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映画・演劇のレビュー

角田光代『三月の招待状』

2008-10-18 09:46:35 | その他
 かなりきつい話だ。まぁ、角田光代なんだからしかたない。35歳。いつまでも学生時代のままではいられない。だが、いつまで経ってもあの頃のまま。そんな自分たちに大概うんざりしている。そんな5人の男女たちの物語。

 離婚式なんていう大袈裟でわけのわからないイベントを開催する。そこに昔ながらの仲間たちが集まってくる。みんなは2人の晴れの門出(!)を祝うために来た。しゃれでしかない。だが、本気でもある。裕美子と正道。25歳で結婚して、約10年。18歳で出会い何度もいろんなことがあり、15年以上の歳月が2人の間には流れた。仲間たちはそんな2人のことをよく知っている。この日は大学時代の友人たちとの同窓会でもある。そんな1日。ここからスタートする約1年間のドラマだ。

 最後は充留の結婚式のシーンで終わる。その間の1年2ヶ月。大学時代を共に過ごした5人の男女のそれぞれの今が描かれていく。読みながら暗い気分になる。こんなはずじゃなかった、と思う。もっと未来は輝いているはずだった。もちろん決しててノーテンキに考えていたわけではない。だが、いろんなことがありながらもなんとか上手く行く、そして、笑っていられる、そんな風に思っていた。だが、実際はそんな簡単なものではない。

 ここで描かれることは別に悲惨な生活ではない。それどころかありきたりで、でも、けっこう幸福にみえるくらいだ。いろんな問題はあるが、みんなそこそこ上手く生きている。だが、なんだか満たされない。

 読み終えて、こんな内容なのにほんの少しいい気分だった。諦めたわけではない。だが、人生なんてこんなものかもしれない、と思う。それを受け入れた上で、もう少しいいことを期待しよう。毎日の生活なんか、子供の頃思い描いたような理想とは程遠い。思い通りには行かないことばかりだ。だが、それで諦めるのはまだ早い。何度繰り返してもきっと同じ事をしてしまう。だから、それでいいのだ。そんな気分にさせられる小説だ。人を羨んでも意味ない。ラストで充留が、同棲してきた5歳以上年下の男の子と結婚することは、これはこれでひとつの旅立ちなのである。喜ばしいことだ。
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