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映画・演劇のレビュー

『世界は、ときどき美しい』

2007-11-08 23:43:13 | 映画
 たった10分から15分程度の短編映画が5本並んでいる。しかも、8ミリフイルムで撮った映像はきめが粗くあらくて、せつなげだ。映画としてはあまりにか細くて、すぐに消えてしまいそうで、はかない。

 御法川修監督のデビュー作である。彼はこの素材を活かすために、敢えて8ミリ撮りを強行した。この試みは見事に成功している。

 5人の男女の5つの小さな物語は、ほぼ全てが主人公のモノローグにより綴られていく。ドラマらしいドラマもない。彼らが見慣れた風景をカメラは撮る。彼らのいつもの姿をカメラは追う。彼らの言葉は特別なことは何も語らない。ただいつもの日々の感慨や、今の自分たちの心境が訥々と述べられていくだけだ。

 11年間、画家たちのヌードモデルを続けてきて38歳になった女性(松田美由紀)の今を描くタイトルロール作品。モノクロで、酒場を渡り歩くのんだくれの初老のオヤジ(柄本明)の酒場でに時間を描く『バーフライ』。若い男女のベッドでの時間を、闇の中で光を放つジュースの自動販売機を象徴的に絡めて描く『彼女の好きな孤独』。松田龍平のまじめな天文学者と彼の恋人が妊娠し、やがて子供を産むまでの時間を描く『スナフキン・リバティー』。それぞれの短編が世界の一断面を見事に切り取る。

 そして、最後は市川実日子が実家で過ごす週末を描く『生きるためのいくつかの理由』。死んだ父の墓参りにみんなで行く。母と兄と自分。3人で食べる夕食。夜、兄に駅まで車で送ってもらう。ひとり暮らしの部屋に戻ると、間違い電話がかかってくる。「こんばんわ、元気ですか」と女の声。彼女は急に母の声が聞きたくなる。「おかあさん、どういう理由でわたしの名前をつけたの?」なんていうどうでもいいことを話する時間。

 ここに描かれた5つのお話にもならないような生活の断片は、さりげなければさりげないほど心に深く沁みてくる。確かにそうだ。人生は、時々、とんでもなく美しく輝く。そのことに気付かないくらいに、さりげなく。
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1 コメント

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感想をありがとうございます ♪ (映画 『世界はときどき美しい』 公式ブログ)
2007-12-14 00:36:54
映画 『世界はときどき美しい』 公式ブログを
運営している者です。
当方で、こちらの記事を紹介させていただきました。
勝手にリンクさせていただいたことをお許しください。
作品へのすてきな感想を喜んでいます。
ありがとうございました。
引き続き、応援してください。

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