Raison d' etre ici

(人の)生きる理由,生きがい;(物の)存在理由.

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ラスト アップデート

2008年09月03日 | 
明日になったら 日付は変わるけれど
それよりも 明日になれば僕は
馴染みの私鉄が連れて行ってはくれない遠い町

早春の肌寒い夜
わだかまりも晴れがましさも
複雑な気持ちは全て「未来」の前に
一生懸命押し込んだ
朝になったら日付が変わって
僕の属する場所が変わって
外見だけはモデルチェンジした僕のできあがり

夏が来れば 冬が来たら 春になったら
ずっと使っている小さなボストンと一緒に
あの時押し込んだ複雑な気持ちを抱えて
遠い場所と今を行き来するのは
夜を越える 時間をつなぐ 深夜高速バス

そっとずらしたカーテン越し
オレンジや白い灯りが際限なく滑っていくのが見える
くねくねと伸びていく稜線に動かない月
あの日押し込んだ 普段は押し込んでいる気持ちが
荷解きされて 高速道路上に散らばっていく

朝になったら 僕はバスを降りて
生まれた町の飛び出した家への帰路に着く

あの日の気持ちに
あの日から今までの僕を上書きして塗り重ねて
深みを増した感情
この町に戻ってきた時に気づく
更新されていく自分

とんぼ返りと言われながらも
もう一度散らばった気持ちを
荷造りし直す高速道路上

答えの出ないものはもう一度全部押し込んじゃって
朝になれば 寝ぼけ眼で体の節々が痛い
小さなボストン1つの僕が降り立つのは
飛び出した時よりさらに遠い場所
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ほのか

2008年08月01日 | 
僕と君が歩くのは
床(とこ)に付いた時 まぶたの外側を満たす
電柱の灯りをさえぎって
カーテンで覆った闇の色をした
薄暗い仄明るい道をとおって向かっていく
寄り添う2体の骸骨は
硬い音を響かせて

手を差し出して指を絡めて
近づいた肩先が当たり
腰に回した腕から
僕たちは骸骨だけど
骨と骨が触れた箇所だけ
互いの骨が立てる音がしなくなり
柔らかな肉が付き 温かな皮膚ができていく

自分でも他人でも触って確認して
体はその後反応する
肉の付く骨 温かいと感じる皮膚
自分のものではない 骨の、皮膚の、感触
2体寄り添っていることに気づく
君にも僕にも直接的な反応

2体同時に出した左足が右足を踏み
それは自分のものではなかった
外反母趾気味の親指に始まり
大腿骨を残して君の脛骨がからからと
後方に吹っ飛んだ

欠けた部分を拾い
戻ってきた君は血が昇っていた
怒りで真っ赤になり
刺激を受けた右腕はこん棒のようだった
君が振り回して当たった骨は意外に丈夫だったけれど
君は当たった骨の音に冷静になった
そうするうちに君の腕は骨に戻り
「ごめん」と擦り合わせた両手の
骨がこすれる音が小気味良い

怒ってないよ
抱きしめると君は胸部にカツンと頬をあずけた
鎖骨についた肉のつやめいた肌色を
なぞった指の君の皮膚にはもう
「しわ」が寄っていた
瞬く間に枯れていく様に驚いて飛びのいた
恐る恐る自分の足元に視線をずらすと
自分の骨が伸びていくのが見えた

時間は矢のようにはしるのか
成長も老衰も感覚を追い越して
寄り添う2体の身体の速度は
お互いに少しだけかみ合わない


乾いた音を立てて愛しい君が
一塊(ひとかたまり)のただの骨の山になった
寄り添っていた骸骨
君の不在に君の孤独に
悲しくて落ちた涙の跡だけ
つながった神経が感触を教える
独りの自分が発した刺激にさえ
反応するのが憎たらしいけれど
頬をつたう僕の感情はどうやら温かい


君の欠けた部分がないことを確かめようと
一本一本組み立てていると
骨が複雑に収まり
あるべき所に次第に戻っていく
馴染んだ君の姿が組まれていく

でも完成する前に
僕が限界を迎えたようで
皮膚がしおれ 水分が無くなり過ぎて
君の骨さえも持てなくなった

崩れ落ちてしまったら
君が骨を拾ってくれたなら
僕も君みたいに組み直されるのだろうか
もっと優しく もっと大きく組み立てなおすから
復活する僕をどうか見ていて
早く ずっと 遅れていても待っていて
心が身体を追い越して
今度は気持ちが急いている


うすぼんやりとした意識の中で
覚えていられないような光の中で
戻っていく過程
2体の骸骨の完成形が見えた気がした
骨と肉と皮膚の
血が流れている様を
まぶしい肌色と取り巻く光
君と僕は歩いている
寄り添う2人が見えたと思ったら
どんどん遠のいて


細胞が生まれ 神経が通り
初めに見たのは君の瞳の色だった
大きく見開かれているような気がして
きっと心配していると思ったけれど
鼻と口の空洞からのぞく脊椎のパーツが震えているのが分かった

だから肉を付けた頬と口で笑ってみると
君もゆっくりと肉を付けていった

もう少しするとできあがる
肌色の笑顔をいつかどこかで見ている気がする


闇の色を薄暗く仄明るく揺らして
気がつけば元通り
2体の骸骨が歩を進めている
踏み出す一歩が時に灯りに時に闇に
僕と君が歩くのは
2体の骸骨が寄り添って
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行き着くまで

2008年06月03日 | 
昨日君が見た雲が流れてくる
明日には降りだすでしょうと
天気予報は晴れのちくもり
君の声が電波に乗る場所と
届く場所では天気が違うんだ

大好きな人の体のそこかしらに
触って口づけて
会って確かめて初めて自分を幸せにする箇所がある
声を聞くだけではもどかしく感じる箇所が心の中にある
天気の話をした時に浮かんでいた
変わった形の君が話していた雲が
流れてくる
夕方には雨になった
風が強かったから

「こっちは晴れたよ
明日は晴れるよ」
君からの少しもどかしいような口調で
ああ やっぱりって気付くんだ

昨日見た色 知ったにおい 雲の線を教えて
次の日には予言みたいにその通りになるから
昨日君に吹いた風が
今日私を通り過ぎるまで
その前に少し早く教えて
昨日笑ったこと 口にしたこと 祈ったことをそのまま
予言みたいに明日には届くから
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いつかの街角と君達の後追い

2008年03月08日 | 
海まで続く大通りを君と行く
君が知っている目印をどんどん過ぎて
コンビ二前のバス停で煙草を一服
風上の君があんまり寒そうだから
半分で押しつぶしてまた手をつなぐ
寒い時ほど君は強く握るから
時々離して小指だけで間に合わす

さっき時間の合わなかったバスが
2人を追い越し信号でまた追いつく
「今度はバスで行こう」って
名残惜しそうな君の言葉の途中で信号が変わった
2人は街角を折れて
目印のビルのネオンサインが流れていった


曲がる時君はつないだ手を少し引っ張って先導する
すれ違う人も看板もよけているのは君
それを頼もしく感じるけれど
片方は周りを見渡して歩いているものだから会話がかみ合わない
それでも歩幅をあわせて
つないだ手をぎゅっぎゅっぎゅっと握り返すと
君は何だか不思議そうな顔をする
ここが目的地じゃないけれど
オレンジの灯りのカフェが見えると足を緩めてしまう
温かいコーヒーを飲む時はもちろん手を離しているけれど
マグのざらざらした手触りは
冬でもクリーム無しの君の掌に似ていると
口に出さずに横を見ていると君は煙草をくゆらす
灰が伸びていく


帰り道のことを考える
今日の夜 明日の朝
この先何度も浮かび上がる
つないだ手
風上まで微かに届く煙草の匂い
細やかな部分を起点にして
君に君に景色がにじんでいく
気持ちが後から湧きあがってくる頃の
帰り道のことを考える
にじんだ景色を名残惜しむのは
また別の街角







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唱える/明日/アタシ

2008年02月26日 | 
昨日あなたの声を聞いた窓際で
いつかのアタシも電話していた

初めて遠く離れてから電話をもらうまで
距離を考えるほどに
現実味が薄れていった甘く切ない夢のようで
それでも携帯ごしに「大丈夫」とあなたが唱える度に
あなたの声がみるみる近くなり
アタシは安心していった


アタシは苦しい時ほど幸せになりたいと思う
苦しくて呼吸が浅くなると空を仰いで唱える
幸せになるにはどうしたら良いのかと
でも間抜けなことに
何が幸せなのかまだアタシにはわからない

あなたとの埋め合わせに幸せでいなければと
幸せでいなければあなたのせいになってしまうと

「大丈夫」の呪文は携帯のこっち側のアタシのために

それでもアタシは悲しくなり悔しくなるから
途方にくれる


窓際で頭に響いたのは
この前電話で話した流行りの歌のサビ
あなたのハミング

自動ドアの向こう
車も人もいっときコマを止めて
懐かしい君の歌う声が聞こえた

明日のアタシは幸せになりたいだろうか
幸せの意味が分からないのだろうか

ハミングが何度も重なって
携帯ごしの歌声は心に近い
呪文がたくさんたくさん唱えられていく
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名残りのさらにあとさき

2007年08月13日 | 
押し込んだキャリーを
仕方なしに引き揚げる

布製のタータンチェックのキャリーは
およそ私の趣味とは遠い

あっという間に手放すことが決まった
長く馴じみの青い扉の向こうから持ち出して
2人でコンビ二から送った

夜逃げ同然の慌ただしい引越し作業は
次々に家具と段ボールが運び出され
実用的じゃない残り物を放り込んで
あなたは「とりあえず」と私宛にキャリーを送ったのだ

青い扉には鍵をかけ
キャリーは送って
あなただってハグ1つで別れの挨拶もそこそこに
ホームに紛れていった

そうして パーフェクトに楽しい
作り物みたいな夢から
私が引きずり出た頃
キャリーがひっそりと届けられた
だから私はテレビの隅に追いやって
時々は夢の断片を引き揚げて
また沈めてはやってきた

青い扉の向こうから
かすかにショウノウのにおいが漏れ出すように
青い扉の向こうの日々は
少しずつ私の身体と心と
思い出だか夢だかと混ざり合う

あなたから連絡があったから
「えいや」と引き揚げた

1つ残ったあなたの優しい「とりあえず」は
ゆるゆると私の中へ消化されていったのだろう
無事届いたことが伝えられ
私はクリップボードの伝票をゴミ箱に入れた
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元に戻して

2007年08月13日 | 
私達は長く一緒にいて
最近 デートらしいデートは
面倒なのでしていない
予定のない休日の予定は
相手の予定を決めずに決める
私だってあなただって
自分のことで精一杯だ

要するに
私達は手をつないで歩きながら
別々の方向を向いている
手を離すことさえある

比喩ではない

私達は長く一緒にいて
傷つけ憎み
悲しませ孤独を感じ
間違って失敗を繰り返した
残酷で容赦なく致命的で
未熟なほど

それでも「元に戻して」なんて
思ったことはない

交わす言葉の端々を
良いことと悪いことで色を付ける

「また明日ね」も
「行ってきます」も
「遅れます」も
「アイラブユー」も
一緒にいた時間の分だけ色が付いていく

私は恋をしたけれど
正気で深刻だった

だから「元に戻して」なんて
思ったことはない
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Happy Birthday to you, grown ups

2006年10月05日 | 
ハタチの頃は大学に入ったばかりで
失敗をおかすためだけに飲んだくれていた
未成年では都合が悪いことが
大学生活では多くて
面倒が早くなくなれば、と呟きながら
ラムコークを流し込み
タバコをふかした
隣のハタチを少し過ぎたばかりの男達は
ふかした煙に目を細め
何とはなしに僕を見ていたのを覚えている

ハタチ1秒前と1秒後で
大した差を感じるわけもなく
アルコールで湿ってにじんでいく視界を
眺めていた

店を征服できるには
ちょっと足らない量を飲み
落としたライターを拾おうとしたことがきっかけで
トイレに駆け込んだ

アルコールばかり何種類も
ひとしきり吐いた後
植え込みのふちに寝転んでいると
警官が通りかかり
具合を確かめ去って行った



息が上がっていた


まぶたをぎゅっと
つぶった


アルコールで道端に倒れ込んでいても
動揺しなくてよかった

僕はハタチになった
面倒が減った


それだけの
そういう差だった


そのままタバコを1本まるまる吸い
仕方がないので
歩いて帰った
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この世の景色

2006年09月17日 | 
洗いたてのシーツと
100%のオレンジジュースがあれば
私の人生はまずまず順調だ


この海沿いの道はゆるい坂で
海風が所々
アスファルトに砂をまいていく

海があって太陽があって
潮のにおいのする風が吹き
白い壁をした家々が並ぶ
整頓された街で
整頓された生活をしていく

でもこの道になじんでいる白いサンダルは
信じられない位こんがらがった街で買った
自分の人生を生きるつもりで
他人の人生を生きている
自分の生活はいつのまにか
隣の他人の生活と混ざり
幾人もの人の生活が交差する
私という存在のはっきりした輪郭は
どこまでだったのだろう

お守りのような気持ちで
まっさらな白のサンダルを履いた
坂道を上るには少し高すぎるヒールでも
一番眺めのよいカーブで足を止め
ガードレールに手をかければ大丈夫

波音が重なり合い
水面が陽を受けて輝く
水平線まで遠ざかりそうなほど
広がっていく海があって
風が髪を乱していく
私は坂の途中
しっかりと立っている

私の目で見るこの景色は
同時に他人の目で見ている景色でもあり
大事な人ならば
泣きたくなるのだろうか
死にたくなるのだろうか

季節の初めにひいた風邪は
まだ体の奥に残っていて
私の体は過ぎたことと
今とつながっている
私の心が遠く離れても
たくさんの心とつながっているように


帰り際に通った白い壁の家には
しっぽのないトカゲが1匹
誰かの家の庭にしっぽだけが
ひっそりと残っているのだろう
1匹のトカゲと1本のしっぽは
合わせて2つ
身を切るように他人の中に私を
中途半端に残してきてしまった
私の中に残る他人の声が
「1人」だとざわめくけれど
かえって実質的に1人になるのが難しくなる


洗いたてのシーツと100%のオレンジジュースを
常に用意している
あの街でもこの街でも
私だけが好んだものを側に置いている
まるで強情な私を
大事な人と大事な人の中に置いてきた私は
どう見るのだろうか
時々分かれた私が
無心に泣き 揺れているのを知っている
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夜風はいいねえ

2006年08月30日 | 
そろそろ出ようか

居ついて3年の1Rは
身の回りのものがほとんどなくて
いつでも逃げられるようにと
小さなボストン1つが僕を守っている


うっかり落としてしまったタバコの焦げ跡は
網戸の桟のところ
その時は赤いマルボロを吸っていた


この部屋で
僕はただの人生に張り詰めた若者で
ここを出てもついてくるものが
自分に属することくらいはとっくに悟っている

家を出る時は親からくすねたタバコを
ふかしたエンジンの横で吸った
見上げた家はでかく
この部屋の木目を見ると
随分遠くまで来たことを思い出す


灰皿に落としたタバコは
もうマルボロじゃない


薄く蛇行して天井に消えていく煙は
ふいに掃いたように乱れた


夜風はいいねえと
煙の筋をしばらく追っていた
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