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自民党の難点・民主党の難点 まとめ6

2009-08-20 16:57:27 | 政治

マル激トーク・オン・ディマンド「自民党の難点・民主党の難点」をテキスト化。第6回。

(神保)

日本で休暇の消化率とか、育休・産休の参加率が低いという話をする時に大体出てくる話というのが、日本は今の状態でも国際競争力的にはかなり厳しくて、特に生産性が低いわりに人件費が高い。それがあるから、それを長時間労働で埋めている。それから休暇をとらないことによって出勤日数を増やしている。

そこで生産性が低いまま休暇や育休、勤務時間をヨーロッパ並にしようものなら、日本の競争力が地に落ちてしまうと。そこで休暇云々の話は出るんだけど、生産性を上げるという話にはならない。それを並行して進めないとまずいでしょう?

(宮台)

何故生産性が低いのかということについての研究も色々あるので、今一体どういうサーキットを回っていて、それをどういうサーキットにシフトすればいいのかという話をすればいいんです。

それは昔から「第三の道」を紹介する時に僕が申し上げている「動機付けのシステムを各所に仕込んでいく」ということであるわけです。そういう意味で言えば、雇用についての解雇規制であるとか派遣規制をするという形で企業から見た場合の雇用リスクを上げるというやり方はまずいんですよ。そうすると、基本的には企業は労働力を海外に求めるようになり資本が流出してしまい、国内の労働市場が縮小してしまう。つまり、全部正社員として抱え込むという事になってしまえば動機付けのシステムが働きにくくなってしまうわけです。

あるいは、セーフティーネットをちゃんと敷くことによって、雇用リスクを下げる。つまり、解雇規制・派遣規制をやらない代わりにセーフティーネットを敷くという場合に、そのあり方もちゃんと議論する必要があります。

これは本当は例えばベーシック・インカムとか、負の所得税とかが随分知られるようになって、先進国の多くのところで採用されているので、それを民主党は言った方がいいと思うんです。今の日本の生活保護というのは、貯蓄額とか家族が持っている資産を参照して打ち切るかどうか決めるということになるので、ある程度以上働くと限界を超えて貰えなくなるから働くのを止めるという方向に人々を動機付けてしまっている。そうではなくて、資産評価の無い給付を行うという意味での、負の所得税とかベーシック・インカムをセーフティーネットに取り込めば、最低限の生活を保障する代わりに動機付けが疎外されるという事がなくて、働いた分かならずリターンになるんだという風に作り上げていけるんだとか、このように各所が、どういう動機付けのシステムを仕込んでいく事によって再配分による動機付けのスポイルが有り得ないようにしていくのかということを絶えず国民に問うていくということをやらないと、かつての福祉国家政策の悪夢を再現する可能性があります。
  
(神保)
宮台さんはどうして日本は生産性が低いんだと思います?

(宮台)

う~ん。これはとても深い問題で、日本の場合にはご存知のように極めて特殊な近代化の政策を取ったんです。地域の共同体を空洞化させる代わりに、二つの受け皿を作った。一つは企業の共同体、もう一つは国家の精神共同体。

戦後は後者の部分については比較的軽くなったわけですけど、その代わりに地域の共同体が空洞化した部分を企業の共同体が埋めるということをやってきているんです。そうすると、ヨーロッパ、一部のアメリカのように個人が帰属する先が、特に男の場合は企業になってしまう。このことが日本の特殊性を構成していると一口で言う事ができます。従って、例えば国民が生活に困っているというときに何を要求するかというと、昔で言えば企業の賃上げ闘争があった、あるいは賃上げが出来るように財界が取り決めをしろとか、国が誘導をしろという話になるんですよね。どうしてもそれが抜けない。

つまり、自分たちの相互扶助でここまでやるから、それを助けるような何かをしてくれという方向にならなかった。それが大きいと思うんです。

(神保)

それは結局、帰属集団であるが故に他のところに助けを求める事が出来ないから賃金を求めてしまって、その人たちの労働に関係なく賃金が高くなったから相対的に生産性が低くなったということですか。つまり、日本の労働者って非常にコミットメント、ロイヤリティが高いし、長時間働くし、会社に対する忠誠心も高い。

(宮台)

それはでも、随分前の話ですよ。ロイヤリティはOECD加盟国の中では下から2番目か3番目ぐらいまで落ちてしまっています。だから、それは帰属先であったはずの企業がやっぱり営利的な目的を持ったアソシエーションであるということが景気の悪化の中で明らかになってしまったので、「やっぱり共同体では無かったんだな」ということが分かれば、当然人々はロイヤリティを失ってしまうわけです。そもそも、日本は生産性が元々高かったのかというのも疑問で、帰属先と言いましたけど、これは簡単に言えば居場所なんです。

居場所が会社にしかなければ、例えば会社にいることによって有効な仕事が出来るから会社にいるということじゃなくて、そこにしかいるところが無いので会社にいるっていう人が沢山いるわけです。

(神保)
だからベッドタウンという表現が出てくるんですよね。寝る為だけに帰るということでしょ。

(宮台)

だからどこの企業も今でもあると言われている、「上司が帰らないと、自分は帰れない」っていう、まぁ昔はある種の美徳でも有り得て、一丸となってチーム仕事をしているんだという風に。そういう感覚の現れだった可能性もあるわけだけど、そういう意味で言えば、皆が馬車馬のように働いて企業を回す。それだけ市場のニーズがあるっていう時はいいんだけど、不況になってきた時に同じようなシステムが機能するはずがないんです。

むしろ、やることも無いのに、居場所が無いから企業に居続けるような人達が増えて、不況になればなるほど生産性を上げなければいけないのに生産性は下がるんですよ。

(神保)

結局、だらだらと会社にいて、一見長時間拘束されているように見えても、実は生産性が低いからそれほどアウトプットしていないという状況。だけど、拘束だけは長いから賃金が発生して、企業にとってもアウトプットのわりに高いお金を払っている状態になる。

僕は海外で長く働いて、そこではそもそも長く働くということが評価されないし、否定的に見られる。その代わり時間のモラルの要求が厳しい。その凝縮されている時間に求められているコミットメントのレベルが非常に高くて、その代わり、とっとと帰れ!となる。それがいいかどうかは分からないけど、やっぱり長時間職場にいるとワークライフ・バランスというのはちょっと・・・

(宮台)

無理ですよね。生産性を上げなければ就業時間を短縮する事はできない。そうしなければ社会に参加できない。そうすれば企業や国家への依存度がますます高まって、企業に居続けるしかないという悪循環が生まれる。そこは手当てをするしかないし、失敗すればもう終わりですね。

(神保)
本当は政策的手当てじゃなくて、市場がそういう形で機能するのが望ましいんですけどね。

(宮台)
市場の投票機能ですよね。商品やサービスを購入する事を投票の代わりに使うということを我々が当たり前のものとして引き受けるようにならないといけませんね。



1 コメント

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ポイントは教育です (トム)
2009-08-22 07:33:22
愚民化教育を行う封建政党を、日本社会から消滅させる必要があります。
20万の不登校退学、60万のニートを作った罪を許すことはできません。
『『おバカ教育』の構造』(阿吽正望日新報道)を読んで、学校教育が壊され腐敗しでたらめになっていることにビックリしました。
このようなことは止めさせなければなりません。
知識時代の成長戦略、雇用対策は、第一に教育です。
自公政権と官僚政治は、日本の恥です。
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