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映画・演劇のレビュー

レトルト内閣『オフィス座の怪人』

2017-03-15 01:58:40 | 演劇
もうこれは明らかに『オペラ座の怪人』のパロディなのだが、(数年前にこの同じ近鉄アート館で同じコンセプトの芝居をスクエアもしていたけど、)それを三名刺繍さんがしたならどうなるのか。興味津々で見た。アート館の3周年企画である「VIVA!ミュージックアート館2017」の一環としての公演である。普段のレトルト内閣の本公演とはいささか趣を異にするのは仕方ない。イベント企画だから、。準備期間も十分じゃないし、ここ数年の彼女の作品とは少しタッチも変わる。だからこそ、そこには意外性のある「新しい何か」が期待できる。



と、思ったのだが、作品は少し残念な結果となってしまった。要するに全体のバランスが悪すぎるのだ。もっとファントムの心の闇を描くべきだった。作品全体はコメディタッチの軽やかな作品にするのでもいいけれど、その底には悲劇と恐怖が欲しい。



企業で働くエリートサラリーマンを主人公にした。なんと今回は珍しく川内信弥が主人公だ。そして彼を導く怪人を坂口修一が演じる。このコンビを中心にしてお話は展開する。



企業戦士のお話である。コメディ仕立にするのなら、60年代なら植木等演じる無責任男の調子のいい出世物語となるパターンか。(80年代?なら時任三郎の24時間戦う男か?)でも、21世紀の今、サラリーマンをどう描くのか。結構難しいのではないか。シリアスにはしないというのが前提なのだが、今の時代はそれほど単純には描けない。エリートたちの権力闘争に怪人を絡ませるのだが、作品全体が少し単調になりすぎた。この手の作品には必須のロマンスがほとんどないのもつらい。出来ない社員、実は社長の娘、というのが出てくるけど、あまりお話には絡まない。



坂口さんをファントムに持ってきたのは正解だったが、彼のキャラクターを生かし切れていない。主役を演じる川内さんも新鮮だったけど、ドラマがあまりに表層的過ぎたから、複雑な内面も表現できる彼をここにわざわざ持ってきた意味がない。心弾む音楽劇だから、あまり暗い話にはできないことはわかっているけど、いかんせん全体のバランスが悪すぎた。笑いと恐怖をブレンドして、オリジナルが「オペラ座」という場所を活かしたように、この会社(タワービル)という空間を活かして欲しかった。ソフトウェア業界で世界第3位のシェァを誇る大企業という設定も生かし切れていない。ジョニー・トー監督のミュージカル映画『香港、華麗なるオフィスライフ』くらいの徹底したスタイリッシュさも欲しかった。



作品自体は決してつまらないわけではないけど、レトルト内閣としては物足りないのだ。ファントムの助けを借りて出世街道を上りつめる男という物語も悪いわけではないけど、やはりこれには悲劇のカタルシスがあったほうがいい気がするし、そのほうが三名さんらしい気がするのだ。(まぁ、僕の勝手な意見だけど)結局はそこに尽きる。
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