ものがたりグループ☆ポランの会 公式ブログ

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雪をもたらすもの

2017年06月18日 | 公演

<雪婆んご><雪童子><雪狼>は
『水仙月の四日』に登場する雪をもたらすものたちです。

<雪婆んご>は「ゆきばんご」
<雪童子>は「ゆきわらす」
<雪狼>は「ゆきおいの」
と呼びます。

いずれもパソコンなどで、そのままの読みを入力しても変換されません。
賢治さんの造語なのです。

雪の婆さん、雪の子供、雪の狼、ということです。
彼らは、童話の中で雪を擬人化したものとして描かれています。


物語の主人公である<雪童子>は<雪狼>と共に、
雪の季節、その土地に常駐し、雪を降らせています。

そして、<雪婆んご>は低気圧!

「水仙月の四日」に関して最初に目にした資料が
谷川雁氏の「賢治初期童話考」であったこともあり、多大な影響を受けました。
何と壮大な物語なのだ、と。

<雪婆んご>は西からやってきて、東の海の方へ去っていく。
これは地球を取り巻く大気の大循環なのです。
そして、冒頭の一説に

  雪婆んごは、遠くへ出かけて居りました。
  猫のやうな耳をもち、ぼやぼやした灰いろの髪をした雪婆んごは、
  西の山脈のちぢれたぎらぎらの雲を越えて、遠くへでかけてゐたのです。

と、あります。
“遠く”って何処?“出かけて”ってどういうこと?
大循環はこれに答をくれました。
<雪婆んご>は太平洋から北のベーリング海へ向かい、北極まで行って、
日本へ再び戻ってくるのです!
吹雪と呼ばれる低気圧は一旦は東の海へ抜けて、再び勢力を蓄えて、
西の方からやって来る、というわけです。
やって来た<雪婆んご>は

 「ひゆう、なにをぐづぐづしてゐるの。
  さあ降らすんだよ。降らすんだよ。
  ひゆうひゆうひゆう、ひゆひゆう、降らすんだよ、飛ばすんだよ、
  なにをぐづぐづしてゐるの。
  こんなに急がしいのにさ。
  ひゆう、ひゆう、向ふからさへわざと三人連れてきたぢやないか。
  さあ、降らすんだよ。ひゆう。」  

ひゅうひゅうと怖いです。降らせ降らせと急いています。
一瞬にして、あたりは吹雪となるのです。
「水仙月の四日」という物語はそんな気象を描いた側面もあるのです。

余談ですが、気温があがって台風という低気圧になると、「風野又三郎」という
童話になります。

賢治さんの作品には、たくさんのことが描かれています。
花や鉱石や星などはもちろんですが、
気象や地理や科学などが確かな知識に裏づけされて、
童話という物語の中に散りばめられています。
それらを調べたり考えたりするのもとても楽しく、賢治童話の魅力のひとつであると思います。
はまると抜けられなくなります(笑)

とは言うものの、賢治さんの文章は楽しく、とても美しいです。
もっともっとたくさんの人に知ってもらいたいし、感じてもらいたいです。

昨年から、岩手に何度も行くことに恵まれ、岩手の四季も感じることができました。
冬の岩手にも赴きました。
吹雪には遭いませんでしたが、雪を感じることはできました。
おひさまの光を受けた雪はほんとうにまっ白で、目が痛いほどです。
そして、あたたかです。
物語で、吹雪に巻かれた子供を<雪童子>が助けますが、
その<雪童子>の言葉が胸に沁みます。

「さうして睡っておいで。
    布団をたくさんかけてあげるから。さうすれば凍えないんだよ。
   あしたの朝までカリメラの夢をみておいで。」

雪は、冷たく時に怖い、だけど、あたたかい。
<雪婆んご>の厳しさと<雪童子>の優しさに呼応しているように感じます。

そして、雪が降らなくなると本格的に春がやってきます。
ここにも、ひとつの大きな巡りがあります。
さまざまなものが、巡っています。
春になると咲く花も、夜になると輝く星も、雲も、風も、
すこしずつ形を変えながら、繰り返す自然の営み。
そんな世界のなかに立つと、
人間もまた、その自然の巡りのなかのひとつなのだと実感します。


岩手を訪れる機会が増え、
賢治さんが感じたものにたくさん触れ、
賢治さんのことが大好きな人にたくさん出会い、
そして、今年、賢治さんの紡いだ物語と共にイーハトーブに行けることは、
ほんとうに幸せです。
これもひとつの巡りなのだと信じて、、、
もっとたくさんの人に出会えることを願います。

(文・小川智代)







7月23日(日)
ポラン寄席 10:30開演
宮沢賢治イーハトーブ館ホール
入場料:500円
お出入り自由


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