『あざみの歌』は まだ歌えますか

泣いて、笑って、歌って介護!!そんな日常の過去の記録と
新たに今一度自らを見つめてぼちぼちと戯言なりを綴ります。

東京

2006年04月16日 03時09分55秒 | ぺこちゃんにまつわる話
愚息が就活の為に東京へ出かけた。経費削減だと言ってバスの旅。若いなぁ。

ここ3年ばかり、自分の為の「お祭り」に年に一、二度、上京するという事を加わえた。かぁちゃんの事もぺこちゃんの事も、家族の事もぜ~んぶ忘れて、親でも子でもなく、姉でも妻でもない「私だけの私」の時間を無理やり作って、普段の生活をリセットするために二、三日家を離れる事にしてしまった~っ。

実家を持たない私は結婚してからは一度も泊りがけで家を空けた事がなかったので、最初の一歩はかなりの覚悟が必要だった。それこそ大冒険。一番の難問は背の君の顔色だったけど、あんまり見ないようにして(笑)とりあえずクリア。「祭りの後の寂しさ」は想像以上に自分にダメージを与えるという新しい感情も経験しているけど純粋に「楽しみ」に出来る事が嬉しい!!

しかし、この「東京」が問題なのである。
人は誰でも生まれれば当然体は大人になっていく。知的障害があろうがなかろうが成長する過程は皆同じ。「同じ」である事をついおろそかにしてしまいがちな自分の未熟さを考えさせられる事がある。
ぺこちゃんにも寮生活中には彼がいて、結婚生活の真似事をしていたようなのだが、会社の倒産で離れ離れになった時には連絡先も聞かずに別れており、それまでの生活が途中で突然断ち切られた形で我が家にやって来た。電話番号くらい聞いておけば良かったのに、私が聞こうにも会社は既になくどうしようもなかった。
とても寂しかったのだろうと思う。来て間もない頃には通りすがりの人が「ぶつかったのに謝らない。」と泣きながら大声で訴えたり、些細な事で怒ったり泣いたりする事もしばしばだったので、対応の仕方が全くわからずに悩んだ事も遠い思い出になる程、今ではすっかり落ち着いて愛想の良い笑顔で人に接している。

面食らった事は数多くあるけど、その中でも・・・何と言うか・・・テレビ番組は「艶っぽい」のが結構好きなので、いきなりドアを開けるとドラマのラブシーン真っ最中だったりして、うろたえるうろたえる・・・私が!(爆)
なので彼女の部屋のドアを開ける時は耳を澄ませて観ている番組を確認してからにしてるけど・・・何となくそれも変だ(汗)

ある日の事、ぺこちゃんはデイサービスから帰るなり私の側にやって来て、目をキラキラさせながら耳元で内緒話を始めた。「☆さんと、★さんが二人で東京へ行くんだって・・・。」・・・ん?何で?何が?
くすくす笑いながら言うのである。何の事か最初は理解できなかったのだが、ドラマで良く聞く「東京」という言葉からか、どうもぺこちゃんの中では、「東京=男女で行く=いかがわ・・・もとい、うふふふ☆な場所!!」なのであるらしいのだ!ええ~っ??

単に職員さんが出張で東京に行くという話しを小耳にはさんだ事が男女ペアであった事も災いして、ぺこちゃんの頭の中でピンク色のハートマークがちらついてしまうという結果になったらしいのだが、え~っ?「こんな時、何て言ったらいいんでしょうかっ!?」・・・と、とりあえず「東京は新幹線で3時間くらいで行けるよ~。」って・・・それはまだ、のぞみが走っていない頃の話だぞ・・・。自分で突っ込みを入れながら一応それだけ言うと、ぺこちゃんはきょとんとした顔で「ふ~ん、新幹線で行くの?。」と言って、それから、にこっと笑った。

・・・ん~、根本的な解決にはなっていないが、まぁいいかぁ・・・と、いい加減にしていたのが良くなかった。
昨年上京する前、次々にアクシデントが起きて、留めの一発!とばかりに、前日になってショートステイの迎えの車の時間に間に合わない事態が発生してしまった。焦りに焦った私は関係する場所に「何とかなりませんか?~時の新幹線で東京に行かなきゃいけないんです!!」と電話口で喚いてしまったのだ。気付けば、廊下のドアもぺこちゃんの部屋のドアも開けっ放し。ああぁ・・・。

それから、ショートステイの度ににっこり笑って、ぺこちゃんが言うのだ。
「いつも、東京で大変ねぇ。」え?ち、ちがう・・・。
否定はするけど、どこまで理解していることやら・・・。
きっとデイサービスでもショートでも言っているのだろうなぁ・・・。
にこにこしながら声を潜めて職員さんの耳元で内緒の話。
「ねぇちゃんはねぇ、東京へ行ってるんだよ~」

・・・・・お、おいっ・・・。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする