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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

朴三石の「外国人学校はいま」

2010年06月17日 | 集会報告
6月12日(土)夕方、水道橋の全水道会館で第19回非国民入門セミナー「外国人学校はいま――高校無償化からの朝鮮学校除外問題を考える」が開催された(主催:平和力フォーラム)。講師の朴三石(パクサムソク)さんは朝鮮大学校教授で専攻は法社会学、「外国人学校――インターナショナル・スクールから民族学校まで(中公新書 2008年10月)という著書もある。講演は、前田朗さん(東京造形大学教授)が朴さんにインタビューするかたちで進行した。

左が朴三石さん、右は朴さんの著書を片手に説明する前田朗さん
●日本の外国人学校
外国人学校は2007年末で日本に221校あり、内訳は民族学校(ナショナル・スクール)188校、国際学校(インターナショナル・スクール)33校、民族別ではアジア系83校、欧米・南米系138校である。民族学校は特定の民族・国籍の子どもを主な対象とし、国際学校は民族・国籍を問わず主として外国人の子どもを対象にする。
ブラジル人学校が最も多く95校、次いで朝鮮学校が70校、3位は中華学校の5校である。ただリーマンショックで本国に帰国したブラジル人が多く、ブラジル人学校は2010年には79校に減ってしまった。生徒数では2010年で朝鮮学校1万人、ブラジル人学校5000人である。
欧米系は本国の教育体系に準じ、アジア系は日本の教育体系を参考にしているという特徴がある。これは欧米系は9割方帰国して大学に入学するが、アジア系は永住する人が多いためである。朝鮮学校は小学校(初級学校)から大学(大学校)、修士課程(研究院)まで一貫したシステムになっている。

●朝鮮学校の高校無償化除外問題
世界には、高校教育を無償化している国が先進国を中心に多数ある。昨年10月の概算要求の段階では各種学校である外国人学校も対象に入っていた。保護者は「よかったなあ」と喜んだ。ところが2月に中井洽(ひろし)国家公安委員会委員長が朝鮮学校を対象から除外せよと政治的発言を行いストップした。朝鮮学校の子どもたちは「ほかの学校といっしょに制度を適用してほしい」と署名を集めた。世論が盛り上がり多くの署名が届けられた。しかし政府は子どもの声に耳を傾けることなく、4月1日の施行から朝鮮学校を除外した。外国人学校のなかで朝鮮学校だけ除外した「差別」の事実は重い
この問題には、強調すべき3つの重要な論点がある。
無償化の施行規則(公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則)1条には
「専修学校及び各種学校のうち高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものは、次の各号に掲げるものとする。
 (略)
ハ イ及びロに掲げるもののほか、文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの」
とある。無償化の条件は「各種学校であること」かつ「高等学校の課程に類する課程を置くもの」の2つである。朝鮮学校は2つの条件を満たしているのに除外した。満たしているから概算要求の段階で入っていたのだ。これは禁反言の法理(一度言ったことを覆してはならないという民法の信義則)に反する
次に、政治的事情を教育に持ち込んだという問題がある。3つ目は、本来率先して差別を社会からなくしていく立場にある政府が、差別を助長したという問題である。
現在、専門家委員会で8月末までに結論を出し、適用する場合は4月にさかのぼって無償化することになっている。
無償化適用の2つの基準について確認しておきたい。朝鮮学校が各種学校であることは明らかだ。50年以上各種学校として認可されている。「高等学校の課程に類する課程」で重要なことは、「教育課程」と言っており「教育内容」ではないことだ。料理の比喩でいえば、教育課程とは料理を入れる皿やメニューのことで、教育内容とは盛られた料理そのもののことである。一部の報道は朝鮮学校の教育内容を検討しているように書きそれが一人歩きしているが、そこまで踏み込まないことになっている。
さて、朝鮮学校の教育は「高等学校の課程に類する課程」であることを、2つの点で論証したい。まず学校教育法第134条で「第1条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うものは、各種学校とする」と明文されている。地方自治体は「朝鮮高級学校」という名称で各種学校の認可をした。初級学校が小学校、中級学校が中学校に相当するのと同様に、高校に類する教育を行う学校であるから各種学校の認可をしたのだ。
また専修学校の高等課程の総授業時間数は2590時間以上という規定がある。ネットで調べると専修学校の高いレベルの学校で3010時間だった。朝鮮学校の授業時間数はこれより600時間以上多い3640時間である。

●国立大学受験資格の差別
2月に、朝日、毎日、読売が朝鮮学校無償化除外反対の論陣を張ったとき、論拠のひとつに日本の大学が朝鮮学校卒業生に受験資格を与えていることを挙げた。しかし政府文科省は各大学が独自の判断で認めているだけで、政府の認定ではないという。政府は、本国により高校課程と認められた学校、あるいは国際認定機関が認定した学校(主にインターナショナル・スクール)を学校単位で認めると主張する。「朝鮮学校の場合は各大学が受験生個人単位で審査しているにすぎない。ただし反対はせず黙認する」という。
日本と北朝鮮の間には国交がないので大使館もない。では大使館のない台湾はどうなのか。日本政府は、国交がなくても台湾系の協会を通じて調査できるという理屈を立てている鳩山・前首相が「北朝鮮とは国交がない」ことに言及したとき、あわてて文科省が火消しに走った。台湾系民族学校が排除されてしまうからだ。ここに日本政府の本音がある。各種学校のなかで、新しい差別がつくり出されつつある。
大学も国際化の流れのなかにある。90年代はじめのころ「朝鮮学校から日本の大学に入学できないのはおかしい、こんなことがあってよいのか」という声が盛り上がった。最後まで受験を拒んだのが国立大学だった。文部省(当時)が「絶対に認めるな」という政策を取り続けたからだ。それを、国民の良識と大きな世論のうねりがひっくり返した。

●在日の納税
国民の血税を朝鮮人のために使っていいのかという議論がある。では朝鮮人は納税者ではないのだろうか。憲法で納税は国民の義務とある。この論理からすれば外国人は納税の義務がないことになるが、住民として国税も地方税も納めている。消費税も支払っている。納税額がいくらかはわからないが、以前の資料で1000億円以上というデータがある。税金の反対給付として、ごく一部を回してもおかしくはない。
教育を受ける権利は国民の権利とあるが、外国人も納税の義務を果たしており、在日朝鮮人も含め、日本国民と同様に差別なくその権利を認められているというのが、日本国憲法の通説だ。
外国人が日本で子どもに教育を受けさせたいと思ったとき、日本の学校に通うか外国人学校で学ぶかどちら選択することになる。日本の公立学校では「母国語や母国文化を学ぶ特別な課程を組んではならない」という通達が1965年12月に出ている。しかしカナダではそんなことはない

●国連人種差別撤廃委員会の勧告
95年12月、日本政府は国連の「人種差別撤廃条約」に加入し、96年1月に批准した。加入国は数年に一度、人種差別撤廃委員会にレポートを提出することになっている。委員会はこれを審査し勧告を出す。
今年3月16日、審査の総括所見が公表された。所見のパラグラフ22で「委員会は、子どもたちの教育に対して差別的な影響を与える次の行為について懸念を表明する」とし、「(e) 締約国において現在審議中の公立および私立の高校、高等専門学校および高校課程に類する各種教育機関における授業料を無料化するという法案について、朝鮮学校を除外すべきとの一部の政治家たちによる提言」と朝鮮学校除外は差別であると断定した。さらに「委員会は(略)締約国がユネスコ教育差別禁止条約への加入を検討するよう求める」と勧告した。
これは、日本には深刻な朝鮮学校への差別があることを認め、単発の話ではすまない、ちゃんとユネスコ教育差別禁止条約に加入させて義務を履行させないと外国人学校差別、そして朝鮮学校差別はなくならない、というところまで踏み込んだ、かなり手厳しい勧告である。
人種差別撤廃条約は1965年に採択され69年に発効した人種差別撤廃宣言を前提にしている。「宣言」には人種差別は人間の尊厳に対する犯罪だから差別はなくさないといけないと書かれている。
じつは国連の日本政府に対する勧告は、今回の勧告で7回目になる。

●今後の見通し
5月27日文部科学省は、第1回専門家会議を前日26日に開催したと発表した。委員の名前や検討状況は結論が出るまで非公開である。今後どのような結論が出るのか? 3通りのケースが考えられる。ひとつは、引き続き朝鮮学校には高校無償化を適用しない、ひとつは適用する、もうひとつは放置である。今後東京や京都ではデモが計画されている。世論が高まれば、この問題が解決する可能性は高い

☆個人的事情なのですが、身辺に変化がありました。これまでこのブログは原則として週2回更新を続けてきました。今後は、当面週1回更新を目標にしたいと考えております。
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