | 演劇

プロトテアトル『MARCH 行進曲』

とても爽やかで気持ちのいい作品だ。大切な人の死を通して、生きる道を見失ってしまった男が、友人たちの助けを借りて再生していく姿を描く、なんて書くと、なんかベタで臭いヒューマンドラマみたいだけど、それを象徴的な舞台空間で、こういうふうに抽象的に描くと、なんだかとても素直に受け入れられる。

 

主人公の男は、どこにいこうとしているのか、わからない道の途上で、夢を見る。これが現実なのか、幻想なのかもわからない。とりあえず、今、どこに向かおうとしているのかもわからない。どこまで行けばいいのか。どこに向かっているのか。左右、前後、自分はいったいどちらに向かっていたのか。やがて、かすかな音で、曲が聞こえてくる。その響きに耳を傾ける。

 

アクティング・エリアは1本の道で、それを左右にある客席から観客である我々は見つめることになる。(だからこれは、対面舞台だ)正面には通常の舞台となる空間も確かにあるけど、そこではほとんど演じられない。前と後ろの区分はある。当然舞台側が前だ。だがそれすら曖昧で、本来なら花道として使用されるべき空間で、芝居の8割以上が展開する。          

ふたりの友人が彼を導く。ひとりは女で、ひとりは男だ。彼らは別々に登場するから、3人が一緒になることはない。どちらの友人といる時間が現実か、わからない。さらには、ほう二人の友人たちも登場する。彼らの優しさに包まれて、やがて、主人公は恋人の死を乗り越えていく。

 

これは決してストレートではないし、どこに帰着するのかも見えない芝居だ。なのに、とても素直でわかりやすい。それは作、演出のFOペレイラ宏一朗さんの誠実で一本気な性格のせいだろう。彼のストレートさが、この紆余曲折の迷宮から確かな方向性を指し示すからだ。見終えた後、モヤモヤすることもなく、すっきりとした気分にさせてくれる。こんな作品はなかなかない。

 

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