モヴィエ日記

映画の感想とか、いろいろです。

手をつないだのは・・・

2017-08-09 21:04:17 | Weblog
子供の頃、夏休みに家でゴロゴロとしててNHKの朝ドラなんかを見てると、
ちょうど敗戦記念日に合わせて戦時中のエピソードを持って来るのがお約束みたいになってて、
今から思えば安直やなあって気もしないでもなかったりなんかするようなしないような、
そんなことをふと思い出したのは「やすらぎの郷」、
8月に入ったからなのか戦時中を振り返るエピソードが描かれてて、
しかしそのなかで衝撃的やったのはなんと言っても主演の石坂浩二の口から、
当時の日本を現在の北朝鮮やイスラム過激派のそれと名指しで重ね合わせて指摘させていることで、
そんなもん当たり前のことではあるけどもでもやっぱり公共の電波で、
それもお昼の、どちらかと言うとシニア層向けの連続ドラマという、
言っちゃあなんやけどそっち方面には無自覚な視聴者も多いかと思われる番組のなかで、
そういうことをずばっと言わせてるのはなかなかにチャレンジングやったんやないかなあってところですけども、
でもそんな表面的なことはさておいて……
八千草薫演じる通称「姫」が戦時中、想いを通わせ合っていた千坂浩二なる映画監督、
彼が軍の指示で国策映画を撮らされていたそのフィルムがアメリカで見つかり、
あるジャーナリストがそれを姫に見せて当時の話を聞き出そうとするけど……という展開で、
このジャーナリストを演じるのがきたろうというのがどこか居心地が悪いような悪くないような、
それはさておきこのことから、多くの作家や画家も軍に協力させられてたということもやはり石坂の口から語られるけど、
考えてみたらそのことを具体的に描いた作品ってのもほとんどないんですよねえ。
思い出せるのと言えば井上ひさしの戯曲「太鼓たたいて笛ふいて」で林芙美子の従軍体験を正面切って描いてるのぐらいでしょうか。
それは下手に描くと単に断罪してるようにしか見られなくなってしまうのを恐れてのことなのかもしれないけど、
でもねえ……と、話は突然変わるけど、
「姫」の役名は「九条摂子」ということで、
「せつこ」という名前から思い出される同じようなキャリアの実在の女優と言えばなんと言っても原節子ですよねえ。
小津安二郎作品の常連であった彼女は実際、彼と結婚の噂もあったそうで、
まあ小津自身は生涯独身やったので、姫と千坂監督のエピソードとはかなり異なってるけど、
でも注目せずにはいられないのは小津には従軍体験があることですわ。
日中戦争時には兵士として、そして第二次大戦では軍からの依頼で映画監督として南方に、それぞれ赴いていて、
しかし彼が撮ったフィルムが残されてるとかいう話は聞いたことがないので、実際のところどんな仕事をしてたのかはよくわからないけど、
でも印象的なのはそんな戦時中の体験を、後にほとんど語ることもなく、また映画でも描かなかったということなんですよね。
まあ「東京物語」の原節子の夫が戦争で亡くなってるという設定やったりとか、そういうのはあるにはあるけど、
大きなテーマとして戦争を描くことは一切なかった、そんな小津がしかし、
遺作となった「秋刀魚の味」の酒場の場面で、笠智衆と加東大介が軍艦マーチに合わせて機嫌良くリズムをとり、
敬礼のポーズまでとってみせる姿を描いてるんですよね。
彼の作品群のなかでは移植と言ってもいいこの場面のことは多くの評論家も取り上げてるけど、しかし小津の真意はいまひとつ判然としないんですよね。
判然とはしないけどしかしそれと相通ずるものを感じたのは、
話を戻して「やすらぎの郷」で戦時中の狂気を北朝鮮などになぞらえた石坂のその口から、
自身の国民学校時代の体験、特攻に志願するかと問われた時のことを語らせる、
その姿にはしかしどこか楽しそうな、
愚かなことやったと振り返りながらもしかしどこか懐かしんでるような様子も滲んで見えるんですよね。
これには倉本聰自身が反映されてるんでしょうけど、
やはり実際にその時代に生きていた人にとっては単純に割り切れないものがあるんでしょうねえ。
後の世代の者が戦争=悪みたいな図式だけで考えると眉をひそめてしまいそうになるけど、
しかしその時代に生きた者にしかわからない感慨がある……だからこの場面で、
ハッピーちゃんはひと言も口を挟まずに黙って奥に下がってしまったんでしょう、
そういう重層的なものが盛り込まれているその豊かさが優れた物語の魅力であり、
「やすらぎの郷」にもそれが窺えるところがたまらなく嬉しいんですよねえ。
そして、そんな風に今月は戦争を考えさせるテーマで展開して行くのかなあと思ったら、
一転して今週はクマ騒動がメインになるみたいで、
なんか話があっちゃこっちゃ飛ぶような印象もあるけど、考えてみれば我々の日常の生活もそんなもんで、
そしてそんななかにもアザミとのエピソード、手を離すこと、姫と手をつないだことなどなどが引き続き盛り込まれて行く、
いやなんとも見応えのあるドラマですわホンマに。
これでハッピーちゃんが水着姿を見せてくれたら最高なんやけどなあ。
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