憑神
浅田次郎 著
新潮社 2005年
6月から妻夫木聡主演で公開された映画「憑神」の原作。明日からは舞台も公開予定である。
幕末。由緒ある武士の家柄の次男に生まれた別所彦四郎は、幼い頃から文武に優れ秀才の呼び声高かったものの、婿入り先で疎まれ妬まれて出世し損ね、出戻りの肩身狭い暮らしを送っていた。ある日、酔った勢いで祠に神頼みをしてみたところ、やってきたのは貧乏神であった。次々と表れる不幸の神達。彦四郎は動乱の幕末をどう生きていくのか。
序盤は落語のようなコミカルな雰囲気であり、「悲喜劇」といった趣で面白おかしく描写されているが、三人目の憑神が現れてから終盤にかけてぐっとシリアスになっていくのがこの作品の大きな特徴である。
序盤の雰囲気から全編笑い話だと思い込むと後の展開のギャップに戸惑うことになるので、煽り文の最後に書かれた「やがては感涙必至」の言葉を念頭に置いておくとよいと思う。最後は壮快かつ少し切ない幕切れを迎える。
幕末とはすなわち武士の時代の終わりを意味する。幕末の流れに揉まれ、不幸の神に取り憑かれながらも、まさに一所懸命に武士道を貫こうとする彦四郎の姿の向こう側に、「生きるとは何か」「幸せとは何か」という哲学的なテーマが見えてくる、メッセージ性の強い作品である。
また、この作品をより一層味わい深くしている要素は、多彩なサブキャラクター達である。町人から憑神まで皆魅力的なこの小説には、作者・浅田次郎のキャラクターを愛する心が見えるようである。
結局映画は観なかったのだけれど、映画も面白そうであった。貧乏神役西田敏行、疫病神役赤井英和、夜鳴蕎麦屋役香川照之など配役もなかなか。かえすがえすもこの夏は観たい映画が多すぎた。










