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映画・演劇のレビュー

『夜空はいつでも最高密度の青空だ』

2017-06-22 21:01:13 | 映画

 

石井裕也監督最新作。『本を編む』『バンクーバーの朝日』でメジャー映画でも成功を収めた彼が再び、マイナーな映画に戻り、これまでの集大成となる傑作を作る。この小さな映画の描く寂しさは今を生きることの痛みだ。

 

ふたりの男女が東京の町をさすらうように生きる日々を通して、僕たちはこれからどこにむかっていくのかを考えさせられる。傷をなめ合うように寄り添うのではない。ふたりの距離感は、人がひとりひとりとして生きているという当たり前のことを教えてくれる。彼らの距離がなかなか詰まらないのが、こんなにも心地よい。安易に恋愛なんかしない。でも、それぞれお互いを必要とすることが徐々にわかってくる。わかるからこそ、求めない。それは失うことが怖いからだけではない。

 

誰かにもたれることで、立っていられるなんて、そんな弱さはいらない。未来はまるで見えないけど、今、今日1日を生き抜くことで、明日はやってくる。毎日はその積み重なりに過ぎない。嫌な予感がする、という。でも、そんなことでひるんでいられない。

 

東京の人混みの中で、出会う。たまたま何度となく。普通あり得ない。映画だから、というのでない。そんな奇跡もまた、あるから、面白い、と思う。孤独と不安ばかりの世界で、たったひとつそんな奇跡があり、それを運命だとか言うことなく、ただ受け入れる。

 

石橋静河がすばらしい。彼女の意志の強そうな顔。それは周囲を拒絶する。固い殻を纏う。傷つきたくないからだ。強さではなく、弱さにつながる。人なつっこそうで、でも、その実、同じように殻を纏う池松壮亮。いつもマシンガンのようにしゃべるくせに、無口になると、頑なで、まるでしゃべらない。そんなふたりと、その周囲の人たちの点描。突然死んでしまう松田龍平。今にも死にそうなのに何とか毎日を生きる田中哲司や、フィリピンからの出稼ぎの青年。この強大な都市の中で埋もれてしまいそうな彼らと、一人同士の主人公であるふたり。とても寂しい映画だ。だから、この映画は信じられる。ラストの奇跡も安易ではない、この大きな街ではそんなことも時にはある。

 

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