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映画・演劇のレビュー

エイチエムピー・シアターカンパニー『壁の中の鼠』

2016-10-19 01:40:22 | 演劇
2つのバージョンの見事な対比。全く違ったコンセプトでまとめあげられた同じ台本。2つの二人の世界がこの世界のすべてを普遍化する。まるで違う芝居にして見せ切った演出の笠井さんの力量にはいつもながら感服する。特に2つ目のリアリズム演出は、いつもの象徴的でスタイリッシュな笠井演出とは違い驚かされる。



いつもながらのスタイルによる1本目の作品のすぐ後だったので、始まった時には「大丈夫か、このパターンで」と心配になったけど、まったく杞憂に終わる。それどころか、2本の鮮やかな対比により同じ話がシチュエーションの差で全く違う世界のように目に映る。2作品連続上演の企画意図はそこで鮮明になる。



深津さんの戯曲を使って、そこに提示された小さな世界をある種の普遍へと、そして、この世界の在り方にすら還元していく。女二人が暮す小さな世界の内と外。ほんの小1時間程の時間を切り取り(きっときっちり1時間で上演するように作られてあるのだろう。よくあるパターンだ。)日常のスケッチからピンポイントでざっくりと世界の在り方を見せる。台本自体の意図はきっちりと汲み取り、それを45分×2で見せる。



複数の視点(といってもふたつだけど)を提示することがこんなにも効果的に作品世界の意図を解明することになるなんて、驚きだ。それだけではわかりにくい深津さんの描く世界を言葉としての説明ではなく、2つの現実提示によって、わかりやすく説明してしまう手腕には舌を巻く。壁の外の鼠と部屋の中の2人の女という図式が、別々の2つの部屋の女たちと重なる。
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