多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

裁判所へ通った7日間

2016年09月15日 | 裁判
8月31日から9月8日までの7日間に5回、ほぼ連日東京地裁・高裁へ傍聴に行った。これまで増田さんの裁判の傍聴などには来たことがあったが、こんなに集中して傍聴に行くのは初めてだ。たまたま日程が接近しただけのことなのだが・・・。
まず8月31日(水)は東京朝鮮中高級学校「高校無償化」裁判、9月2日(金)は安保法制違憲訴訟、5日(月)は安倍靖国違憲訴訟、6日(火)は吉見裁判控訴審、そして8日(木)は豊洲汚染土地購入に関する公金返還請求訴訟(2011年購入分)だった。

8月31日と9月2日は抽選で外れ、9月5日と6日は抽選のはずだったが、無抽選で希望者全員入れた。あまり連日行ったので駐車場・駐輪場のスタッフの方に顔を覚えられ「今日は当たるといいですね」といわれるまでになった。
なお東京朝鮮学校裁判には一度報告集会に出たことがあるがその他ははじめてなので、前後関係や全体状況を理解できていないことをお断りしておく。

東京朝鮮学校「高校無償化」裁判第11回は、抽選にははずれたが、参議院議員会館での報告集会に参加した。
この裁判は省令まで変更し、全国の学校から朝鮮学校だけを「高校無償化」から除外したことに対し国を相手取り大阪、愛知など全国5裁判所で起こした裁判だ。東京は一番遅く2014年2月提訴で、原告は朝鮮学校の当時の生徒たちである。
弁護団の報告を紹介する。

被告・国から5月25日の期日で不提出だった文科省内部資料が6月末にやっと提出された。これをもとに原告側は準備書面5と6を提出した。そのポイントは省令「改正」は審査会の審査(2013年1月11日から2月4日までに開催)などによるものでなく、2012年末の安倍政権発足前後からのトップダウンによるものである。それは「首相動静」や添付書類の「プロパティ」の時刻を「分」の単位までしらべて明確になったが、たとえば12月26日13時7分に首相指名投票が行われ閣僚認証式を経て初閣議は22時51分に行われた。翌27日夕方から夜21時前にかけ副大臣の認証や政務官の辞令交付が行われた。その翌朝、年末の28日10時11分に「パブコメ用省令概要」が作成され、菅官房長官が「不指定の方針」を記者会見した。これは前夜のうちに方針が決まっていたはずである。
また5人の証人尋問を申請した。このなかには文科省の起案担当者(係長)も含まれている。進行協議で次回は12月13日午後証人尋問と決まった。年明けに結審の見込みである。
その後「支援する会」、高校生、校長のアピールがあった。この問題が始まったのは2010年なのでもう6年になる。1年生女子は、当時まだ小学生で高校生の兄からこの話を聞いたという。東京朝鮮高校は今年が創立70周年だそうで、それには間に合わないが、一日でも早くいい判決を出してもらいたいものだ。

安保法制違憲訴訟は抽選ではずれ、報告集会も夕方遅めで時間が合わずパスした。原告の意見陳述が行われたようだ。全国8か所で行われているこの裁判、まだ第1回口頭弁論なので、今後傍聴できる日もくるだろう。なおセットになっているもうひとつの裁判「集団的自衛権の行使差し止め訴訟」も9月29日に第1回期日がある。

安倍靖国違憲訴訟は、安倍首相が2013年12月26日に靖国神社を参拝したことは憲法20条(信教の自由、政教分離)に違反するという訴訟だ。
被告は、国、安倍晋三、靖国神社の3者にわたるため被告席には14人もの関係者が座っていた(もちろん安倍本人は出廷していない)。日本人原告334人だけでなく海外在住原告も301人の国際訴訟だ。この日は日本在住原告の証人尋問だった。
関千枝子さんは広島原爆投下のとき県立第二高女2年生の14歳だった。クラスメイト39人のうち38人は爆心地から1.1キロの近距離で建物疎開を屋外で作業していたため被爆直後に亡くなり、残りの1人も1969年に39歳でがんで亡くなった。関さんはたまたまその日だけ体調が悪く母に止められ爆心地から3.1キロの自宅屋内にいたので助かった。クラスメイトたちは1962年靖国に合祀され最年少の「英霊」となった。英霊は「出してほしい」「平和な世界で暮らしたい」といっている。だからこの裁判は「英霊」本人の申し出だ。関さんはクラスメイトの集合写真や本人の45年4月ごろ写真館で撮影した写真を映写しながら陳述した。安倍に対しては、政教分離の憲法を守らず法を認めない首相は許せない、あれだけ事前に「行く、行く」といって参拝し、それも公用車を使って参拝したのだから、と述べた。
その他、キリスト教のNGOや大学教員として働く方が、フィリピンの戦争被害者や韓国の遺族との対話でショックを受けた話や、安倍参拝について、「自分が加害者にさせられたくない」という強い思いを陳述した。最後に聖公会(英国国教会系統のキリスト教の教派)信者の方から、真宗大谷派を信仰し1944年に23歳でフィリピン沖で戦死した伯父や大阪大空襲で20歳のときに焼け出された母のことから平和を強く求めるようになり、自分はきわめて少数派のキリスト教信者だが、靖国を特別視し各国首脳を伊勢神宮に案内し日本が神道の国であることをアピールする安倍首相には「信教の自由」の点で被害を受けていると述べた。なおこの方は今年の8月15日のデモに参加したとのことだったので、どこかで顔を合わせていたのかもしれない。
わたくしは午前だけで帰ったが、午後も原告の証言が続いた。12日には海外在住原告の証言があるのだが、いまだに中国人原告に対し外務省がビザを発給しない。そこで原告弁護人から被告弁護団に対し、「円滑な裁判進行のためにも法務省や外務省にビザ発給の要請や経過説明を求めてほしい」とのよびかけがなされた。

次に吉見裁判は控訴審の2回目だった。2013年5月27日桜内文城衆議院議員(当時。日本維新の会、櫻内義雄の孫の連れ合い)は橋下徹の外国特派員協会での記者会見に同席し、吉見義明・中央大学教授の著書にに関し「これはすでにねつ造であるということがいろんな証拠によって明らかとされております」と発言した。これに対し吉見さんが桜内文城氏を相手取り名誉棄損損害賠償を求めた裁判だ。1審は今年1月20日東京地裁が請求棄却し、控訴審第1回は5月31日でこの日が2回目である。
双方からの短い意見陳述のあと裁判官の合議に入った。そして証人尋問は却下、弁論終結、被告の反論も不要ということで、最後の本人陳述に入った。吉見さんは「研究者にとって著書が「ねつ造」と評価されることは致命的であり、研究者倫理にかかわることなので研究者生命を失わせる。朝日の訂正記事は吉田証言の取消に過ぎないが、自分は吉田証言を使用していない」と述べた。桜内氏は「研究者の名誉とおっしゃるが、わたくしも博士号をもっている。一方吉見さんは略歴からみると博士号はもっておられないようだ」と述べた。ウィキペディアでみるとたしかにマラヤ大学政治経済学系大学院で博士号を取得したようだ。
なお判決は12月15日15時に言い渡される。

築地市場の豊洲移転問題は、小池知事に変わり、11月7日の移転を延期し、また東京都がウソをつき続けたことが発覚し、いま注目を浴びている。
豊洲汚染土地購入に関する公金返還請求訴訟(2011年購入分)は、2011年3月に東京都が東京ガスグループから購入した土地は、2008年にベンゼン(基準値の43000倍)、シアン化合物(860倍)などケタ外れの高濃度汚染が発覚し、2008年の専門家会議で土壌汚染追加対策費1300億円や2009年の技術会議で586億円の追加対策費が報告されていたのに、なぜ汚染がない高い価格で購入したのか、東京都知事(当時は石原慎太郎)に公金支出金返還を求める住民訴訟(2012年5月提訴)である。
豊洲移転をめぐる訴訟はこれまでに豊洲コアサンプル廃棄(汚染証拠隠滅)差止請求訴訟(2009年8月提訴、2012年9月東京高裁で棄却判決)、豊洲移転公金支出金返還訴訟(2006年購入分)(2010年5月提訴、2014年4月東京高裁棄却)の2つが行われたので、この「2011年購入分訴訟」は3つ目だ。
この日は原告側から水谷和子さんの陳述書と経緯などの証拠、被告の都から中央卸売市場参事(築地市場再整備担当 当時)と新市場整備部開発調整担当課長(当時)の陳述書のやりとりをしたあと、すぐに進行協議に入った。引き続き弁護士会館で行われた報告集会で大城聡弁護士は次のような報告をした。

裁判官から原告、被告それぞれに宿題が出た。被告に対しては「豊洲の用地購入の相手は東京ガス、東京ガス豊洲開発のほかに国などがあったが、平成14年合意のような土地汚染に関する考慮や合意はあったのかどうか」、また原告には「仮に売買契約が有効であった場合でも、解約は可能なのかどうか」主張を補充してほしいというものだ。次回期日は11月だが、書面に対する反論が出てそのあと証人尋問ということになるので早くて来年3月ごろではないか。
次回期日は11月17日15時である。

さてどの裁判にいっても、だれか知り合いに出会う。それも意外な人が意外な裁判に顔を出していることもあり、かつ、開廷や報告集会を待つ間はヒマなので旧交を暖められて都合がよい。また傍聴はもちろん無料だし、そのうえ勉強になることもある。報告集会では、初対面の方でもたいていは同じ考え方の人が多く話がはずむ。傍聴参加のおもな目的は1人でも多く傍聴者を増やし、裁判に少しでもプレッシャーをかけるための応援団としての参加なのだが、いろんな「効用」がある。

☆この間2日裁判所に行かない日があったが9月1日(木)は、新宿の全労済ホールでピースリーディングを観劇し、7日(水)は地元の教育委員会定例会を傍聴した。
ピースリーディングの今年の演目は「すべての国が戦争を放棄する日」(構成・脚本:石原 燃、演出:坂手洋二)。今年7月22日午前4時前、参議院選挙後に再開した高江のヘリパッド基地建設工事と全国の機動隊員による座り込み市民の強制排除の喧騒からはじまり、石垣・宮古・与那国の自衛隊基地問題、北朝鮮や中国脅威論、PKO、ジブチ、対テロ戦争と話が広がり、再び高江の7月、8月に戻る。坂手氏の演出のせいか、だいぶ演劇の「形式」を取り戻した。東京から高江の支援に来た少女アコと石垣の純朴な青年ユウスケというヒロイン、ヒーロー的な登場人物もいるので、ここ数年に比べ少し理解しやすくなった。アコは「これじゃ本当に戦争みたいじゃない」「どうしてそうなるの?」と叫ぶ。今年は早くもこのサイトに台本が公開されているのでご覧いただきたい。稲田朋美防衛大臣や小池百合子新都知事も登場し、稲田は「
血を流さなければ国を護ることなんてできないんです!」、小池は「核武装の選択肢は十分ありえます」と舞台で語っている。
ただ後半やはり少しわかりにくいのは、引用が多いことと登場人物が多すぎるからだと思う。役者1人にひとつの役を割り振るとこうなるのかもしれないが、群読を取り入れて役を減らしてもよいのではないかと思った。
スペシャルトークは高林敏之さん(アフリカ国際関係史研究者)と高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)さんだった。高林さんはジブチや南スーダンの状況、高遠さんはイラクのファルージャやラマディの現在について語った。高林さんからは、ジブチでは、日米地位協定よりひどいまるで幕末のころのような
治外法権状態を日本が強いていること、海賊を逮捕するのは自衛隊ではなく海上保安庁、裁判は日本の裁判員裁判、収監しているのは日本の刑務所であり、その海保が一方では辺野古で暴力を振るっていること、海賊そのものの発生は2015年は0件、被害発生も2014年から1件もないのにジブチの自衛隊基地は機能強化されていること、南スーダン紛争は現実には軍閥の争いでPKO5原則を満たさないこと、など知らない話をたくさん聞いた。
高遠さんからはファルージャ総合病院が有志連合の29回の爆撃でメチャクチャになっている様子や、爆撃で壊滅状態の家屋なのに「難民キャンプで死ぬよりは自宅で」と家に戻ろうとするラマディの家族の話を写真やドローンによる動画などとともに聞いた。難民には
ISだけでなく、有志連合や政府軍も脅威になっている
内容が充実しているので、そろそろリーディングとトークの時間配分を見直してもよいのではないかとの感想を抱いた。
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